《バイオソルジャー PARAGRAF 78》★★★★ (2007年,ロシア)


 130分に及ぶ,ちょい長めのロシア製アクション映画。お前たち,何で仲間同士で殺し合うんだよ,という無茶苦茶映画なんだけど,何しろアクションシーンはすごいし,映像的にも凝っているし,ワイヤーアクションもCGFも自然だし,水準以上の映画である。見て損はないと思う。何より,登場する特殊部隊の隊員たちの人物像が見事に描き分けられていて,どの登場人物にも自然に感情移入ができる点も好ましい。

 アクションシーンはロシア特殊部隊お得意のコマンドサンボと「ガン=カタ」です。後者の「ガン=カタ」とは映画《リベリオン》(アメリカ,2002年)に登場した架空の武術で,ガン(拳銃)とカタ(東洋武術の「型」)を組み合わせたもので,接近戦で相手の放つ銃弾の軌道を予知して避けながら相手に打撃を与え,銃弾を打ち込む,というものらしい。映画の後半はこの「ガン=カタ」を初めとするさまざまな1対1の対決シーンが続き,かなりの迫力である・・・というか,恐らくこれらのシーンを撮影したいがために作った映画なんじゃないだろうか。


 軍縮が世界規模で始まった近未来の世界が舞台だ。ロシアの孤島に置かれた実験施設からの連絡が途絶えた。しかし,その地下には密かにロシア軍が配備していた弾道ミサイルがあり,その情報を欧米がキャッチするのは極めてまずい事態となる。

 そこで軍は,グッドウィン隊長が率いるかつての特殊部隊を再召集し,5人の男と1人の女が集められた。彼らは選りすぐりのエキスパートであり高い戦闘能力を持つ格闘のプロだった。彼らは地下のミサイルと施設を破壊するよう指令を受ける。

 実験施設に着いた彼らを待っていたのは死体の山であり,激しい銃撃戦が行われたことを示していた。そして彼らに同行していた医師は,その施設である種のウイルスに関する実験が行われていて,そのウイルスに感染したための事故であることが明らかにする。事態を知った彼らは撤退しようとしたが,時既に遅し。彼ら全員が感染していることが明らかになる。そこで彼らは凄絶な決断を下す,という映画だ。


 秘密研究室で新種ウイルスを作り,それに感染した研究者が凶暴になり・・・というあらすじを読むと,《28日後…》《アイ・アム・レジェンド》を思い出すし,その基地に特殊部隊が突入・・・となると,「凶暴化した感染者と特殊部隊の間で死闘が繰り広げられるのだろう」と展開を予想してしまうが,この映画ではそうならないのである。

 なんと死体の山を目の当たりにし,自分たちも感染し,それが治る見込みがない(=自分たちもいずれ発症して凶暴化する)ことを知り,理性が残っているうちにクジで二人を選んでその二人が殺し合いをし,それを続けていって最後の一人になるまで続けよう,という決断をするのだ。要するに,《バイオハザード》風になるかと思っていたら,集団自決物語に無理やり突入するのだ。


 オイオイ,ここでこんな解決法をなぜ思いつく? よりにもよってなぜこんな方法を思いつく? なんで全員それに一致賛成する? ほかに解決法があるだろう? お前ら,酔っ払ってないか?・・・と唖然とするわけですが,登場人物たちの会話を聞いていると,「そうか,こういう方法しかないのかな?」と思ってしまうのだ。要するに,無理矢理に「ガン=カタ」に持っていくための設定なんだけど,面白いから許しちゃうのだ。

 登場人物は十分に描かれていて,そういう人物設定がしっかりしているから物語としての奥行きがあり,単なる「お馬鹿アクション映画」とは一線を画している。

 登場人物はグッドウィン隊長以下6人。唯一の女性のリサは今ではグッドウィンと結婚しているが結婚生活は既に破綻していた。そしてリサがかつて思いを寄せていたスキフ,いつも下らないことばかり喋り続けるブラジル人のフェスティバル,日系人で武士道を信奉するスパム,そしてリューバ,パイである。彼らは対立したり喧嘩になりかけたりするが,お互いに一番深いところで6人を心の底から信頼している。

 そして,その彼らがお互いに殺しあうのだ。ある者は相手を躊躇なく殺そうとするし,ある者は相手から先に向かってくるようにわざと仕向ける。そして,鍛え抜かれた肉体同士がぶつかり,極限状態で相手の技を見切って弾を避け,拳を叩き込んでいく。そして,一対一の決着がついた後の最後の会話や何気ないシーンが胸が熱くなる。


 というわけで,水準以上の面白さだったが,唯一の問題は邦題のひどさだろう。原題は "PARAGRAF 78" だが,《バイオソルジャー》というタイトルを見たら誰だって,生物兵器や新種ウイルスで超人的な身体能力を身につけた兵士が活躍する映画か,超能力を獲得した敵と特殊部隊が激突する映画を想像してしまうはずだ。もちろん,ヒット映画《バイオハザード》と間違ってレンタルショップで借りる人がいることを見込んでのタイトルだと思うが,ちょっとあざとすぎないだろうか。

 ロシア発の新感覚のアクション映画として,楽しんで欲しい。

(2009/05/04)

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