新しい創傷治療ウルフヴィル The Feeding:ウルフヴィル The Feeding

《ウルフヴィル The Feeding》 (2005年,アメリカ)


 80分と短い映画なんですが,その80分の長いこと,長いこと。あまりの詰まらなさに途中でなんで見るのをやめようと思ったことか・・・という映画でございます。いわゆる「端にも棒にも」級の超駄作です。「大学の映画同好会自主制作映画」レベルよりはるかに悪い出来です。どうやったら,こんなに低レベルの映画を作れるのか,そちらの方がミステリーです。

 というわけで,B級ホラー,B級モンスター映画の愛好家以外は絶対に見てはいけません。目が腐ります。B級映画をこよなく愛する私も,この映画は罵倒するしかありません。褒めるところが一つもないんですから・・・。

 ちなみに,某DVDレンタルサイトの宣伝には次のように書かれていましたが,全て嘘です。「人類存亡をかけたバトル」なんてこれっぽっちもありません。

アメリカ北東部の深い森で発見されたハンターの惨殺死体。特別捜査官のジャックは謎を究明するために、自ら捜査を開始した。だが、再び繰りされる闇夜を切り裂く断末魔の叫び声。ついに遭遇した殺人者は狼の凶暴さと人間の知性を兼ね備えた究極の生命体だった!人間はコイツのエサでしかないのか?ここに人類の存亡をかけたバトルが始まった…。

 うひゃあ,よくここまで嘘が並べられるもんだな。すごいよ。


 とりあえず,映画のストーリーでも紹介しとくか。

 舞台はアメリカですが,どこなのかはよくわかりません。数年前からアパラチア山脈のいろんなところで鹿などの草食動物が壊滅的に減少するという事件が起きています。その野生動物の現象は不思議なことに,数ヶ月続いた後,ぱったりとなくなり,そして数ヶ月して別の場所で繰り返されるというパターンです。そして,今度はハンターが惨殺されるという事件が起き,森林警備隊(?)が事件の収拾の命を受け,大型獣ハンターのプロ,ジャックが警備隊の指揮を取ります。ジャックは森に通じる道路の封鎖を命じますが,すでに森の中でキャンプを張っている若者がいて,彼らを謎のモンスターが襲う,という映画でございます。


 ・・・というような映画なんですが,どこから説明していいか,マジで困っています。

 えーと,ホラー映画,モンスター映画では「映画開始3分でエッチしているカップルは最初の犠牲者になる」という鉄板のお約束があります。この映画では,アホ大学生(?)7人組がそれに相当します。しかし,彼らはなかなか犠牲者になりません。どうやら,時間稼ぎをしている模様で,グタグタとしょうもない恋愛話をしながらマリファナをくゆらせるだけで,待てど暮らせど,狼男は襲ってきません。あまりにダラダラした会話に,見ているほうは眠くなってきます。

 ・・・というわけで,この手の映画は時間稼ぎのためにエッチシーンを入れるのが通例です。この映画でも「向こうのテントのカップルもエッチしているから,俺たちもしようぜ」という会話があって,「ここからエッチか?」なんて思っていたら,エッチの実技シーンはなく,いきなり翌朝のシーンになってしまいます。

 そして翌朝になると,必然性もなく,女性陣は「川で体を洗おう」と意見が一致したらしく,全裸で川で水浴びします。いわゆるサービスシーンなんですが,一人は太りすぎの垂乳の「川の中のブニョ」なので,君はわざわざ駄乳を見せなくてもいいよと言いたくなります。というか、この川のシーンはマジでなくていいです。


 主役(?)の狼男さんは,不細工な着ぐるみです。21世紀なのに,何でこんなに不細工な着ぐるみで撮影したんでしょうか。しかもこの「狼男」が登場するシーンはなぜか画面が暗めでピントも甘くなます。映画は作りたいけど,この狼男はまずいよな,でも金はないし・・・という苦しい台所事情が見えてきて,なんだか気の毒になってきます。しかもこの狼男,全然すばやくありません。ひねもすのたりのたりかな,というまったりとした動きです。きっと,着ぐるみの出来が悪くて動きにくかったんでしょう。次はもうちょっと動きやすいのを作ろうね。

 おまけに,身長2メートル以上の狼男に襲われたのに,あっけなく死ぬ人間となかなか死なない人間がいて,その違いがよくわかりません。「狼男 vs アホ大学生7人組」は焚き火を囲んでマリファナを吸っているところを襲われ,次々に咬みつかれたり怪力で投げ飛ばされたりするのですから,どうみても7人全員死亡と見えるのですが,なぜか死なないやつがいるんですよ。その後も突然生きていることがわかったりする奴がいたりするのですが,なぜかこいつは再登場したとたんに狼男に殺されるのですから,何がなんだかわけがわかりません。


 ヒロインは政府の動物保護局の女性エイミーですが,お姉さん後期というかおばさん前期というあたりの年齢に見えます。美人というにはちょっときつい顔立ちです。彼女と森林警備員のジャックがコンビを組んで行動するのですが,この二人の会話シーンがやけに長く,話はいいからさっさと次のシーンに移れ,と文句を言いたくなります。そうそう,アホ大学生7人組の会話はそれに輪をかけて意味がなく長いです。こういう会話で上映時間を水増しした模様です。彼らのダラダラした会話を聞いているうちに,何の映画だったのか忘れてしまいそうです。

 ヒーロー役はジャックで,いかにも頼もしそうに見えますが,全然活躍することなく,呆気なく殺されます。この時点で,狼男を倒せるキャラが残っていないことに気がつきます。定石からするとヒロインのエイミーお姉さんが倒す役になるのですが(だって,アホ大学生7人組は誰一人役に立ちそうにないから),その前のシーンで彼女の銃の扱いが下手なことがわかっているからです。アメリカ映画を見ていると,アメリカ人は全員,銃が普通に使えると思っていたのですが,どうやら彼女は例外のようです。


 しかもこのエイミー姉さん,その後も全然役に立ちません。驚いて麻酔銃を暴発させて生き残っている学生一人を昏睡状態に陥れるし,最後の狼との対決シーンでは銀の矢じり付きの弓矢をもう一人の生き残り学生に打ち込んで殺します。本当に,使えねぇ姉ちゃんです。

 そういえば,傷ついた学生5人を連れてジープに戻る途中で狼男に襲われ,一人が食い殺されるんだけど,このシーンはガブガブという音しか聞こえず,何が起きているのか映像で見せてくれません。あまりに残酷なんで自主規制したんでしょうか? おまけにエイミーちゃんたちはその様子をただ立って見ているだけ。あまりの惨劇に演技という言葉を忘れてしまったようです。

 そして今度はエイミーちゃんが襲われるんですが,画面があまりにも暗くて,何が起きているのか全然わかりません。でも,その後エイミーちゃんは画面に復活するのですから,どうやら狼男は彼女を襲わなかった模様です。年齢制限に引っかかったんでしょうか?


 それでどうなるんだったかな? 思い出すのも大変な映画だよ。そうだ,エイミーと女の子1人がなぜか狩猟小屋を見つけるんだ。そしてなぜかそこに,黒人学生が合流するんだ。何でその狩猟小屋が見つけられたのか,もうどうでもよくなってきます。そして,冒頭にちょっと登場した銀貨を女子学生が持っていて,狼男なら銀よ,というわけで,鉈で銀貨を4分割し,それを壷に入れて加熱して溶かし,どこかから調達してきた弓矢(おいおい,どこにあったんだよ,弓矢なんて)の矢じりにくっつけるんだ。ついさっきまで,「狼男といっても,満月の夜でなくても変身しているし,伝説の通りと限らないわ」という会話をしていたのに,なぜか銀の弾丸だけは伝説の通りに有効なんですね。

 そして,「動物は火を恐れるわ」というわけで,狼男をおびき出して,その周りを火で囲むという作戦を実行! ついさっきまで,「狼男は人間の頭脳と狼の体力を持っている」って言ってませんでしたっけ? それなら,火を恐れないんじゃないでしょうか・・・なんていうツッコミはもうどうでもいいです。
 そして,火に囲まれて動けなくなった狼男を銀の矢じりで殺すんだと思っていたら,なぜかいきなり,黒人学生が小さな斧を振りかざして狼男に襲い掛かります。「何考えているんじゃ,このアホは? そんな手斧でどうするんだ。かえって弓矢を構えているエイミーの邪魔になるだけだろ」,と四方八方からツッコミが聞こえてくる名場面です。予想道理,狼男に斧を吹き飛ばされ,素手で立ち向かうという無茶をしている最中に,エイミーちゃんは矢を発射! そんなわけで,黒人学生に矢が命中するんですね。アホです。


 そしてアホは伝染します。生き残っていた女子学生はパニックを起こして狩猟小屋に逃げ込み,なぜか銃を天井に向かって乱射! 屋根に上っていたエイミー姉さんはビックリして屋根から転げ落ちてきます。小屋の中の女子学生に狼男が迫ると(やはり,狼男は火を恐れなかったことがこれでわかります),いきなりドアが開き,死んだとばかり思っていた男子学生が登場。なんだ,こいつが真のヒーローだったのか,と誰しも思った瞬間,呆気なくやられます。何のために登場したんだ,こいつは。
 一方のエイミーは自分が殺した男子学生の胸に刺さっている矢を引っこ抜きます。銀の矢じりは体の中に残るんじゃないかと誰しも思いますが,なぜか矢じりはしっかり無事です。死体から矢を引っこ抜こうとするあまりの残虐シーンに目を背けたくなります。

 で,エイミーと女子学生はジープに向かいます。狼男が迫ります。エイミー姉さん,矢を射ます。当たりません! しかも彼女は狼男に吹っ飛ばされます。すると女子学生が弓矢を拾って矢を発射! 命中です。
 エイミー姉さん,全然役に立っていません。

 そして,なぜか翌日,食われて絶命したはずの女子学生が藪の中から顔を出し,ニヤリと笑うシーンで感動のエンディングを迎えます。だから,何なんだよ,このニヤリは?

 そういえば,途中でトリカブトの群生をエイミー姉さんが見つけるシーンがあり,女子学生と「ヨーロッパでは狼狩りに使われていた猛毒の植物なの。でもアメリカには本来ない植物よ。誰かが目的を持って植えたのかしら?」なんていう,いかにも思わせぶりなシーンがあります。銀で駄目ならトリカブトを使うんだろうな,と思っていましたが,最後までトリカブトは活躍しません。じゃあ,何なんだ,あのトリカブトのシーンは?


 というわけで,クズ映画ファン必見の名作といえましょう。

(2008/12/09)

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