《ファイナルストーム Swarmed》 (2005年,アメリカ)★★


 節足動物パニック映画といえばハチとクモが二大主役で,動物パニック映画好きならそらで幾つも作品を挙げられるはずです。このテレビ映画はハチの中でも最強のスズメバチを主役に抜擢しています。

 スズメバチVespinae 。ちなみに Wasp は狩りをするハチ全般を指す用語らしいです)は怖いですよ。何しろ,日本に住むあらゆる野生生物でもっとも被害をもたらしているのはこのスズメバチです。日本国内で死者を出す被害をもたらす野生生物といえば,熊,毒蛇,サメと相場が決まっていますが,それらによる死者は数年に一人程度です。しかしスズメバチは多い年は70人(1989年),それ以外の年もコンスタントに30人前後の犠牲者を出しています。

 で,この映画ですが,スズメバチ退治の殺虫剤を開発しているうち,殺虫剤がスズメバチの遺伝子を変えちゃって,凶暴で毒の強いスズメバチに変化させてしまい,それが町を襲う,というどっかで聞いたことがあるパニック映画です。そして,昆虫パニック映画の定石をしっかり踏んでいて,おまけに一歩も踏み外していないため,見るところも取り得もない凡作になっちゃいました。定石を知っていることは大事ですが,定石しか知っていないと勝負には勝てない,ってことでしょう。

 とにかくツッコミどころ満載のため,ストーリーを紹介しながら突っ込んでいくことにします。ちなみに,舞台となっているのはインディアナ州南部の田舎町であるダンダス(Dundas)です。


 この町でスズメバチ用殺虫剤の研究をしているのがケントです。映画冒頭,いきなりハチ君が登場しますが,日本でよく見るキイロスズメバチやオオスズメバチと違って頭が小さく,体の形もサイズもスズメバチでなくアシナガバチに見えます。ちなみにスズメバチはハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科,アシナガバチはスズメバチ科アシナガバチ族なんで,アメリカのスズメバチってそういうのが多いのかもしれません。ちなみにスズメバチはホバリングできますが,アシナガバチはできないそうです。

 で,ケント君,実験をしています。新薬では8匹中6匹が死に,2匹が生き残っています。生き残りの蜂をケント君は調べますが,体長2センチ以下でスズメバチに見えません。ちなみに研究室ですが,とてもチャチで中学校の理科室みたいです。そして,みんなが帰ったあと,掃除夫が登場。顔がいかにもアホで,がさつに掃除していきます。こいつ,ハチの培養器を壊すか倒しちゃうんだろうなと誰しも想像しますが,その通りにやってくれます。その結果,ハチに刺されて御昇天。セキュリティも何もなっていない研究所です。


 ダンダスの街では全米ハンバーガー・コンテストが近づいています。そして「ウォッシュバーンBBQソース」のオーナー登場。ソースの宣伝をします。そして,ダンダスの町長も登場。ハンバーガー祭りで一儲けたくらんでいる模様です。

 一方,死んだ掃除夫が発見され,死因が蜂刺傷で1匹の蜂が生き残っていることが判ります。ケント君,「フェロモン感知器」で調べますが見つかりません。掃除夫の死体は検死にまわされますが,死者の口の中に隠れていた蜂が飛び出し,検死官もご昇天。ハチは逃げ出します。

 一方,どっかの家の庭ではお父さんと娘さんがバーベキューの真っ最中。お肉を焼きまくっていますが,その煙に誘われ,庭の木のスズメバチの巣からハチが次々飛び出し,お父さんを襲います。そしてハチは焼いているお肉に群がります。あとで「スズメバチは生肉が好き」と説明されるんですが,そのあとのシーンではウェルダンというかほとんど真っ黒焦げの肉に群がっています。どうやらダンダスのスズメバチは焼け焦げたお肉が好きなようです。

 一方,ウォッシュバーン社長はハンバーガー祭でテレビ放映され,株式公開で一儲けをたくらんでいて,ダンダスの町長とつるんでいることがわかります。


 で,ハチ退治の専門業者のQ君と,いかにも頼りなさそうな若い兄ちゃんが登場。先ほどの家から「スズメバチを退治して」と電話が入りますが殺虫剤が品切れなことに気がつきます。それでケントの研究室に行き「殺虫剤,分けてくれよ」といいます。ケントは「手元にある奴ならいいけど,赤い容器に入っている奴はダメだよ。強めなんだけどまだ実験段階なんだ」といいます。するともちろん,Q君はお約束どおり,持って行っちゃダメな「赤い方」を持っていきます。

 そして,学校では昆虫学の教授のメガネっ子先生(だけどあまり美人でない)が登場。ここで生徒たちに「攻撃フェロモン」の説明をします。もちろん,観客に対する教育でございます。次に,検死官が死んでいるところに彼女が呼ばれ,「ハチによるアナフィラキシーショックを起こすのは人口の1%よ。同じ部屋で二人がアナフィラキシーで死ぬ確率はほぼゼロよ」とこれまた親切に講義してくれます。

 一方,ハチ退治のQ君はバーベキュー一家に行き,ハチを退治。ついでに庭の木のスズメバチの巣を発見し,その気に無造作に梯子をかけ,スズメバチに襲われることもなく巣を切り落として袋に入れます。アメリカのスズメバチって大人しいんですね。そして,巣を入れた袋に殺虫剤を噴霧。もちろん,「有効率75%で残りは凶暴・強毒化」しちゃいます。この巣には1000匹の蜂がいた(とQ君は説明)ので250匹が生き残っていて凶暴化したことになります。そしてQ君,自分の作業場に戻り,蜂の巣を圧縮機に入れて押しつぶします。圧縮機の蓋をしっかり閉めて何度もプレスすればいいのに,ズルしちゃうもんだから生き残りのハチが飛び出し,Q君,蜂に襲われます。どうみても数万匹の蜂の大群に見えます。オイオイ,さっきの説明じゃ生き残っているのは250匹じゃないの? ハチに刺されて半死半生のQ君ですが,プロですから救急用の注射器を自分で自分に注射し,命を取りとめます。


 一方,ハンバーガー祭を中継するグルメテレビのレポーターは一軒のお庭に行き,そこで奥様に「旦那様のハンバーグ,お好きですか?」って説明します。奥様,変な顔をします。ベジタリアンだからです。オイオイ,下調べくらいしてからレポートした方がいいですよ。そして独りになった旦那様がハンバーグを焼いていると,焼肉大好きなダンダスのスズメバチ軍団が黒雲のように襲ってきます。もちろん,旦那様は全身を刺されてご昇天。奥様が庭に出てきます。数万匹はいたと思われるスズメバチ軍団,かき消したように一匹もいません。どこに行ったのでしょうか。黒焦げお肉にも群がっていません。「ダンダスのスズメバチは黒焦げお肉が好き」という設定,忘れてしまったようです。その頃,ダンダスの夕暮れの空には,ムクドリの大集団のようにスズメバチ軍団が飛んでいます。「逃げ出した遺伝子変異凶暴スズメバチは250匹」というのはどこに行ったのでしょうか。そして,そこに呼ばれたケント君と昆虫学者,ようやく凶暴スズメバチが1匹でなく大群だということに気がつきます。

 一方,息を吹き返したQ君,ハチごときに舐められてたまるか,と火炎放射器を車に積み込んで出撃。役にたたなそうな助手も同行します。そして,ケント君,Q君が「あの殺虫剤」を使った張本人であることに気がつきます。


 さあ,昆虫パニックといえばフェスティバルがつきものですから,ダンダスでもハンバーガー・フェスティバル開幕。全米,といっている割には参加者が少ないです。町長秘書が町長に「ハチの死亡者が数人出ています」と報告しますが,もちろん町長は無視。そして,部屋に紛れ込んだ一匹のハチに刺されてあえなくご昇天。殺された町長を見た町長秘書の女性,なんてライフルを持ち出して一匹の蜂を殺そうと銃をぶっ放します。さすがアメリカ人,蜂を殺すのにもライフル銃です。部屋を壊しまくって一匹の蜂を殺します。なにやら,イラク戦争とダブって見えますが,気のせいです。

 ケントと昆虫学者,警察官に「危険だから祭は中止したほうがいい」と進言し,警官は署長に進言しますが,もちろん署長は定石どおりに経国を無視。ウォッシュバーン社がこれから売り出す株を事前にもらっているからですね。署長は構わず肉をぱくつきますが,その肉めがけてスズメバチ軍団が襲ってきて,署長もあえなくご昇天。署長を襲ったスズメバチ軍団はQ君が火炎放射器で焼き払います。

 ケント君と昆虫学者,フェスティバル会場に行ってウォッシュバーン社長に「祭りは中止しないと」と言いますが,もちろん社長は相手にしません。そこで街に戻ったケント君たちは一軒のお店に立ち寄り,「昆虫は気門で呼吸しているから,気門を塞げば殺せるはずだ」ということに気がつき,自転車のパンク修理用スプレーで気門を防ぐことを思いつき購入します。ここらにくると,思いつきもいい加減にしろ,といいたくなってきます。一方,空をあてどなく飛ぶスズメバチ軍団に,他の巣からもスズメバチが加わり,いよいよ大集団となります。フェロモンが呼んでいるらしいです。


 そして,フェスティバル会場をスズメバチの大群が襲います。もちろん,ハンバーガーの煙に誘われたものと思われます。しかし,ハチに襲われて刺されて死ぬ人はほとんどいません。死ぬのは特定の個人で,水槽に逃げ込んだウォッシュバーン社長と車に逃げ込んだグルメテレビの女性レポーターの二人だけ。逃げ場のない人に犠牲者はいません。あれだけの大群で多人数が襲われているのですから,実は毒性の弱いスズメバチだったか,あるいは隠れている人だけ狙う性質を持っているハチとしか思えません。ちなみに水槽の中の社長は細いホースを口に加えて息をしますが,これは物理的に無理なんで,すぐに窒息しちゃいますが,気がつかないフリをしてあげましょう。

 会場に駆けつけたQ君,火炎放射器で焼きまくりますが,もちろんすぐに燃料切れ(そんなの,早く気がつけよ)。そこで彼は,車の二台にまだ焼いていないお肉を並べてハチをおびき出し,そのままガレージ(?)に誘導するという作戦を立てて,あの役に立ちそうにない助手に伝え,助手はケント君たちに作戦を伝えます。そして,ガソリンをガレージの中に振りまき,そこにQ君はハチ満載の車を乗り入れ,あわやというところでガレージのシャッターを閉めて火を放ち,ハチを焼き殺します。ちなみに,字幕では「石油をまいた」となっていますが,石油はあんなに燃えませんので,ガソリンの間違いでしょうね。最後に一匹だけ生き残った蜂が飛び出し,それを見た昆虫学者は「女王蜂よ。それを逃がしちゃダメ」と叫び,役に立ちそうになかった助手君が掃除機で吸って一件落着。

 最後は,すっかりラブラブになったケント君とメガネっ娘昆虫学者がレストランに行くんだけど,その店の裏では生き残った女王蜂が・・・というところでおしまいでした。

(2009/09/01)

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