《プラネット・テラー》 ★★★★(2007年,アメリカ)


 「ゾンビ+お色気アクション」映画,典型的B級映画なんですが面白いのなんのって! さすがは《エル・マリアッチ》《フロム・ダスク ティル・ドーン》のロバート・ロドリゲスはすごいです。この一作に詰め込まれたアイディアの豊富さとアイディアの素晴らしさ,徹底的に観客を楽しませ,震え上がらせて悲鳴を上げさせてやろうというサービス精神,ここかしこにちりばめられたユーモアなど,面白さは群を抜いています。
 もちろん,細部を見ていくと超テキトーな部分が結構あって,脈絡のないシーンも沢山あるのですが(例:最後の軍用ヘリの場面で,女医さんがもう一台のヘリに入っていく理由がない・・・とか),まあ,ここまで楽しませてくれたのですから,良しとしましょう。


 しかも,個々の登場人物の人生とか人間関係も十分に描かれていて,それが十分に感動的なのです。あのバーベキュー屋のおっさんと保安官をしている彼の弟の最後のシーンには目頭が熱くなります。最後の最後に兄弟が和解するんだけど,それにバーベキューのレシピの話が絡むんですよ。あのゾンビ騒動の中でも必死になってソースの改良に余念がないおっさん,格好いいです。

 また,台詞の一つ一つがまた格好よくて,しかも笑わせてくれるところは十分に笑わせてくれるじゃありませんか。主人公のレイ最後の台詞「俺は弾をはずさないんだ」の意味,最後の最後でわかるって仕掛けだったのね。

 とは言っても,グロとスプラッターといかにも痛そうなシーンは半端でない作りですので,こういうのに弱い人は近寄らないほうがいいでしょう。


 舞台はテキサスの田舎町。軍が秘密裏に生物化学兵器を作るのですが,それが感染者をゾンビ化するというもので,どうやら一定地域の敵を全滅させることを目的にしています。しかし,ある事故からそのガスが漏れ,それを浴びた基地周辺の住人と基地内の兵士たちがゾンビ化し,まだゾンビになっていない人間を襲っては手足をちぎり,内臓やら脳みそを食いまくっているのです。

 一方,ゴーゴーダンサーのチェリーは元カレのエル・レイと再開。レイの車に乗ってドライブしますが,その時何者かが道路を横切ったため慌ててハンドルを切って車は横転。そこでゾンビがチェリーに襲い掛かり,右足を膝のところからもぎ取られてしまいます。瀕死のチェリーをつれ,レイは病院に向かいます。そしてチェリーはどうやら断端形成術を受けた模様ですが,その事件を調べる保安官はレイを拘留してしまいます。レイには過去があったのです。

 チェリーが運び込まれた病院では医師夫婦が働いています。夫は実はドメスティック・ヴァイオレンス(DV)野郎で,妻は息子を連れて家を出て,恋人(レズビアンの相手の女性)と暮らそうと画策しています。ところが,その恋人がゾンビに襲われて死体となって病院に運び込まれたところから,DV夫の異常な行動が徐々に明らかになっていきます。

 そして,レイを取り調べている保安官もゾンビの群れを目にし,ただならぬ状況であることを知ります。そしてレイは病院に向かい,片足を失ったチェリーを発見。「これで歩けって言うの?」というチェリーの足の断端(なぜか金属みたいなのが先端についている)にテーブルの足を突っ込み,「ほら,歩けるだろ」と,病院にあふれるゾンビたちを倒しながら二人は逃げ出します。

 やがて生き残り人間たちが力を合わせて脱出を図りますが,軍につかまってしまい,そこでレイの正体と事件の真相が明らかになります。そして,生き残りをかけた最後の戦いの火蓋が切られ,失った片足に義足代わりにマシンガンを装着したチェリーが怒りの弾丸を軍隊とゾンビどもに浴びせるのでありました・・・という映画。


 まず,レイとチェリーが格好いいです。謎の男であるレイの正体は次第に明かされますが,戦闘能力が高いです。特に病院でゾンビを次々に倒していくシーンは圧倒的。映画の最初のほうでは,なんだか頼りなさそうな小柄なお兄ちゃん,くらいにしか見えないのですが,次第に秘めた能力を発揮し始め,皆の信頼を勝ち得てリーダーに成長していく過程はちょっといいです。両手で拳銃をくるくる回すシーンなんて,昔の西部劇を彷彿とさせます。

中央がエル・レイだ。


 一方のチェリーもすごいです。大腿断端部に差し込まれたマシンガンを操り,まるでブレイクダンスでも踊るかのようにマシンガンを連射し,爆風にに乗って宙を飛び,空中から軍人(もちろん,ゾンビ化している)に向けて乱射します。足のマンガン,どうやって引き金を引いたんだよ,それだけ撃ったら弾切れにならないか・・・なんていうツッコミを入れる間もありません。そして,ツッコミを入れるのが野暮と思われる華麗なアクションです。それにしても,このシーンはどうやって撮影したんでしょうか。


 途中にある二人のラブシーンがこれまた傑作。かなり本格的に絡んでおりますが,「おお,これからエッチのクライマックスか?」と期待してみていたら,画面に「○○○○」の文字が! うわあ,そう来たか。もう笑い転げるしかありません。しかも,このシーンがラストシーンの「希望」につながっているんだよ。

 また,DV野郎の医者を演じている俳優さんもいいです。見た瞬間に,「こいつはヤバイ」と思わせるオーラが画面を通して伝わってきます。あの注射器を妻の手に突き刺すシーン,本当に怖くて痛いです。こいつの目つきはどうみても異常です。途中でこの映画に登場するクエンティン・タランティーノ扮するレイプ魔中尉より明らかに危険な目をしています。
 この俳優さん,これからもタランティーノ一家の映画に登場しそうな気配です。

 それに対する妻の女医さんも,ガーターベルトに「麻酔注射3点セット」を装着し,ガン・ファイトのように麻酔注射をゾンビに打ち込みます。手を骨折しながら車のドアを開け,口に咥えたキーで車のエンジンをかける姿に,子供を守ろうとする母親の必死さが伝わってきます。
 そういえば,チェリーが「私には無駄な能力が沢山ある」と言ったのに対し,「無駄に思える能力が必要とされる時が必ずある」というのはこの女医さんでしたね。それが後半の「ロケット弾をブリッジでかわす」シーンで生きてきます。


 ちなみに,DVDでは映画本編が始まる前に,架空の映画《マチェーテ》の予告編が流れるという手の込みようです。この《マチェーテ》の主演男優は,ロドリゲス映画のファンなら誰でも知っているあの人です。いずれにしても,ここまでするか,というロドリゲスのサービス精神に脱帽です。

 というわけで,荒唐無稽なホラー・バイオレンス・アクション・お色気の映画が好きで,格好いいガン・アクションが好きで,しかもほろりとさせる感動シーンが見たい,という人には超オススメの映画でした。

(2009/01/03)

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