《ブラックサイト UNTRACEABLE》★★★ (2008年,アメリカ)


 アイディア自体は悪くないし,物語のテンポはいいし,起承転結はしっかりしているし,説明不足の部分はほとんどないし,また,殺人シーンはそれなりにグロいしと,ちょっと楽しむには悪くない作品でしょう。水準はクリアしていると思います。

 ただ,ちょっと物語が平板といえば平板だし,ラストの結末も無理矢理というほどではありませんが,ちょっと強引かもしれません。また,犯人の正体は早い時点で明らかにされるし,犯人自体にがあまり魅力がない点が計算違いだったかもしれません。そういう小難しいことを考えなければ,100分間,最後まで楽しめるんじゃないでしょうか。


 主人公はFBIのサイバー犯罪の捜査官ジェニファー(ダイアン・レイン)。彼女は "Kill With Me" という謎のサイトを担当する。そこでは,実際の殺人の様子をネットでリアルタイムに動画として配信していて,アクセス数の分だけ死期を早めるという仕掛け(動けないように縛り付け,ヘパリンを点滴しアクセスが増加するほど点滴を速めて出血死させるなど)がしてあった。

そのサイトを摘発しようにもロシアのサーバを利用し,しかもミラーサイトを次々と変えるという巧妙なギミックを仕込んでいて,ジェニファーと同僚たちの努力にも関わらず,犠牲者は死んでしまう。

 そして,第2の殺人公開中継が起こり,ついにはジェニファーの同僚も犠牲になる。しかし,その同僚が死の直前に画像を通じて伝えたわずかな手掛かりから,ジェニファーはついに真犯人を割り出すが,その時,犯人の手は彼女にも迫っていた・・・というような内容。


 まず,ネットで殺人の様子を公開し,しかもアクセスが増えるほど早く死んでしまう,というアイディアは面白い。ネットで話題になり,興味本位でそのサイトを開いた人間すべてが殺人の共犯者になります。一人一人はちょっとした退屈しのぎや刺激欲しさにマウスをちょっとしたはずみでクリックするだけなのに,それで人がジワジワと殺されていく。いかにも現実に起こりそうな怖さです。

 そして,殺し方も斬新というほどではありませんが,真綿で首を絞められていくような殺人方法なので,痛みと恐怖は間違いなく見ている方に伝わってきます。要するに,恐怖映画の怖さでなく現実として実感できる怖さなのです。


 事件を追うジェニファー役のダイアン・レインも「夫に先立たれて8歳の娘を一人で育てているアラフォー女性」を無理なく演じています。何しろ,寝起きのシーンではほとんどスッピンじゃないの,と思えるくらい「歳相応に」老けて見えるのです(ちなみに,撮影当時のレインは43歳)。このあたりは極めて自然で好感がもてます。
 最後の方で犯人の手はジェニファーにも及びますが,「多分こうなるんだろうな」と誰しも予想する結末になりますので,その点では安心して見ていられます。

 また,同僚の捜査官とお互いに惹かれ合っているみたいなんだけど,それ以上踏み込んで恋愛関係にならないというのも,この手の映画としては好ましいです。

 前述のように犯人は映画の中頃で明らかにされます。そして,なぜ彼が次々と連続殺人を犯すのかという動機も明瞭です。犯人に同情できるわけではないけれど,ネット社会にありがちな事件の被害者の行動としては理解の範疇内でしょう。そのため,映画を見終わったときの後味は悪くありませんし,すっきりしています。そういう意味でも「安心して見られる」映画なのでしょう。


 その反面,犯人の人物像が早い時点で明らかになってしまうため,その後の彼の行動について「それほど突拍子もないことは出来ないはずだよね」と察しがついてしまいます。つまり,第1の殺人の場面のような得体の知れない怖さがなくなります。もしかしたら,もっと後になってから正体と動機を明らかにした方がより盛り上がったんじゃないでしょうか。少なくとも,犯人の顔はあの時点で映さなかった方がよかったかと・・・。

 要するに,もともとのアイディア自体の面白さと殺人方法の工夫にもたれ掛かり過ぎて,それに脚本が負けているような気がしますね。

 不自然といえば,サイバーテロの専門家がWindows Vista(と思われる)をそのまま使っているというのはかなり変。普通なら使用するコンピュータのOSはUnix,あるいはLinuxあたりじゃないでしょうか。さらに,現在のサーバーテロ対策からいえば,もっと簡単にそれほど苦労せずに犯人が使用したパソコンを割り出せるんじゃないでしょうか。

 それと,ジェニファーの娘さんのあのシーン,子供を持つ親にとってはとても怖いシーンなのですが,なくても良かったような気がします。ま,見ている方を怖がらせる効果はあったわけですが。


 というわけで,とりあえず暇なんで,ちょっと怖いけど後味が悪くない映画が見たいな,多少のグロ画像も大丈夫,というあたりにオススメ映画でしょうか。

(2009/06/09)

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