《セルラー・シンドローム Video Clip》★★★ (2007年,タイ)


 携帯電話,盗撮動画投稿サイトという今風のテーマを元に作られたタイのサスペンス映画。説明不足の部分はあるが,結構楽しめる作品だ。そして何より,主役のミーナを演じるガームシリ・アーシラルートシリがすごく可愛くて魅力的である。


 ケンは携帯電話の修理を仕事にしていたが,客の携帯電話に録画されているプライベートの動画をコピーしては仲間と楽しんでいた。そんなケンの店に,美術専攻の美しい女子大生ミーナが訪れて携帯電話の修理を依頼する。やがてケンはミーナと付き合うようになり,彼女の魅力に惹かれていく。

 一方,ケンの仲間たちは有料の盗撮動画サイトで金を稼いでいたが,一人が暴走族に殺されるという事件に遭う。そしてその頃から,ケンの携帯にミーナの着替えシーンやシャワーシーンの盗撮動画が送られてくるようになる。

 いったい誰が盗撮しているのか,何のために自分の携帯に彼女の盗撮動画を送ってくるのかもわからないまま,ケンの仲間がまた殺され,そしてケンとミーナにも危険が迫っていく。そしてついに驚愕の事実が・・・・という映画である。


 前述のようにミーナ役の若い女優さんがきれいで瑞々しく,とりわけエンドロールで流される「恋人」とのラブラブの様子が微笑ましく,幸せ一杯の表情を見ている方も嬉しくなってくる。だからこそ,最後の場面のミーナの鬼気迫る表情がより生きてくる。そして,そんなミーナを全力で守ろうとするケンの必死さもいい。あの雨のシーンでのケンの決意と表情から彼女を思う想いが強く伝わってくる。

 そして,一度だけケンとミーナのベッドシーンもあるが,ミーナの描く絵のタッチに二人の「動き」を重ね合わせる,という見事なモンタージュがあり,これも見事だ。こういう絵画の使い方を見たのは初めてだ。映画監督のセンスの良さを感じさせる印象的なシーンである。

 個人的に問題があったのは,前半の若者たちがクラブで騒ぎまくっているシーン。こういう乱痴気騒ぎを見ているのは,さすがに50歳を過ぎると辛いものがあり,この部分のテンポの悪さのためもあって,途中で見るのを止めようかと思ったくらいだ。しかし,中盤からケンとミーナに焦点が合わさって畳みかけるような展開になってから,俄然テンポがよくなるので,前半のかったるさを乗り切るまではちょっと我慢が必要かもしれない。


 この映画は要するに,携帯の盗撮動画投稿サイトを運営するケンの仲間たちにふりかかる理不尽な殺人事件,そしてケンに届くミーナの盗撮動画という事件が組合わさっているわけだが,これらの間にどんな関連性があるのか,最後の最後までわからないのだ。

 犯人については途中で「こいつしかいないよね」という一人に絞られてしまう(例の○○動画の部分で絞られる)が,何しろ動機が最後までわからないのである。「誰が」はわかるが「何のために」「なぜここまで」が皆目見当がつかないのだ。そして最後の10分くらいで全てが明かされ,全体像が一気にわかっていくが,ここは見事な力技と言っていいだろう。なるほど,それで冒頭に女子高生が飛び降りたのか。ううむ,納得。


 なお,映画配給会社はこの作品をホラー映画として宣伝しているが,これは完全な間違い。ホラー的要素は皆無で,良質な社会派スリラー作品である。

(2009/06/19)

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