《D.D.T》 ★★(2005年,アメリカ)


 可もなく不可もない昆虫パニック映画。目新しいのはバッタを主人公(?)にしている点でしょうか(原題は "Locusts" でイナゴ,バッタの意味。ちなみにアメリカ英語ではLocustにはセミの意味もある。ううむ,アメリカ人にはバッタとセミも同じに見えるんだろうか?)。これまで昆虫パニック映画は多数作られてきましたが,主役はアリだったりハチだったりゴキブリだったりしましたが,今回は旧約聖書の昔からその恐ろしさが知られているバッタです。

 ヒロインはアメリカ農務省の調査官のマディ。彼女は農務省の研究所で国防省の要請による極秘実験が行われていることを知ります。それはどんな殺虫剤(その代表格であるDDTが邦題になっています)にも耐性を示し,通常の4倍のスピードで成虫になり,しかも寿命が2倍長い,というとんでもないバッタでした。研究している昆虫学者は「こいつらから新しい抗がん剤が見つかるかもしれないし」なんて言っていますが,もちろんこんなのが研究所の外に出たらとんでもないことになります。もちろんマディは研究の中止を命じ,全てのバッタを焼却するように命じます。しかし,国防省はそのバッタをひそかに持ち出そうとしますが,研究所から数匹,そして輸送の途中で数匹が逃げ出します。

 その数ヵ月後,アメリカの西海岸と東海岸で突如,バッタの大群が発生し,あらゆる作物を食い尽くしては食料を求めて移動を続け,さらに爆発的に数が増えていきます。農務省も農作物を苅りつくしてバッタを兵糧攻めにするという計画を立てますが,飢えたバッタたちは肉まで食料源にして生き延びようとします。

 なんとしてもバッタを食い止めようとする国防省は毒ガスVXガス(オウム真理教で有名になりましたね)の使用を考えます。「多少の犠牲は止むを得ない」というお得意の台詞が聞けます。しかし,その計画を知ったマディは寸前でその計画を阻止。

 そこでマディは,バッタの習性を活かして一箇所に集め,アメリカ合衆国の南北に走る巨大送電線を使ってバッタを焼き殺す計画を立てます。しかし・・・,という映画です。


 一番最初に「可もなく不可もなく」と書きましたが,暇つぶしのパニック映画としてはこれでいいわけですね。国防省(軍人)に騙されているとも知らずに研究をするマッドサイエンティスト,それを阻止しようとするヒーローとヒロイン,大統領直属の対策委員会での火花を散らす対決とその後の協力,軍部の暴走,そしてあっと驚く(?)解決策と最後のクライマックスなど,まさにこの映画は定石どおりに進みます。

 それに,仕事最優先のマディとそれに納得できない恋人(彼も政府系の仕事をしている)との問題とか,マッドサイエンティストも家庭に戻ると普通の父親だとか,マディと父親の愛情などの個人の問題を絡めるのもアメリカパニック映画のお約束です。もちろん,マディと恋人はハッピーエンドを迎えるのもお約束。

 物語の進行もテンポがいいし,科学的な説明も(それなりに)してあるし,バッタを全滅させる方法としても馬鹿馬鹿しいけど許せる範囲です。

 バッタが大群を作って空を覆いつくすシーンはCGで,これはちょっと手抜きだけど,草木や樹木の葉に群がるバッタは本物を使っていて,「大量の虫」が生理的にいや,という人にはちょっと厳しいかもしれませんが,それ以外にはグロのシーンはありませんので,お子様でも大丈夫でしょうね。余計なお色気シーンもなかったような気がするし・・・。


 ちなみに,この映画の主人公であるバッタについてちょっと一口(?)メモ。

 バッタは直翅目に属する昆虫で,今回登場したのはサバクトビバッタで,中央アジアやアフリカ大陸でしばしば甚大な被害を起こすバッタの大群で,これは日本にもいるトノサマバッタ(Locusta migratoria)の群生相,つまり密集したところに大発生したトノサマバッタで,通常のものより翅が長くなり,後脚が短くなり,体の色が黒っぽく変化したものを言います。

 このような群生相は飛翔能力が高く,普段食べないような植物も食べるようになります。さらに,通常のトノサマバッタも昆虫の死骸などを食べる雑食性ですが,群生相になると肉食性が高まり,さらに気性も荒くなって攻撃性も高まります。

 ですので,この映画に示されるように「バッタが家畜を襲う」なんてのは荒唐無稽にしても,興奮して攻撃性が高くなったバッタが建物やバスの中に侵入したら,やはりこれは怖いでしょうね。特に虫嫌いには・・・。


 というわけで,日曜日の暇な午後の2時間をつぶすにはいい映画じゃないでしょうか。

(2009/01/21)

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