新しい創傷治療:宇宙戦争2008
《宇宙戦争2008》 ★(2005年,アメリカ)
ま,クズというほどひどくはないけど,SF映画として楽しめるかどうかギリギリのラインじゃないでしょうか。どこかのサイトに書いてあったけど「スタートレックの劣化版」という表現がぴったりです。何でこんな映画を2005年に作ったのか,そちらの方が不思議な感じです。というわけで,こじんまりとした低予算B級映画の典型,というやつでした。ツッコミ・マニアにはかなり楽しい作品でございます。
ちなみに,このDVDジャケットに出てくるような超大型UFOは登場しませんし,DVDジャケットのように大都市上空をハエのように飛び回ってレーザービームを発射する小型UFOも登場しません。
時は西暦20XX年,舞台はアメリカのどっか。地球はカルクー星人の猛攻撃を受けて風前の灯でしたのじゃ。地球と桁違いの科学技術力を持つカルクー星人に地球の軍事力はなすすべなく,ついに,人類はカルクー星人の要求を呑むことになったのじゃ。その要求とは何か。それは「地球人800万人を生贄として差し出せ」というもの。なぜかというと,彼らの故郷であるカルクー星では治療法のない謎のウイルスによる伝染病が蔓延していて,地球人の血清のみが唯一の治療法だったからじゃ。そして各国ごとに拠出する人間の数を決め,アメリカでは80万人を選ぶことになったのじゃ。ある国では囚人を犠牲者に選んだが,アメリカでは「何でも公平だ。それがアメリカの精神だ」と言ったかどうかは不明じゃが,抽選で80万人を選ぶことになったのじゃ。そして,宇宙研究をしているチェイス博士の一人娘までもが抽選に当たって(?)しまったのじゃ。
実はカルクー星人達はそれまでも何度も地球に来ていて,1947年にはUFO墜落事故を起こしたり,ロズウェル事件を起こしておったのじゃ。その墜落したUFOの研究を密かに続けていたんじゃが,現在,その研究の中心にいたのがチェイス博士じゃ。そして彼は墜落したUFOにあった謎の鉱石を使うと何でも溶かしてしまう高出力レーザービーム砲が作れることを突き止めておったんじゃよ。
そして,愛する娘を救うことを博士は決意し,カルクー星人とそれに迎合する政府に反抗するレジスタンス組織の協力を得て娘の奪還に向かい,何とか再開したものの,そこでUFOの攻撃を受け・・・というお話じゃよ。
あまりにもツッコミどころ満載のため,まともに評論するのも馬鹿馬鹿しいので,ストーリーと順不同にツッコミを入れます。
- DVDジャケットには「ユニバーサル・スタジオ製作 最高の興奮と最強の面白さをお約束するSFアクション超大作」とありますが,低予算映画の常として,世界中の敏が攻撃を受けた様子は描かれていませんし,舞台になるのはどっかのアメリカの小都市です。ちなみにDVDジャケットの文章のうち,「最強の面白さ」というのは日本語が変。面白さは「強い,弱い」で表現するものではありません。
- 低予算なんでエイリアンの着ぐるみを作る金がありません。カルクー星人は完全に人間型で,白人の姿をしています。どうやら,白人が宇宙普遍の姿格好のようです。これでは地球人とカルクー星人を区別するのが難しいですが,見分けるポイントは次の点のようです。
- カルクー星人の左のほっぺにはピップエレキ絆見たいなのが張ってあって,それが通信機になっています。
- カルクー星人の頚部には黒いあざがあります。どうやらウイルス感染症の症状のようです。
- カルクー星人は英語を完璧に話せます。宇宙でも英語が標準言語なんだよ。
- カルクー星で蔓延しているウイルス病の唯一の治療法が地球人の血液,ってなぜわかったんだろうね・・・という疑問は御法度です。
- 地球人の血清が欲しいなら献血ルームを作るだけでいいんじゃないの,全人類から400ml献血してもらったらカルクー星人も救われ,人類の犠牲者もなかったんじゃないの,というツッコミも御法度です。
- 最後のほうで娘が囚われたUFOにチェイス博士が乗り込みます。いろいろあって,カルクー星人のボスを倒してUFOでアメリカのどっかに帰ってきますが,生まれて初めて見るUFOをなんで操縦できたんだろう,という疑問も御法度です。
- そのUFO内部が地球の大気と同じ組成だったのはなぜ,という疑問も御法度です。
- チェイス博士が完成させたレーザービーム砲,あまりにでかくて使いにくいだろう,一人でもてない大きさじゃん,それじゃ両手に持ったとしても照準合わせられないよね,というツッコミも御法度です。
- 地球最強のアメリカ軍すら簡単に撃破するカルクー星人なのに,なぜかレジスタンス軍のライフルで簡単に殺されます。科学技術が進んでも,体そのものはひ弱なんだね。
- 何であの攻撃一発で,巨大UFO(?)が簡単に破壊されちゃうのか,説明は全くありません。
- カルクー星人の司令官(だったかな?)が結構いい子ちゃんで,カルクー星に届いた血清で娘の病気が治ったという知らせを受けたりするんですが,その後,このエピソードは全く生かされません。多分,監督は途中でこのエピソードを入れたことを忘れちゃったんでしょうね。
- チェイス博士の娘さんはそれなりに美形ですが,レジスタンスのメンバーの一人の女性が普通の「おばさん前期」で,しかも巨乳でもなければ美形でもありません。だから,彼女とチェイス博士(癌で妻を亡くしたばかりらしい)がお互いに惹かれあう,という展開もどうでもいい感じで,かえってなかった方がよかったと思います。
- 「さっき,敵は殺していなかったはずだから,きっと後ろから襲い掛かってくるよね」と思ったシーンでは,ほぼ100%,襲ってきます。多分皆さんも百発百中で「次のシーンで後ろから・・・」というのが当てられるはずです。「志村,うしろ,うしろ!」ってやつです。
というわけで,この解説を読んでもまだなお地雷原を踏んでみたい,という勇気ある映画ファンのみ,ご覧下さい。
(2009/03/19)
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