ただただ長いだけ(本編だけでも170分以上)のテレビ向け映画。見所はヒロインの女性がかなりの美形であることくらいでした。タイトルだけ見ると,大津波が襲ってくるパニック映画のように思いますが,実は単なるサスペンスです・・・しかも,できの悪い・・・。時間が余って余ってしょうがない人にだけオススメ。ただし,あまりに冗長な展開に途中で寝てしまうでしょうが・・・。
過去300年以上にわたって津波も地震もなかったニュージャージー州(アメリカ東部ですね)の海岸を突如,大津波が襲い,死者39人の惨事となった。そして,かつて津波発生について研究していて今は人気作家であるジョンが対策本部に召集されるところから,この長い映画は始まる。ジョンはかつて,人工的に地震を起こして津波を発生させ,それで自然災害を制御しようという「アシカ計画」の責任者だったのだ。そして,その津波の少し前にも大西洋で立て続けに2つの津波が起こっていることを知り,それが「アシカ計画」を悪用したテロである可能性を指摘するが,それは一笑に付されてしまう。
しかし,かつての同僚の女性海洋学者ソフィーとその津波について調べるうちに,同様にこの津波が人為的であることを疑っている学者が目の前で殺され,二人はFBIに追われる身となる。そして,第2,第3の津波がアメリカ東部海岸各地を襲い,津波防災計画で巨額の富を得ようとする陰謀が次第に姿を現す。果たしてジョンとそフィーはボストンを襲う巨大津波を防げるのか・・・というような映画。
まず,映画冒頭で,海岸でパーティーを開いている大学生グループが登場します。あっ,こいつらが最初の犠牲者だな,と誰しもピンときますが,やはりそうです。そして,その大津波による惨状を知らせるテレビ番組のナレーションが笑わせてくれます。
「かつて津波も大波も発生したことがない海域での大津波です。やはり地球温暖化などの環境破壊の影響でしょうか?」
オイオイ,津波って海底地下で発生した地震によって起こるもんじゃないの? 普通,地震も何も起きていないのに津波が起きたら,変だって気がつけよ。なんでも地球温暖化,って済ませるなよ。
と言うわけで,この映画のタイトルに「大津波」とつけた時点で,何か間違ってますよね。これは津波でなく,人為的に発生した大波ですから・・・。ま,この場面で,「おっ,これは津波パニック映画かな?」と思ってDVDを借りた人はタイトルに騙されたことに気がつく仕掛けですね。
しかも,大波(ま,津波でもいいけど)のシーンは冒頭と途中でちょっと登場するだけで,この手のパニック映画に必須の,波に飲み込まれる人々のシーンもなければ,街が破壊されていく様子もありません。おっ,波が来たな,と思うと,次のシーンでは「翌日の街の様子。途方に暮れる人々の様子」が延々と映されるだけです。見事な肩すかしです。この「途方に暮れる人々」は,ハリケーン被害を受けた人々のニュース画像を転用しているような気がしないでもありません。
おまけに,船や建物が波に飲みこまれるシーンがありますが,これが見事にミニチュアを使っての撮影で,見ただけで見破れる安っぽさ。これを見た瞬間に,見続けるのを止めたくなりました。その他にも,笑わせてくれるシーンがいくつもありましたが,中でも,「他の人の車は津波で壊れたんだけど,私のバンだけは大丈夫だったの」と説明して車で女性がやってくるシーンは,やっちまったな,と苦笑するしかありません。
悪玉の会社もチャチです。これほどの巨大な会社ならセキュリティばっちりで,部外者は入れないはずなのに,ジョンは簡単に入れるし,ソフィーとFBIの二人も簡単に入れます。おまけに会社側の警備要員は数人しかいないし,ソフィーでも簡単に突破できます。
しかも,ボストン壊滅をたくらむ悪玉君たちは,最後の方になるにつれ,どんどんしょぼくなっていきます。一番笑ったのが,ソフィーに銃を突きつけている男で,ソフィーに「あなたは弱虫よ。あなたに撃てっこないわ」と言われただけで大人しく銃を下ろします。全然,役に立ちません。あの親玉にしたって,ジョンが発射するミサイルはフェイクだって気がつけよ。見ている人間は全員,「ジョンは多分,波同士がぶつかって相殺させる場所に打ち込むつもりなんだろうな」ってわかって見ているシーンなんだから・・・。
それにしても,悪玉会社の考える「シー・ウォール」ってのもわけがわからんぞ。だって,津波が頻発してそのたびに街に甚大な被害が起きている地域ならいざ知らず,この映画の説明によると「過去300年間,地震も津波も起きていない」場所ですよね。そこで,数ヶ月のうちに4つも5つも津波が起きたら,誰だっておかしいと思うわけで,巨大な防波堤を作る前に原因究明を優先するはずです。この会社の計画,最初からうまく行くわけないって。
苦笑するしかないと言えば,ミサイルが発射されて爆発するシーン。水中を進むミサイルの映像もしょぼければ,爆発シーンもおもいっきりミニチュア使ってますってのがバレバレ。せめてここだけでもCGでそれっぽく作ればよかったのに・・・。
しょぼいと言えば,警察は殺人犯容疑のジョンとソフィーの似顔をばら撒き,多数の警官が配置されていると言うのに二人を簡単に逃がしちゃいます。二人の顔を見て無線で連絡している警官,どこを見ているんだよ。さっさと逮捕しろよ。ま,こういう能無し警官に象徴される「ゆったり,まったりモード映画」なんで,170分を超える超大作になっちゃんだね。
前述したように,この映画の唯一の見所はヒロインのソフィーが結構の美人さんである点ですが,彼女が裸にならないこと,そしてラブシーンが全くないこともここまで来ると美点と言えましょう。
それにしても,よくもまぁ,こんなに詰まらない映画を3時間ぶっ通して見たもんだよ >オレ
(2008/12/25)