《SLIME スライム/Something Beneath》★★ (2007年,アメリカ)


 地下に粘菌のような自由に形を変えられる生物がいて,それがリゾート開発だったかコンベンションセンター開発で目を覚まし,人間を襲い始める,とうダサダサ・モンスター映画なんですが,チープな低予算映画のため,恐ろしさも何も伝わってこないという悲惨なことになってしまいました。おまけに,登場する人間も安っぽく類型的に描かれているだけで感情移入したくなる人物は一人もいません。そしてストーリーの展開も妙にテンポが悪いです。

 ちなみに,原作は何かについては触れられていませんが,クーンツの『ファントム』に酷似しています。地下に住む謎の生物がいて自由に形が変えられ,分裂したり合体したりするのも同じなら,それが人間の意識の中に入り込んで幻覚を見せる,というのも同じです。ただ悲しいことに,クーンツの小説の方が圧倒的に面白く,そしてあたかも映画を見ているかのように錯覚させるほどの筆力なのです。小説にビジュアル的に負けてる映画ってどうよ,という気がしますが,敢えて比較するのも可哀想な気がしてきます。悪いのは貧乏なんですから・・・。


 アメリカのとある内陸の町に開発計画が持ち上がります。しかし,その会社から環境への影響を調べるように依頼された科学者は,工事が始まってからその一体のすべての動物が姿を消したことを知り,社長に進言しますが,もちろん,「下らんドブネズミのためにこの計画を止めろとは何事だ!」と一喝され,つまみ出されます。

 そしてその地域にあるホテルで環境保護派の会議が開かれ,環境保護活動をしている牧師,オタク系科学者,そして「私,エコって大好き!」というセレブのお嬢様も出席。そして会議のマネージャーの女性,ホテルの警備主任などが紹介されていきます。そして,牧師と警備主任には過去のいきさつがあったことがわかります。

 しかし,ホテルの配水管が詰まったり,蛇口から黒いベットリした液体が出てきたりと次々とトラブルが起こり,やがて,会議で発言する予定の科学者が失踪し,セレブお嬢様は部屋で変死体で発見されますが,ホテルのオーナーでもある開発事業のボスは「死人が出たことを知られるのはまずい。ホテルの評判が落ちる」ということから警備主任に死体を隠すように命令します。

 一方,10歳くらいの時に犬に襲われて大怪我をしたというトラウマを持つ女性マネージャの前に,それと全く同じ犬が現れて襲ってきます。彼女をすんでのところで助けた牧師は彼女を伴って森を歩いていて,一つの小屋を発見。それは「この地域からすべての動物が姿を消している」ことを叫んで最初に登場した科学者の研究室であり,彼はそこであの「黒いネバネバ」を見せ,それが高度な知能を持つ生命体であることを突き止めた,と説明します。しかしその時にも,第3,第4の犠牲者が生まれ,ついに・・・という映画です。


 この映画がダメなのは,「黒いネバネバ生物」が自分に触れたものを敵だと認識して襲ってくる,という様子が映像的に全く描かれていない点にあります。もちろん,人間を攻撃する手段は物理的なものでなく,「その人が最も恐れるものを幻覚として見せ,恐怖で殺す」というものであるため,殺される側が見る幻覚のシーンはそれなりに面白いのですが(セレブお嬢様が自分が老婆になっている姿を見るところとか),結局,攻撃手段はそれしかないため,そのからくりが見えてくると次第に飽きてくるのです。どうせここから先はまた幻覚シーンが連続するんだろ,と展開が読めてしまうからです(そして実際,その予想通りに展開するのが悲しいのですよ)

 一番最後に巨大なベトベトに合体してくれますが(もちろんお手軽CGでね),それを見るのは科学者,ヒロイン,そして牧師の3人なのでなので,全く「巨大」には見えません。どうせ巨大になるんなら,下水道やら排水校を通じてそこらから吹き出し,ホテル全体を包み込んだり,開発工事現場全体を飲み込むなり,そういう「いかにも映画」というシーンを作って見せて欲しかったです。


 ヒロインが,先住民だったおばあちゃんからもらった木のお守りと大地に捧げる祈りを知っていたために助かる,という急転直下型無理矢理スピリチュアル系の解決もすごかったです。うひゃあ,大地に祈りですか。「オーラの泉」出まくり状態です。この結末に持っていくため,彼女の回想シーンを何度も挟んで印象付ける必要が生じ,それが映画全体のテンポを悪くした主犯なんですが,スピリチュアルに自己陶酔している映画監督は全く気にしていません。


 あと,「黒いベトベト」の正体を明かすという重要な役割を果たす科学者の姿が余りにコミカルというか,マッド・サイエンティストっぽ過ぎて,場違いというかジョークにしか見えません。しかもこの科学者君,相手の正体もよくわからず,弱点も不明で,何をどうしたらいいのかも全くわからないのに,「とにかく下水道には行ってみよう」という無謀ぶりを発揮し,笑わせてくれます。

 それと,次々と犠牲者が出て,その死体を見つけた人が「うわあ,こりゃひどい!」と驚くシーンが続きますが,その「ひどい」様子は映像ではほとんど確認できません。お子さま向けにひどいシーンはお見せしません,というスタンスなのかもしれませんが,見ている方に,それは建前で,実は特殊メイクに金をかける余裕がなかったからなんだよね,とバレバレなところが悲しいです。重ね重ね,貧乏に負けた映画です。

 ちなみに,ヒロイン役はこの手の映画で時々見る正統派の美人女優さんですが,そろそろ年齢的にヒロインは辛くなってきたような気がします。

 ちなみに,エッチシーン,お色気シーンは皆無(セレブお嬢様の胸の谷間がある程度),そして残虐なシーンは探しても見つかりません。


 というわけで,箸にも棒にもエロにもグロにもかからない,スピリチュアル系駄作でございました。

(2009/08/07)

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