《マキシマムタイド》 ★★(2003年,アメリカ)


 あまりにも定石すぎて,捻りもなくて,意外性もなくて,これといって見所もないアクション映画。しかもアクションも地味で派手さはなく,銃撃シーンもこじんまりしています。ま,絵に描いたような勧善懲悪ヒーロー映画,って奴ですね。暇つぶしくらいにはなるかどうか,ちょっと微妙なラインですね。


 一言で言えば,粗筋がわかると映画を見なくても展開が読めて,シーンが目に浮かぶと思いますが,一応紹介しときますか。

 主人公は特殊警備員のカイルって男。離婚した妻との間に16歳の息子がいます。カイルは「命令を無視して自分で行動する」のを信条としていて,消防士(ご存じのようにアメリカではすごく人気のある職業ですね)を辞めさせられたばかりです。そして,就航したばかりの豪華客船の警備状態のチェックの仕事を命じられ,普段は分かれて暮らしている息子を伴ってその船に乗り込みます。

 しかし,その船にはハイジャック(船だとシージャックって言うんだっけ?)犯一味も乗り込んでいて,船を乗っ取ります。どうやら,船会社のオーナーに一千万ドル要求する計画のようで,実は犯人グループのボスと船のオーナーの妻は愛人関係にあり,そもそも彼女がこの計画を持ちかけた模様です。で,通信機器は破壊され,外部との連絡が一切取れなうなった船はある島に向けて進路を変更します。

 しかし,犯人一味の「これから計画開始」という無線連絡をたまたま聞いたカイルは,何か事件が起こることを察知し,一人で反撃を開始します。そして彼に,船の警備員の女性が協力します。海兵隊上がりの格闘技の名手という頼もしい美人です。

 犯人側は船のあちこちに爆弾を仕掛け,オーナーを脅しますが,計画に妻が加わっていることを知ったことから,「金を払うより,犯人側に船を爆破してもらって船を沈め,保険金の一億ドルを手に入れた方が儲かるよね」ということに気が付き,犯人側に船を爆破してくれたらさらに金を払うと持ちかけてしまったのです。

 果たしてカイルは船の爆破を防ぎ,乗客と息子の命を守れるでありましょうか・・・ってな映画でございました。


 カイルを演じるのはキャスパー・ヴァン・ディーン,以前紹介した《スターシップ・トゥルーパーズ》の主人公役のお兄さんです。イケメンなんで,この《スターシップ》は結構面白い映画でしたが,それ以後彼が出演する映画はどれもハズレばかりで,どうも作品に恵まれない役者さんのようです。一方,ヒロイン役のお姉さんはそこそこ美人で,格闘技のシーンはそこそこいいです。

 それ以外は見所はありません。低予算でいろいろなところ切り詰めて作っていて,それが裏目にでた感じです。


 まず,豪華客船という割には乗客の数が少ないし,船のクルーの数も少なすぎます。映画の最初の方でオーナーが「定員の半分しか乗客がいない。これじゃ赤字だ」とこぼしていますが,これしか乗っていないんじゃ,儲けどころじゃないでしょうね。ちなみに,なぜ客が少ないかというと,豪華客船にしてはレストランもカジノもバーも狭くて,内装も貧乏臭いからじゃないでしょうか。要するに「豪華客船」じゃないんですよ。

 一方,犯人側も人数が少ないです。最初の人数が6人か7人くらいですが,この人数で船のクルーと乗客すべてを制圧するのは,最初から無理があるような気がします。しかも,途中から犯人グループ内部で命令を無視する奴まで出てきます。どうも最初から,統制が取れていないようです。アクション映画の悪役なんですから,もっと統制ある行動をとって欲しいものです。あるいは,もっと信頼のできるメンバーを集めるとか・・・。

 そういう,犯人グループのゆるい行動に助けられて,カイルは着々と犯人を追いつめて・・・となるかと思うと,なぜかカイルの息子がカイルの邪魔をします。「僕はもう子供じゃないんだ。パパを助けたいんだ」という理由ですが,そりゃ,無理だろ,と誰しも思うはずです。案の定,息子がいたために(?)カイルはあっさりと捕まり,海に放り投げられます。犯人側,なぜ銃で撃って殺さなかったのか,よくわかりません。


 そういえば,カイルの息子は空手を習っていて,それが最後の救命ボートのシーンで生きてきますが,通っている空手道場に「心技体」「一生懸命」と日本語の垂れ幕が掲げられていますが,これが笑っちゃうほど下手な漢字で,日本の観客を苦笑させてくれます。

 あと,カイルが機関室に仕掛けられた爆弾を「山勘で」解除するシーン,ナイスです。しかも,下から順番に線を引っこ抜いてるだけだし・・・。おまけに,犯人側は船内には合計4つの爆弾が仕掛けたと話していますから,少なくともあと3つの爆弾は残っているはずです。そして最後のシーンでボスが遠隔スイッチを入れると,何とカイルが持っている爆弾(さっき,彼が山勘で解除した奴ね)にスイッチが入り・・・という最後の爆破シーンにつながるのですが,なぜ船室などに仕掛けられた残り3つの爆弾が爆発しなかったのか,それがこの映画の最大の謎です。

 ちなみに,DVDジャケットにあるような爆破シーンは一度もありません。爆破するのはちっちゃな救命ボートだけです。


 というわけで,ぬる〜いアクション映画なんで,本当の豪華客船乗っ取り映画かと思ってみると絶対に拍子抜けします。詰まんない映画を見てはツッコミを入れるのが好きなコアな映画ファンにだけお勧めします。

(2009/02/04)

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