《アトミック・ツイスター》 font color="red">★★(2002年,アメリカ)


 チープ感がプンプン漂う「竜巻+原発メルトダウン」のパニックムービー。竜巻パニック映画はアメリカ映画の定番なんで珍しくも何ともありませんが,それにチェルノブイリ事故を彷彿とさせる「メルトダウン寸前事故」を絡めた映画となると,かなり珍しい気がします。ただ,それが面白さにつながっているかといわれると,ちょっと微妙な感じですね。ま,暇つぶしくらいにはなるんだけど・・・。

 それと,こういう大自然パニック映画に親子の問題とか男女の恋愛などの「家族や個人の問題」を絡めるのがアメリカ映画の定石ですが,それがあまりに表に出過ぎているために,辟易してしまいますが。何でもかんでも親子が和解すればいいってもんじゃないだろ,という感じですよ。

 それと,あまりに都合のよすぎる展開ばかりで,そのあたりもチープ感を増強します。「何でここでこうなるの?」という疑問を一度持ってしまうと,もう穴だらけなんですね。

 さらに,このDVDジャケットのようなシーンは全くありません。騙されちゃ駄目だよ。


 ストーリーを一言でいえば,「アメリカはテネシー州のバセット郡にあるヘルマン・クライン原子力発電所を二つの巨大竜巻が相次いで襲い,発電所施設が破壊されて原子炉が制御不能に陥り,メルトダウンの危機が刻々と迫る」という映画です。

 そしてそれに,原発の主任のコリーンという女性と彼女の12歳になる息子,そしてコリーン宅の隣に住む保安官補のジェイク,そして彼の恋人が絡んできます。おまけに,ジェイクは幼いころ,母親を竜巻で失ったという過去があります。そして,竜巻の被害,竜巻で破壊された原発でメルトダウンを防ぐために奮闘する人々の姿が描かれ,事故を通して母子の関係がより強固になり,12歳の息子は成長し,さらに女たらしのジェイクが真の愛に目覚める・・・という,いかにもありがちな内容となっております。


 まず,準主役のはずの「竜巻」ですが,2002年作成の映画としてはかなりしょぼいです。冒頭のジェイクのお母さんが竜巻に巻き込まれて宙に舞い,行方不明になるという事件からして,何でこの程度の竜巻で人間が空に吸い込まれちゃうの,という感じで,迫力ほとんどなしです。パニック映画なんですからこういうところに金と手間をかけないと駄目でしょう。ラブロマンス映画なのに主演の二人が美男でも美女でもない,というのと同じです。

 そして,肝心の原子力発電所もかなりしょぼくて,そこらの工場の内部みたいにしか見えません。この発電所は最新鋭という設定なのですが,どうみても原子力発電所に見えないんですよね。普通,原発といえばセキュリティがしっかりしていて,外部の人間が簡単に入れないようになっているはずなのに,なぜかこの発電所には,部外者であるジェイクが簡単に入れますし,ゲートには掘っ立て小屋みたいなのがある程度です。

 おまけに,原発内で働いている人間の少ないこと,少ないこと。せいぜい4人か5人しかいません。映画の中では「土曜日だから」と説明されていますが,土曜日になると作業員が少ない原発ってかなり危なくないですか? しかも,これほどの非常事態というのに,職員を集めようともしません。普通ならこういう場合,人手を集めないですか? このため,原子力発電所の事故でメルトダウン寸前,という緊迫感がまるで伝わってきません。


 おまけにこの原子力発電所は,一本の電線が切れただけで全ての電話が使えなくなり,外部との連絡が取れなくなります。ううむ,いくらなんでもこの設定は非現実的で苦笑するしかありません。さらに,衛星電話用のパラボラアンテナも竜巻で吹っ飛ばされちゃうし・・・。通信機器に全く金をかけていない「最新式原子力発電所」のようです。

 しかもこの原子力発電所は,外にある変圧器の一つが竜巻で壊れただけで発電所の中は電圧が低下し,おまけに非常電源・予備電源も作動しない,と説明されます。それじゃ,予備電源の意味ないよ。バックアップ体制に全く金をかけていない「最新式原子力発電所」ってどうよ。

 そうそう,原子力発電所の入り口に掘っ立て小屋みたいなのがあるんですが,そこの守衛さんを演じるのは,なんとカール・ルイス御本人です。もちろん,史上最も有名なアスリートの一人です。「おっ,これってカール・ルイスじゃん。すげえよ。どういう役柄なんだろうか?」と思ってみていると,出てきてすぐに竜巻に巻き込まれて宙を飛び,そのまま呆気なく死んじゃいます。カール・ルイスだったら竜巻より速く走るか竜巻を飛び越しちゃえよ。いったい何のためのカール・ルイスだったのか意味不明です。もしかしたら,カール・ルイスのそっくりさんだったの?


 そういえば,冒頭のジェイクのお母さんが竜巻に巻き込まれて空に吸い上げられる,というエピソードは,その後全く生かされません。それでジェイクが「竜巻トラウマ」になるわけでもないし,それをバネにジェイクが竜巻研究かになるわけでもありません。というわけで,冒頭の竜巻シーンは要らなかったような気がします。

 そういえば,コリーンの家が竜巻で破壊されてベビーシッターが死に,それを見た12歳の息子が自転車に乗って脱出,というのもわけがわからんぞ。何でお前はこの状況で自転車に乗る? というか,家も吹っ飛ぶような竜巻で,どこに自転車があったんだよ? しかもしっかりとヘルメットをかぶっているけど,それはどこで見つけたの?


 原子炉の冷却水がどんどん蒸発し,メルトダウンまであと数秒,というところで,18年間放置されていたディーゼル発電機を動かして電力を供給でき,ポンプが復活する,というクライマックスだけど,そのディーゼル発電機って,せいぜい,軽トラックの荷台に積めるくらいのサイズなんですよ。何でこのくらいでメルトダウンが回避できちゃうの? だって,その前のシーンで,20人ほどの消防士たちが消火用のホースを手に冷却槽に水を入れているのに全然足りてなかったわけですよ。これもかなり不自然でしたね。

 そういえば,放射能で汚染された冷却水がパイプ破損で漏れ,そこに一人の職員が被爆覚悟で入っていき,手動で原子炉を停止させる,というシーンがありました。そこでは確か,「この中に入ったら放射能で1週間以内に死亡するほどの被爆をしてしまう」と説明されていたのに,助け出された彼は元気そうだったし,それに対してコリーンも「よくやったわ」と一声をかけただけです。「ここに入ったら1週間で死ぬ」と断言したのはコリーン,おまえだろう? だったら,もっと心配してやれよ。

 映画の中では,「このあたりは竜巻がよく起こるんだ」というような説明がありましたが,それだったら,原子力発電所は竜巻に襲われても大丈夫な構造にするのが常識だし,電線や電話線は地中埋込にしておくんじゃないでしょうか。少なくとも,「突風で電線が切れて陸の孤島と化す原子力発電所」という設定そのものに無理があります。


 こういう映画を見ていると,竜巻映画の元祖(?),《ツイスター》は(それなりに)よくできていた映画だったことがよくわかりますね。このあたりは,なんだかんだ言っても,ロメロ・ゾンビを超えるゾンビ映画がなかなかないのと同じかな?

(2008/12/31)

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