新しい創傷治療:ブラブラバンバン
《ブラブラバンバン》 ★(2007年,日本)
音楽の映画が好きで,頑張る高校生や大学生の映画も好きな私なので,この高校生ブラスバンド映画,ちょっと期待してみたのですが最悪でした。何でこういうクズ映画にしちゃったんでしょうか。原作の漫画を読んだことがないので何ともいえませんが,原作もこういうしょうもない作品だったのでしょうか。
ストーリーを要約すると,高校に入学してブラスバンド(ブラバン)をやりたがっている男子高校生がいるんだけど,その高校ではブラバン部は廃部状態。そこでブラバンをやりたがっている仲間を集め,ホルンのうまい2年生にも加わってもらい,大会を目指すと言う映画でございます。ま,要するに《スウィング・ガールズ》とか《リンダ リンダ リンダ》と基本的には同じというか,二番煎じ,三番煎じという内容なのですが,映画としてきちんと作られていれば,二番煎じだろうが三番だろうが気にはなりません。ところが,この作品は映画としての作りが極めて雑なのです。
何が原因か。それはヴォーカリストの安良城紅(あらしろ べに,1986年3月生まれ)に主演を演じさせるために作った映画なのに,肝心の彼女に女優としての魅力がなく,そのためにすべてがおかしくなった映画だからだ,といっていいでしょう。要するにですね,そもそもの映画作りの目的が不純なのです。そういう動機の不純さが映画としてのさもしさと薄汚さの原因となっています。安良城さんは美人なんですが,この映画で見る限り「きれいなアダルトビデオ(AV)のお姉さん」にしか見えないんですよ。そういう意味で,彼女にとってもこの映画に出たのは失敗でなかったかと思います。
と言うわけで,全く褒めるところがない映画なんですが,感想を列記します。
- 主人公は「いい音楽を聴くと発情し,男の子に襲い掛かっちゃう」という芹生(せりう)さん。この設定から危ない感じです。音楽を聴くと発情しまくる高校2年女子,という発想,オヤジ臭くないですか?
- 多分,漫画だったらこの設定はギャグになるし,コミカル路線漫画にできるんでしょうが,映画になるともろにエロになります。特に主人公がホルンを吹いてあえぐ冒頭場面は,どう見ても安っぽいAV映画で○○をしている場面にしか見えません。同様に,指揮をしながらあえぐシーンはもろにAVそのものです。
- おまけに彼女,どうみても女子高生には見えません(撮影当時21歳なんだけど)。セーラー服を着ていても運動着を着ていても,エロいコスプレをしているお姉さんにしか見えません。ほかの登場人物の高校生と比べると,どうみてもはるか年上にしか見えないのが見ていて辛いです。このあたりも「セーラー服を着ているアダルト・ビデオのお姉さん」っぽいです。
- 多分,この人は脱ぎ癖があるんでしょうね。指揮中にドレスが落ちたり,スカートが落ちたりとやたらと裸になりたがります。また,彼女が階段を上るシーン,明らかにパンチラ・ショットを狙っているようなアングルで,これも見ていて嫌な感じです。そんなに裸を見せたいならAVに出ればいいのに・・・。
- もともと歌い手なんで演技にはあまり期待できませんが,それにしても台詞の下手さは耳を覆いたくなります。そして,台詞がない場面ではブスっと突っ立っているだけです。誰も演技指導しなかったんでしょうか?
- 彼女はホルンの名手と言う設定ですが,明らかに自分では吹いていません。要するに「ホルン版口パク」ってやつです。《スウィング・ガールズ》では全員が楽器を自分で吹けるようになるまで特訓し,映画の演奏は全て彼女たちが自分で演奏したものだったと記憶しています。だから彼女たちの演奏は多少荒削りでも聞く人を感動させます。やはり音楽映画というのは,そういうところで手を抜いてはいけません。少なくとも,観客が「口パク」と気付いたら,その時点で音楽映画としては失敗でしょう。
- 彼女以外の登場人物がこれまた影が薄く,俳優のオーラがありません(その他の出演者は若葉竜也,南明奈,福本有希,近野成美,岡田将生,柳下大など)。そこらの兄ちゃん,姉ちゃんといった感じで華がありません。おまけに,台詞も皆揃ったように下手です。もうちょっとまともな俳優を使って欲しかったです。
- 部員たちの演奏は初め非常に下手です。それが,碌に練習らしい練習もせずにうまくなります。このあたりは,見ていて「楽器演奏をなめるんじゃねえぞ」と文句をつけたくなります。「自分が気持ちよくなるように演奏すればいいんだ」なんてことでうまくなるんだったら,苦労しません。このあたりのリアリティのなさは余りと言えば余りにひどいです。
- ちなみに,最後の演奏会の演奏はプロの演奏家によるものです。要するに「口パク」です。
- しかも,彼らには指導者がいません。楽器の場合,指導者なしにうまくなると言うのは絶対にありえません。このあたりも説得力がゼロです。
- 最後の演奏会でボロディンの『ダッタン人の踊り』を演奏しますが,安良城が指揮をしながら歌います。この歌がすごく邪魔臭いです。
- 主演の安良城を含め,登場人物の台詞はほとんど棒読みの素人程度ですが,おまけに発音が悪く,よく聞き取れない部分があります。日本語の発音の基礎的な部分に問題があるようです。
- 映画のストーリーの流れから言えば,最後のコンクールではラヴェルの「ボレロ」を演奏し,安良城紅がホルン演奏をするのかと思っていたら違いました。彼女のホルン演奏,どっかに行っちゃったみたいです。
- その安良城さんの指揮ですが,これが全く駄目。格好だけでいいから,指揮の練習をすべきだったと思います。それにしても,彼女の「ワン・ツー・三・四」という開始の掛け声は苦笑するしかありません。常識以前の間違いです。
というわけで,《スウィング・ガールズ》のような傑作かな,と思ってこの映画を見ると絶対に後悔します。単なるクズ映画です。唯一,安良城紅のファンという人だけ見てください。
(2008/12/12)
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