《サブライム -白衣に潜む狂気-》 ★★(2007年,アメリカ)


 見ている最中も「なんだ,こりゃ?」感が続き,見終わってからも「だからこれは何だったの?」というモヤモヤ感しか残らない映画。しかも,2時間弱と結構長いのである。それでいて,展開がやたらと遅くてイライラするし,それでも最後の結末が気になってみてしまったけれど,「こんな結末だったら,もっと早く終わらせろ。この内容なら80分で十分だろ」と言いたくなります。

 おまけに,ホラー映画のようであってホラー映画でなく,サスペンス映画のように見せかけてサスペンスでもない,という中途半端さ。なにも思わせぶりにホラー調にする必要もなければ,サスペンスに思わせる必要もなかったですね。このテーマだったらいっそのこと,本格的な社会派サスペンスにするとか,本格ホラーにするとか,もっとグロの部分を強調するとかすればよかったのに・・・。


 どういう映画かというと,ネタばらしをするとすごく簡単。健康診断で大腸ファイバー検査を受けるために一泊入院した主人公(40歳男性)が,患者取り違えミスからしなくていい手術を受け,その合併症で植物状態(?)になり,その彼の脳裏に浮かぶ夢をつなげた映画です・・・と,これだけです。そういう仕掛けがわからないように,わざと主人公の脳裏に浮かぶ過去の記憶と幻覚を順不同に並べているだけです。要するに,見ている方が混乱するように解りにくい映画を作っただけってことです。

 確かに,時間軸をめちゃくちゃにして細切れのシーンをつなげ,さも意味ありげなフラッシュバックを多用し,凝ったカメラワークで「隠された意味」があるかのように暗示的なシーンばかり連続させれば,難解な作品はすぐに作れるけど,それは要するに内容のなさを隠すための手段に過ぎないのです。見ている方は勝手に深読みして「これはもしかしたらこういう意味かも」と解釈してくれれば,難解だが深みのある作品という評価が得られるかもしれないけど,それをやっちゃ,おしまいでしょう。

 確かに,途中で登場する明らかに対応がおかしい黒人男性看護師とか,ピチピチ白衣のエロすぎる美人看護師とか,見ていて「こいつは絶対に変」とおもっちゃうし,閉鎖されている病棟で主人公の奥さんが主治医とエッチしているとか,病室にやってきた娘がいきなり女友達とレズっぽい行為に及ぶとか,どう見ても悪夢か幻覚としか思えないシーンが連続するわけです。こうなると,あらゆるシーンが幻覚や悪夢の産物という解釈も成り立つわけで,そもそも医療事故そのものが本当にあったのか,それすら疑わしくなってしまいます。


 作り手側は医療事故の問題を鋭くえぐり出す作品を作ろうとしたのかもしれませんが,ここまで捻った作りにしてしまうとすべてが嘘くさくなってしまい,かえって逆効果だったような気がします。余りに凝りすぎたカメラワークと画面構成も,嘘くささを増強しています。要するに,やり過ぎなんですね。

 この映画では医療過誤の問題以外にも,医療訴訟を食い物にする弁護士の問題,人種差別意識の問題,家庭や家族の問題,さらには尊厳死の問題まで扱っていますが,その扱い方は表層的・観念的であり,作り手側がこういう深刻な問題について実は深く考えていないことがミエミエなんですね。


 ちなみに,医療事故の原因は同じ日に名前がちょっと似た患者が二人(片方は大腸ファイバーでの一泊入院,もう一人は多汗症治療のために交感神経節切除)がいて,主人公が大腸ファイバーでなくて交感神経節切除を受けたというものです。さらに術後に胸部手術創が黄色ブドウ球菌感染から敗血症(?)を起こし,おまけに,術前に看護師(例のピチピチ白衣の看護師さん)が下腿にちょっと傷をつけ,そこからα溶連菌(いわゆる「人喰いバクテリア」)が侵入して下肢が壊死し・・・という,コテコテの合併症が起きたのが死因らしいです。

 というわけで,訳が分からない錯綜したストーリーと,ゆったり・まったり・だらだらモードの展開の遅い映画が好きな人にだけお勧めします。

(2009/01/02)

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