新しい創傷治療:

《モーテル》 ★★★(2007年,アメリカ)


 ケイト・ベッキンセイルが出ているんで借りて見たホラー風味のスリラー映画。80分ちょっとと短めのこともあり,無駄なシーンや演出がなくコンパクトにまとまっていて,ちょっと見るにはいい感じです。ま,ヒロイン役がベッキンセイルである必然性は幾分希薄ですが,最後の殺し屋たちに反撃するシーンはさすがは《アンダーワールド》のヴァンパイア側の戦士として選ばれたことだけの事はあります。


 ストーリーはこんな感じ。

 デビット(ルーク・ウィルソン)とエイミー(ケイト・ベッキンセール)の夫婦は何かの事故で幼い息子を亡くし,それ以来,夫婦仲は冷え切っていた。今日も,エイミーの両親の結婚記念日を祝うために実家に行ったのはいいけれど,エイミーの両親の前でいい夫婦を演じるのが嫌になった夫は逃げ出すように家を後にしたらしい。しかし,高速道路の渋滞に巻き込まれたためにわき道を走ることになった。しかし,エンジンにトラブルが起きたため,ガソリンスタンド近くのモーテルに一泊することになった。

 いかにも怪しげな感じのモーテルだったが,部屋に入ってすぐに激しくドアをノックする音がする。しかしドアを開けても誰もいない。モーテルの支配人に文句を言いに行ったが宿泊客は自分たちだけだという。

 部屋に戻ったデビットはテレビをつけ,備え付けられていたビデオを見たが,なんとそこには,カップルが殺されるシーンが映っていた。しかも,撮影された部屋はまさに自分たちが泊まっている部屋なのだ。ヤバイ,ってんで逃げ出そうとするが窓は開かない。そして,恐怖の一夜の幕が切って落とされる・・・という映画です。


 ちなみに,実際の殺人の様子を納めた映画のことをスナッフ・フィルムといい,闇社会で高額で取引されているという噂,都市伝説があり,スナッフ・フィルムがらみのホラー映画はかなりあります。都市伝説かどうかは別にしても,人が死んでいく様子を見たいという変態さんはそれなりにいるようです。

 スリラー映画には分類しましたが,登場人物が少ないこともあり誰が犯人なのかは早い時点でわかってしまい,その意味で謎解きの要素は全くありません。あるのは恐怖とスリルの連続です。しかも,血がドバドバとか,生首がごろりとか,そういうシーンは一切なく,襲い掛かってくる恐怖を直球勝負,真っ向勝負で描いています。その点が,やたらとスプラッター・シーンに寄りかかったり,やたらと残酷シーンで怖がらせる昨今のホラー映画と違っていて,ちょっと昔の王道サスペンス映画という感じで,かえって新鮮かもしれません。

 夫婦仲が冷え切っているカップルが逃げ場のない恐怖の中でお互いの信頼を取り戻すというのも悪くないし,それが押し付けがましくなく控え目に描写されているのもいい感じです。それにしても,車中でのこの夫婦の会話のすれ違いぶりというか,かみ合わない会話の様子がすごくリアルで,こりゃ,離婚寸前だろうなというのが説明なしで伝わってきますね。ベッキンセイルの不機嫌な仏頂面もいいです。こんな表情ばかり見せられたら,いくら美人妻でもちょっとねぇ,となりますね。

 犯人側をベッキンセイルが倒すところがちょっと淡白というか,捻りがなさ過ぎる感じですが,ま,ベッキンセイルなんで許しちゃいましょう。最後に撃ち殺すところはやはりスカッとします。


 というわけで,最初から最後まで緊迫したシーンが続き,心理的にジワジワと追い詰められていく怖さの表現は結構よく描かれていますので,この手の映画が好きな人は暇つぶしには最適でしょう。

(2009/03/03)

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