《インベージョン》★★ (2007年,アメリカ)


 古典的SF小説,ジャック・フィニィの「盗まれた街」を元にした映画です。ちなみにこれで映画化されたのは4回目とのことですが,私は元になった小説も他の3つの映画も見たことはありません(《ボディ・スナッチャー/恐怖の街》』(1956年),《SF/ボディ・スナッチャー》(1978年,)《ボディ・スナッチャーズ》(1993年))

 結論から先に書くと,設定はそれなりに面白いんだけど,説明不足の部分が多く,また,都合の良すぎる展開がちょっと興ざめでした。それと,主演のニコール・キッドマンの行動に焦点を当て過ぎてしまったため,世界がどうなっているのかがまるっきり伝わらなくなってしまったのも,恐らく設定のミスでしょう。そして,最後のハッピーエンドに持っていくのもせっかち過ぎて,これで納得しろといわれてもちょっとなぁ・・・という感じでした。

 ま,ニコール・キッドマンの美しい横顔と下着姿が見られたから,元は取れたようなものですが・・・。


 スペースシャトルに何かが衝突し,落下するという事件が起こり,破片はアメリカ東部に広く落下した。ぶつかったのはウイルス型の宇宙性物でそれは破片とともにばらまかれた。この生物は人間の体に侵入してREM睡眠中に意識を乗っ取り,外見は変わらないが無表情で冷酷な生物に変化し,次々と感染していた。

 精神科医のキャロルは別れた夫が見た目は変わっていないのにどこかおかしいことに気づく。そして同僚の医師たちとともに,町の人たちが新種のウイルスに感染していることを知る。そして最愛の息子が感染したのに発症しないことに気づき,数年前に脳炎に罹患したことがあることを思い出し,彼が謎の感染症を治す切り札であることに気づく。しかし,感染者による非感染者狩りが始まっていて,彼らはキャロルの息子を拉致した。果たしてキャロルは愛息を救えるだろうか,という映画。


 まず良いところは,主演のキッドマンのいつもながらの美しさ。以前かあら思っていましたが,恐らく「世界一横から見た鼻が美しい」女性でしょうね。そして,何とかして息子を救おうとする必死の表情は迫真の演技と言っていいでしょう。また,後半のカー・アクションのシーンも迫力十分です。


 というわけで,彼女が登場するシーンだけ見ていると十分に面白いんだけど,それ以外の部分は全くだめ。

 たとえば,「感染してしまうと感情の起伏がなくなり,感染者同士の争いはなくなる。その結果,世界各地の紛争は終了し,北朝鮮ですら国連の決議を受け入れた」なんて設定は面白いし,いろいろ考えさせる部分ではあるんだけど,それが画面からほとんど伝わってこないんですね。なぜ伝わらないかというと,テレビから流されるニュースの形でしか描かれていないからです。そうなった理由は,キャロルの行動(感染者から逃れたり,子供を救おうと必死になって行動したり)を描くことを重視したあまり,それ以外の社会や世界を描く余裕がなくなってしまった点にありそうです。

 それと,宇宙ウイルスの感染の症状の描き方が矛盾しています。最初の方では感染すると顔が屍蝋状というか,溶けたようになるちょっとホラーなシーンで感染したことが描かれていますが,それと,「人間の姿形は変わらないが,精神だけが乗っ取られて」というのが一致しないんですよね。このあたりは見ていてすごく違和感を感じました。


 さらに,「感染したけれど発病しない」人がいるんだけど,それもたまたまキャロルの患者で,既往歴に脳炎があり,そこからキャロルの息子も「感染したが発病しない」という説明になるんですが,これで納得しろといわれても困るよな,という程度の説明じゃないでしょうか。

 それと,非発病者であるキャロルの息子を感染者側が拉致するんだけど,拉致してどうしようとしていたのか,なぜ殺さなかったのかの説明もありません。というか,そもそもその宇宙ウイルスが人間の精神を支配して何をしようとしていたのか,何のために人間にとりつくのかという説明もありません。もちろん,「たまたま人間に感染しただけで,何かしようという目的はなかった」という理由付けでもいいですが,最低限,そのあたりの説明をしてくれないと,見ている方には,いったい何が起きているのかがわかりません。

 それと,最後のハッピーエンドの終わらせ方も無理矢理で強引。キャロルの息子を研究してワクチンを開発した,というのでいいと思うけど,その前にキャロルは発病するはずですよね。だって感染していますから。発病しないようにと眠らないように頑張っている姿は描かれているけど,その努力はいつまでも続けられないし,ヘリで助けられたとしても機内で寝ちゃって発病するんじゃないでしょうか。


 という感じで,ニコール・キッドマンが出ている映画なら何でも大好き,という人にはお勧めしますし,彼女の演技はとてもすばらしいです。しかし,いくらSFホラーだといっても,きちんと説明すべきところは説明して欲しい,説明すべきだと考えている人にはお勧めしません。

(2009/04/03)

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