《ゴースト・ハウス "The Messengers"》★★★ (2007年,アメリカ/カナダ)


 田舎の古い家を買ったら,実はその屋敷ではかつで惨殺事件が起きたいわく付きの物件で,次々と怪奇現象が一家を襲うという,いかにもありがちなホラー映画。ホラー映画好きなら同じような設定の映画の2つや3つ,すぐに挙げられると思います。その点では新味はありません。

 幽霊ものホラー映画としてはムチャクチャ怖いというものではないし,起承転結もしっかりしているので,よほど幽霊に弱い人でなければ普通に楽しめると思います。


 舞台はアメリカのどっかのド田舎。それまでシカゴで暮らしていたソロモン一家(夫婦と子供二人)ですが,父親の失業やら,姉のジェス(17歳くらい)が運転する車が事故を起こし,同乗していた弟のベン(3歳)がショックで失語症になったりと不幸続き。そこで父親は心機一転,田舎の農場付きの古い家を購入し,ヒマワリを育てて再起を図ろうとします。

 しかし,その家に引っ越した直後からジェスとベンはその屋敷に「何か」がいることを感じ,彼らの目の前で次々と不思議なことが起こりますが,父母にはそれが見えません。

 そして,父親がカラスの群れに襲われると言う事件が起こり,偶然そこを通りかかった男ジョンが助けてくれたことから父親は彼を雇い入れ,ヒマワリも順調に育っていきます。しかし,ジェスはふとしたことからその家で昔,殺人事件が起きたことを知り,その犯人が父親だったことを知り・・・という映画です。


 前述のように,幽霊屋敷系ホラー映画の王道を行くような作品ですが,映画としては非常に手堅く作られていて,サイモン一家の過去にどのような出来事があったのか,幽霊屋敷の地縛霊の正体は何なのかは丁寧に要領よく紹介されて判りやすいです。3歳のベンが一番最初に例を見ますが,彼は失語症でそれを誰にも告げられない,というのもうまい設定です。また,ストーリー展開のテンポがよく,途中でだれる部分がないのも見ていて心地いいです。

 同様に,恐らくサイモン一家は助かるんだろうな,そして最後のシーンでベンが○○するんだろうな,というのは途中でミエミエで,実際そのとおりになりますが,この映画に限ってはそれが「よかった,よかった」という感じになります。奇を衒った部分が全くないオーソドックスな作り方なので,予定調和の進行で安心できるんでしょうね。ううむ,なんだかこの映画に関しては採点が甘いなぁ。

 怖いシーンは幾つかありますが,ホラー映画としては「普通の怖さ」でして,夢に出てきそうな怖さではありません。「何か」がいきなり出ることはないし,途中で登場する亡霊(?)のメイクも普通です。むしろ,ジワジワと迫ってくる怖さを楽しむ作品でしょう。


 とは言っても,映画の内容を文章化してみると前後の脈絡がなく,説明不足の部分もあります。例えば,父親の農場を助けることになる人のよさそうなジョンが怪しそうなのは最初からミエミエですが,この家の購入にかかわっている銀行員も死霊系? こいつの登場の仕方はホラー映画の常套を踏んでいますから(例:振り返ったらいきなりこいつが立っているとか)多分そうなんだろうと思うのですが,だったらなぜ「もっと高い値段で買い取りたいと言う人がいるんだけど,売ってくれませんか」って言うんだろうか。

 カラスが常に登場しますが,なぜカラス? カラスでなければいけない必然性はありませんので,カラスである意味をどこかで説明して欲しかったです。

 それと,最後は「死霊,怨霊はいなくなり,一過はその家で末永く幸せに暮らしました。めでたし,めでたし」という感じで終わるのはいいとしても,そのためには死霊・怨霊がこの家から消える必要があるんだけど,彼ら(?)の行動を見ているとちょっと納得できないのですよ。何しろこの霊たちは,犯人であるジョンを向こうの世界に引きずり込んだ後も,まだなお,ジェスまで引きずり込もうと襲ってきたほどの凶暴系です。つまり,このシーンから考えると,ジョンを殺したら一件落着ではなく,まだその家に霊が取り付いているはずです。だから,「めでたし,めでたし」で終わるためには,ジョンを倒した後家族の死霊たちがサイモン一家に別れを告げて出て行く,というシーンが必要になるはずです。

 そうそう,一番最初にベンが天井をクモみたいに這い回る霊を見つけるんだけど,こいつって何? なぜ天井を這い回るの? 霊なら浮かんでいるだけでいいと思うんだけど。ジョンがカラスに襲われ,そこで記憶が蘇ると言うのはいいとしても,それまでジョンは「いい人」として暮らしていたんでしょうか。


 原題は「The Messengers」ですが,誰が何を伝えようとしたのか,イマイチ判りません。「犯人であるジョンを探し出し,連れて来い」というメッセージなのかなとは思いますが,死霊たちはそういうメッセージを一切出しません。ただただ,ポルターガイストを起こしてジェスを驚かすだけです。しかも,ジョンはノコノコと向こうからやってきたのですから,さっさとジョンだけ殺しちゃえばいいのに・・・。

 それと,時間の経過がおかしいです。父親は農地を耕してヒマワリ畑にし,家の周りは一面のヒマワリです。つまり,一家が移り住んでから少なくとも半年くらいの時間が経過したはずです。一方,ジェスやベンが「何か」を見るのは引越し直後ですから,半年間,何も起きなかったことになります。これってかなり不自然ですし,半年も「何か」が家にとり憑いていたのなら,いくら父母が鈍感でも何かを察知しますよね。このあたりの時間経過は,恐らく脚本のミスでしょう。


 と言うわけで,普通に楽しめる幽霊屋敷映画でした。

(2009/08/18)

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