新しい創傷治療:ゾンビ・ストリッパーズ

《ゾンビ・ストリッパーズ》 (2008年,アメリカ)★★★


 タイトルを見ただけで「アホ・ゾンビ映画」とわかる低予算の作品です。「オッパイとゾンビを合体させたら受けるに決まってるぜ」という志の低さはビンビン伝わってきますが,アホさを凌駕するパワフルさがあり,馬鹿に徹した面白さ一杯なんで最後まで飽きないで見ていました。もちろん,裸の巨乳お姉さんたちばかり登場するし,スプラッターシーンも力を入れて作っていますので,R-18指定とお子様向けではありませんが,エロ・グロ・ナンセンスを笑って見ていられる大人の方にだけお勧めします。


 舞台は近未来のアメリカ。なんとそこでは,カリフォルニア州ではまたもや選挙投票マシンが故障したために4期目のジョージ・ブッシュ政権が成立。裸を嫌うブッシュは人前でヌードになることを禁止し,おまけにパキスタン,レバノン,イラン,エジプト,アフガニスタンはおろか,フランスやカナダまで戦線を拡大しています。長期化し大規模化する戦争のため,アメリカでは慢性的な兵士不足に悩まされていたのです。

 それを解決するために政府はある研究施設に「死んだ細胞を動かす伝染性ウイルス」の開発を依頼。死んだ兵士をまた兵士として利用しようという計画です。しかし,研究所でウイルスが漏れ出し,所員がゾンビと化します。そのゾンビを退治しようと軍の特殊部隊(といっても6人くらいだけど)が投入され,研究所内のゾンビを駆除していきますが,一人のヘタレ隊員がゾンビに噛まれ,ウイルスに感染します。

 そのままでは仲間に処分されてしまう,ってんでそのヘタレ君は研究所から脱走し,ある建物に侵入。そこはブッシュ政権が禁じた違法地下ストリップクラブだったのです。そして彼は舞台で踊っている一人のストリッパーに噛みつき,彼女は死んでしまいます。

 クラブのオーナーたちが,「おい,どうするんだよ。警察なんて呼べねえよ」なんて話しているうちに彼女は生き返り,部隊に戻って踊り始めます。すると,ゾンビになる前より過激でキレのある踊りになっちゃって客から大受け! でも,さすがはゾンビなんで,「楽しみましょう」とか言って客の一人を舞台裏に引き込んで食べちゃいますが,オーナーとしては過激パフォーマンスが受けてるからいいじゃないの,なんてスタンスで見ています。そして他のストリッパーたちや客たちもゾンビになったところで特殊部隊がストリップクラブに到着し,ゾンビどもを殲滅しようとするが・・・という映画でございます。


 冒頭の「4期目に突入したブッシュ政権が世界に戦争を拡大」というあたりから大笑いですね。そりゃあ,ブッシュが16年も政権を執っていたら,世界の迷惑だろうな。ゾンビのストリッパーさんより迷惑ですよ。そしてフランスやカナダも戦場になった,なんてのはブラックでいいぞ。

 それより何より,ストリッパーのお姉さんたちや特殊部隊のキャラが一人一人たっているのがいいです。特に,非合法ストリップクラブという狭い世界で必死に生きようとするストリッパーのお姉さんたちの性格付けがうまいですね。一番最初にゾンビになったトップダンサーに嫉妬して,自分もゾンビになって客をひきつけようとするナンバー・ツーのダンサーがいて,後半の見せ場とも言うべきポールダンス対決を見せるし,おばあちゃんの治療費を稼ぐために男性経験もないままにストリッパーになろうとする純朴・敬虔な田舎姉ちゃんもいいし,彼女の幼馴染の男の子のセコさもいいです。

 ストリッパーの一人として踊るのはアメリカの有名ポルノ女優のジェナ・ジェイムソンという人らしく,見事なプロポーションと迫力あるダンスで楽しませてくれます。彼女以外のストリッパーの皆さんも,基本的には可愛くてきれいでスタイル抜群で,踊りもうまいです。このくらいになると,オッパイ丸出しなのに,エロティックというよりスポーティーな感じになるんですね。


 ゾンビ化したナンバーワンとナンバーツーの戦いの後半,なんと○○からビリヤードの玉を連射するのです。馬鹿ですねぇ,このシーン。○○使うよりより手で投げろよ,というツッコミはここではなしです。ここまで馬鹿に徹して見ている方を楽しませてくれているんですから暖かい眼で見てあげましょう。
 ちなみに,このシーンでもわかるように,「しょうもない部分,どーでもいい部分にやけに力を入れる」というこの映画のコンセプトです。こういうスタンス,私は大好きです。ちなみに,ゾンビ化したストリッパーさんたちは,いかにもゾンビという気合の入ったメイクで戦います。

 違法ストリップクラブを経営するオーナー役はロバート・イングランド。「とりあえず客はゾンビに食われているけど,金儲けになっているからいいか」と考えてしまうしょうもない小悪党の雰囲気がプンプン漂わせていて,ハマリ役といえます。
 後半,支配人質に追い詰められて,ストリッパーたち(まだゾンビになっていない)が「何か武器はないの?」というシーンで,ニヤリとして「アメリカライフル協会会員」の会員章を出すところなんて最高に格好いいシーンになるはずなんだけど,実はこのオッサン,ライフルや銃は沢山持っているのにどうやって撃つのか全然知らないの。銃ばかり持っているアメリカ人も馬鹿だけど,これも馬鹿ですねぇ。

 そういえば,ゾンビに噛まれてウイルス感染しちゃって逃げ出すヘタレ隊員もリアルでいいなぁ。最後まで特殊部隊に号令を出し続ける女性兵士と大違いだよ。


 というわけで,下品でお馬鹿でオッパイ丸出しシーンと脳味噌吹き飛ばしシーンしかない映画ですが,低予算でもパワフルな映画っていいよね,という心の広い人,あるいはゾンビと名前がついたらどんな映画でも見るのを義務にしている人だけご覧ください。そういう人なら十分に楽しめるはずです。

(2009/09/04)

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