《トルネード・インセクト "Locusts: The 8th Plague"★★ (2006年,アメリカ)


 遺伝子操作によりモンスターに変身したイナゴが町を襲う・・・って,どっかで見たような映画だなと思ったら,先日紹介した《D.D.T.》とまるっきり同じじゃん。違う点は,本作は農作物でなく動物や人間を襲う点と,やたらとグロい場面が多いという点です。パニック映画と言うよりホラー映画を作りたかったみたいです。

 ちなみに,↓このDVDジャケットのような「摩天楼が並ぶ都市をイナゴが襲う」シーンは全くありません。

 そしてツッコミどころだらけです。ストーリーも説明も設定も,ムチャクチャすぎて笑うしかありません。特に昆虫系の知識が凄まじすぎて,もしかしてこれはギャグ? という気もしてきます。ツッコミが好きな人にはたまらない作品かもしれません。


 舞台はアイダホの研究所。ここでは農作物の害虫被害を研究していて,ついに完成したのが「作物の害虫だけを食べるイナゴ」です。遺伝子操作で肉食に変身させたんですね。そして,実験の途中でトラブルが発生し,イナゴ軍団は研究室の外へ逃げ出してしまい,周囲の牛たちを襲い,やがて人間も喰い殺されます。

 農業関係のお役所に勤めているヴィッキー(獣医さん)は異常に気づき,婚約者のコルト(昆虫学者で有機栽培の研究者)に相談。ヴィッキーの父が勤めている研究所が怪しいとにらみ,ついにそのイナゴの正体を突き止めます。当初それは,「雄ばかりで2日もすれば全滅するさ」という説明でしたが,数はどんどん増えるばかり。

 そして,国の組織で働く「イナゴ被害の専門家」は強力な殺虫剤(農薬)を散布しますが,逆にイナゴ軍団は元気になり,散布するヘリコプターを襲ってきます。それもそのはず,このイナゴは遺伝子操作により「化学合成された農薬を栄養にする」能力を持っていたのです。そしてコルトは,「化学農薬が好きなら有機農薬に弱いはず」と推理し,小型飛行機で有機農薬を散布。イナゴはどんどん死にます。これでおしまいかと思ったその時,さらなるイナゴ軍団が襲ってきます。しかも有機農薬はもうありません。その時,ヴィッキーの父親は・・・ってなお話だ。


 さあ,どっから突っ込もうかな。

 映画冒頭,研究室で虫が飛び交う様子が映されます。どうやら「農作物の害虫」らしいです。飛び方を見ていると虻か蠅のような飛び方,つまり羽を高速に羽ばたいて飛んでいて,「ブーン」という羽音が予想されます。しかし,止まっている姿は普通のゴキブリです。ですが困ったことにゴキブリはこういう飛び方はしないんですよ。羽を動かすスピードは虻に比べてはるかに遅いため「バタバタ」という羽音をたてて飛びます。まずこの時点で,昆虫少年,元昆虫少年は笑い出します。おまけに,ゴキブリは農作物は食べません。二重の意味で大笑いできるシーンです。

 通常,農作物の害虫と言えばコガネムシなどの甲虫,各種鱗翅目の幼虫,そしてカメムシなどの半翅目と直翅目のイナゴ(バッタ)です。「草食であるイナゴを肉食にすれば,作物は食べないし,害虫だけ食べるようになる」という説明付けなんですが,なんだか回りくどい気がします。


 「草食のイナゴを食べる肉食イナゴ」という設定にしたため,「遺伝組み替え肉食イナゴ」はすごくでかいです。通常のトノサマバッタなんてもんじゃなく,体長(頭からしっぽの先まで)15センチはある巨大さです。ボルネオの密林に生息するヤブキリくらいでかいです。しかも,羽の形はどうみても甲虫,おそらく形からするとカミキリムシの羽と思われ,イナゴの羽とは明らかに違います。ま,カミキリムシの羽は格好いいけどね。

 おまけに最初の説明によると,「せいぜい2日で死んでしまう」のだそうです。だから,農民は毎日のようにその「肉食イナゴ農薬」を購入してくれる,というのがヴィッキー・パパの目論見です。でも,害虫なんて毎日やってくるんですから,2日間だけ食べてくれても意味がないわけで,そんなの商品にならないってことに早く気がついて欲しいです。


 途中で,洞窟みたいなところが「肉食イナゴの巣」であることがわかります。洞窟の天井にびっしりとイナゴ君が張り付いています。どうやらこの映画監督は,イナゴとコウモリを間違っているような気がします。

 しかも,イナゴは卵を生んでいるらしいのですが,卵は天井から粘液みたいなのでぶら下がっています。どう見ても,「うどんげの華(クサカゲロウの卵)」にしか見えません。このシーン,昆虫マニアのみ,笑えます。

 しかも,卵から孵った幼虫をサンプルとして持ち帰りますが,それはどう見ても巨大芋虫,つまりクワガタやカミキリムシの幼虫であって,イナゴの幼虫ではありません。イナゴは不完全変態をするので,卵から生まれたときからすでに「小さなイナゴ」の形をしています。


 この「肉食イナゴ」は農薬を好むんだそうで,農薬のかかった作物を食べた人間や化学肥料のかかった植物を食べた牛の体内に蓄積されている農薬を感知し,それで牛や人を襲っている,と説明があります。ヴィッキーとコルトが「イナゴ軍団」から襲われなかったのは有機野菜だけ食べているから助かったのだそうです。ムチャクチャさもここまでくると感動ものです。

 「遺伝子操作したイナゴは雄ばかり。だから増えないんだ」と説明されていたはずなのに,いきなり数日で増えたのはなぜ? 雄が雌を見つけて卵を生み・・・としても余りに早すぎます。何しろ,2日で卵から孵化して幼虫(芋虫だけど)ですぜ。遺伝子操作により形も変わってしまった雄がどうやって雌と交尾したのかも不明です。


 この映画の監督さんは,実は有機野菜とか化学肥料なんてどうでもよく,グロいスプラッターシーンを撮りたかっただけじゃないの,という気がしてきます。イナゴ軍団に喰い荒らされた人間の顔や牛の死体が,これでもか,これでもかと詳細に映し出され,しかも,CGはあれほど手抜きなのに,犠牲者の顔はやけに力を入れてメイクしているからです。そして,超高速で飛び回るイナゴたち(何しろ,飛行機を追ってくるんだぜ)は,人体なんて簡単に貫通しちゃいます。45口径マグナムを至近距離から発射したみたいです。どんだけ堅いんだ,君たちは!

 しかも,車の中に逃げ込むと,車めがけて襲ってきます。フロントガラスはベットリしています。なぜかというと,イナゴ君たちの体は粘液みたいなので覆われているからです・・・って,そんなベトベトしたイナゴっていないと思います。

 そうそう,イナゴ軍団が襲ってくるシーンはすべてCGですが,これがまた悲しくなるほどレベルが低くて泣けてきます。


 と,思いつくままにツッコミを入れてみましたが,まだまだツッコミどころがあったような気がしますが,これ以上書くのは時間の無駄なので止めますね。

(2009/08/14)

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