《脳内監禁 〜nijyujinkaku〜》★★ (2005年,アメリカ)


 ご丁寧にも「nijyujinkaku」というローマ字のサブタイトルが付いていますが,原題は《Head Space》と全然関連性がありません。おまけにこの映画を最後まで見ても,二重人格系ホラーなのか,異次元怪物系ホラーなのかよくわかりません。配給会社は「これは二重人格映画なんだよ」としているので多分そうなんでしょうが,そう判断するには余りに証拠が希薄です。一体何が言いたいんだよ,一体どういう映画にしたかったんだよ,という不満ばかりつのる映画です。

 何でこうなったのかはよくわかりませんが,若い映画監督の第一作目ということらしいので,「今までにない新感覚のすげえ映画を撮っちゃうもんね,誰も作っていないホラーだもんね」という意欲ばかりが先行して空回りし,肝心の編集能力が欠如していたため,映画として訳が分からない作品になったのではないかと想像されます。多分,この映画の映像を自由に編集してつなぎ合わせてもいいよ,編集機器も揃えとくからね,と映画好きの素人に渡したら,かなりましな作品にできるはずです。独りよがりの「新感覚映画」をまず作るのでなく,「ふつうの感覚だけどちょっと新しい」程度の映画をまず撮ってほしいな,と思いますね。


 映画の始まりはなかなかすごいです。夫婦と二人の子供(7歳くらいと10歳くらいでしょうか)がいて,お兄ちゃんの誕生日を祝っているんですが,突然母親が鼻出血し,その夜,父親が子供部屋にやってきて「早く逃げなければ」って言い出すんですよ。訳が分からないまま車に乗ろうとすると鼻血だらだらの母親が恐ろしい形相で追ってきて,父親は銃を構え・・・と始まります。

 主人公はちょっと見イケメン風の若いアレックス君。どうやら先ほどの兄弟の弟の方らしいです。彼はハリーという若い男性と出会います。どうやらハリーはチェスが得意で,公園で賭けチェスをしては生活している模様。しかし,その頃からアレックスは激しい頭痛と悪夢に悩まされ始め,ある日発作を起こして意識を失いますが,検査をしても全く異常なし。そこで一人の女性精神科医(オリビア・ハッセー)に治療を託しますが症状は改善しません。そして,アレックスは自分が異常な能力(本をパラパラめくっただけで全ての内容を記憶できるとか,他人の記憶を読みとれるとか)を持っていることに気がつきます。

 そして,過去のフラッシュバックが起こるたびに過去の忌まわしい記憶(父親が母親を射殺したこと,父親が親権を放棄し,しかも兄弟別々の施設で引き取るように要求したことなど)が蘇ってき,そのころからアレックスの身辺では,次々と殺人事件が起こり,知人たちが惨殺されます。そしてアレックスには,彼らを殺したのが恐ろしい獣の顔をした怪物であることを知ります。

 精神科医の紹介で異次元の怪物のことを研究している天才科学者に会ったアレックスは,自分がこの世と異次元をつなぐ「リンク」だと告げられます。そして友人を助けるために奔走するのですが犠牲者はさらに増え,そしてハリーとの関係が明らかになり・・・という映画です。


 と,要約してみたものの,これで本当に要約になっているのか,私の解釈でいいのか,全く自信がありません。主人公の一人称で語られる映画なのに,肝心の主人公の脳味噌(意識)が細切れにぶっ飛んでしまうため,どこからどこまでが事実なのかわからないからです。だから,本当に怪物がやってきたのか,人間が怪物に変身したのか,それともアレックスが怪物だと思いこんでいるだけなのかすら不明です。

 もしも,アレックスの二重人格(別人格)が暴れているのだとすると(配給会社は明らかにこのように解釈していると思われる),最後のシーンで怪物に変身する(ようにアレックスには見える)のは彼の知人と妻(?)ですから,この線はありえないはずです。要するに,映画の作り手が観客側に真相の解釈を丸投げしているだけですが,あまりにも手がかりが少なすぎて,どう解釈してもピッタリきません。


 しかも,全体のテンポが悪すぎて,盛り上がりに欠け,それでいて画面構成だけはやけに凝っているために集中力がそがれてしまい,気がつくと寝ている始末です。ホラーならホラーでいいから,もっとテンポよく話を進めないと,観客全員が寝ちゃうよ。

 それと,俳優さんがどれも地味です。唯一私が知っているのはオリビア・ハッセー(懐かしい! 歌手の布施明の元妻として私の年代の日本人にはかなり有名ですよね)だけで,それ以外はほとんど無名か,何かの作品にチョイ役で出ていた人じゃないかと思います。そのため,画面全体に華がなく,さらにノッペリ感が強くなる始末。

 怪物のメイクもしょぼいです。この程度の怪物なら別に見せてくれなくてもよかったような気が・・・。ホラー映画だと言い張るのであれば,こう言うところにもっと力を入れるとか,変身シーンをもっと丁寧に作るとか,工夫すべきところはいくらでもあったと思いますね。

 最後にアレックスが病院に収容されて鎮静剤で眠らされ,そこに精神科の女医さんが入って行ったかと思うと・・・というラストシーンは明らかに余計でしたね。こんなシーンを入れるくらいなら,この映画全体の謎解きをするとか,なぜ兄弟を別々の施設に預けた理由とか,アレックスの母親は魔物(?)に取り憑かれた(?)理由とか,アレックスの超スピード速読能力って結局何なのかとか,観客に説明すべき項目はいくらでもあったと思います。


 というわけで,見る価値は全くありません。レンタルショップの陳列棚で見かけても,絶対に手に取ってはいけません。時間と金の無駄です。

(2009/06/24)

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