《アルティメイタム》★★★ (2008年,ドイツ)


 最近しばしば目にするドイツ製のテレビ映画の一つです。テレビ映画といっても馬鹿にしてはいけません。ド派手な銃撃戦あり,爆破シーンありと気合いが入りまくっています。

 とは言っても,ストーリーに穴も多いため,繰り返して見る作品ではなくあくまでも暇つぶし用の映画です。その程度と思ってみれば楽しめると思います。

 それと,主要登場人物の人生というか過去がやたらと濃くて,それが細切れで紹介され,さらに,ストーリーの本道に無関係のエピソードがやたらと多いため,必要以上にゴチャゴチャとした印象です。幾つかあるオカルティックなな無駄エピソードをすべて省き,ストレートなアクション映画にした方がよかったと思いますね。


 まず舞台は1928年のポルトガルの寒村。丘に登って遊んでいた3人の少年に神の啓示があり,2人はショック死し1人は盲目となります。生き残った一人は「6番目の月に天使の町に天の炎が降り注ぎ・・・」という預言を伝えるために聖職者になります。

 そして舞台は現代。バチカンのローマ教皇護衛隊のリーダーのコンティは,その預言が「教皇のケルン大聖堂訪問で教皇暗殺が起こる」という意味であることを知り,一足先にドイツに向かい,連邦警察との連携捜査に着手。

 さらに舞台は西アフリカのベナンに移り,かつて「外科医」と呼ばれていた凄腕の狙撃手で現在は引退しているハムダンの元に教皇狙撃の依頼があり,彼は久しぶりに殺しの世界に復帰し,ケルンに向かいます。

 そして,教皇狙撃を阻止しようとするドイツ連邦警察+コンティに対し,ハムダンは厳重な警戒をくぐり抜け,狙撃ポイントに到着し,毒薬を弾頭に仕込んだ弾を込めたライフルの引き金を・・・という映画です。


 これだけでもかなり込み入っているのに,コンティとハムダンは内戦中のレバノンで因縁があり,しかもそれにバチカンの神父も絡んでいます。おまけに,もともと本物の外科医だったハムダンが暗殺者になったいきさつもこれまた濃いし,スイス人のコンティがなぜバチカンの護衛隊にいるのかというのも親子三代にわたる話だし,ドイツ連邦警察の指揮を執る女性警視正とその部下の関係もなんかありそうだし,次期ローマ教皇を巡るバチカン内部の抗争があることまで盛り込まれています。

 これでもお腹一杯なのに,冒頭のオカルティックな場面少年の目玉が白くなったかと思うと,いきなりサンフランシスコのビーチの画面に切り替わり,ビキニのお姉さんがいたかと思うと空から隕石と,冒頭はめまぐるしく場面が変わります。何が起きているのか,ぜんぜん理解できません。

 で,例の預言ですが,実は物語の進行には関与していません。冒頭の3人の子供も,預言を告げるために修道院のベッドに30年寝たきりの神父様も,ロサンゼルスの隕石もすべて無駄です。というか,これがあるから逆に,ストーリーがわかりにくくなってしまったようです。

 それと,誰が主人公なのか,よくわかりません。暗殺者ハムダンなのか,バチカンの護衛,コンティなのか,はたまた連邦警察の指揮官の女性なのか,焦点を絞り込めないうちに物語りだけどんどん先に進みます。しかも,この3人が同じくらい活躍するし,同じくらい魅力的なんですよ。特に,コンティとハムダンはどちらも主役といっていい存在感です。逆に,見ている方にとっては,どっちが主役なのかわからず,「無敵のテロリストを主人公にした映画」なのか「無敵の護衛官を主人公にした映画」なのか,わからないまま見続けなければいけません。やはりこれは辛いものがあります。


 そういう欠点に目をつむると,アクション部分はかなり本格的で,手間と金をかけています。冒頭の「隕石落下」こそ手抜きのCGですが,その後のレバノンでの派手な爆撃シーン,ケルン市内での派手な銃撃戦と逃げまどう市民の数の多さ,市街地のビルを破壊しながら墜落するヘリコプターのシーン,ケルン大聖堂に集う群衆の多さなど,テレビ映画のためによくこれだけ金を使ったな,と思いますね。

 主役の二人,コンティとハムダン,どちらも中年のおっさんですが,二人とも渋くて格好いいです。特に,凄惨な過去を持つハムダンは格好いい禿頭です。狙撃の腕もさることながら,頭の回転が速く次々と警察の捜査を攪乱させる行動に出るし,無慈悲に男は殺していくのに女性は絶対に傷つけない,というのも格好いいです。彼を主人公にした映画,もっと見たいです。


 細かいところを見ると,もちろん穴だらけで都合よすぎる展開の連続です。要するにツッコミどころ満載ってやつです。でも,最後まで楽しませてくれたので,そこらをつっこむのは野暮と言うものでしょう。

 という,暇つぶしには最高のアクション映画でございました。


 それにしても,この映画に限らず,大昔の預言が未来に起こる事件を予言している,未来に起こる事件の解決策を暗示している,という小説や映画が多くて閉口します。最近のダビンチ物映画なんてまさにその典型なんですが,やはり生まれたときから「聖書が正しい」という教育を受けてきた文化だからなんでしょうか。何か事件が起きたら古文書を紐解く,古文書を発掘する,という発想が私には理解できません。

(2009/06/30)

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