《パリ・ディストラクション》 (2006年,フランス)★★


 ネズミを主役(?)とした絵に描いたような動物パニック映画。おフランス製のテレビ映画です。えーと,見所は主役の女医さんが顔立ちが美しくて魅了的なこと,ネズミ君たちの演技がキュートなことくらいで,あとは見るべきものはありません。おまけに,展開はベタというか,完全に先が読めます。あーあ,次のシーンでこいつはこう行動するんだろうな,と思っているとまさにその通りに行動します。初めてみる映画なのにデジャブに襲われます。逆に言えば,安心して見られるって事ですね・・・パニック映画で「安心」というのもなんですが・・・。


 舞台はパリ。1週間前から清掃業者が待遇改善を要求してストライキ中のため,パリの街はゴミで溢れかえっていて,下水道には大量のネズミが増えていた。

 そんなパリで暮らす女性医師のローレンス。一人娘のローラを育てながら働くシングルマザーで,つい最近,付き合っていた男ジャック(同じ病院で働く同僚医師)と別れたばかりらしい。その病院には数日前,髄膜炎のような症状を起こす正体不明の病気の患者が運び込まれたが,治療は効かず死亡していた。

 そんなところに,運搬船の船長をしているアレックスが久しぶりに父親の住むパリに戻ってくるが,ネズミ駆除業をしている父親から手伝ってほしいと乞われ,ネズミ駆除依頼のあったプールに父親と一緒に向かう。しかし,罠を仕掛けている最中に父親は気分不快を訴えて倒れ,ローレンスの病院に運ばれ,彼女が担当医になるが,彼女はすぐにあの正体不明の髄膜炎様患者と同じであることに気がつく。

 一方,清掃業者との交渉が膠着状態になったパリ市衛生安全委員は軍を出動させてゴミ回収に着手。しかし,増えに増えていたネズミたちは食料を失い,次第に人間が襲われる事故が増えてきた。ネズミに噛まれた患者が増え,それがあの謎の症状を呈していることからローレンスはネズミが媒介するウイルス性伝染病ではないかと疑うが,ジャックはネズミが原因だという可能性を否定する。

 しかしローレンスは病院の同僚からジャックがネズミの遺伝子操作の実験を行っていたことを知り,ジャックの実験室に向かうが,そこでジャックは大量のネズミに襲われ重傷を負っていた。そして彼の口から,1年前,遺伝子操作で免疫力が高まったことを証明するために髄膜炎ウイルスを感染させ、そのネズミが逃げ出したことが知らされる。実はそのネズミはウイルスを体内に持ち,おまけに凶暴化していたままネズミ算式に地下道で増えていたのだ。

 その頃,ローレンスとアレックスは次第に親しくなっていくが,ローラがネズミに噛まれ,高熱を出してローレンスの病院に運び込まれる。ローレンスは必死に治療する。ウイルス疾患だから抗体さえ見つかれば治療できるが,その抗体がない。絶望に苛まれるローレンスだが,ローラのひょんな一言から抗体を持つネズミを見つけ,一方アレックスはネズミたちを一網打尽にする方法を考案する。それはフェロモンでネズミを一箇所に集め,そこを爆破するという方法だった。

 それしか解決方法がないことを知った衛生安全委員はあのプールのある体育館にフェロモンを噴霧し,それに惹かれてネズミの大群が集まってくる。しかしその時,ローラが・・・,という映画だ。


 という具合にストーリーをまとめてみて,改めてとりえのない映画だったなぁという気がします。アレックスがペットで飼っていた白ネズミをローラが気に入り,その白ネズミとローラが凶暴ネズミに噛まれ・・・というエピソードがあるんですが,このシーンを見ただけで,「多分ローラか,白ネズミのどちらかが元気になり,抗体を・・・」という展開が予想されるわけです。ミエミエってやつですが,まさにその通りに展開します。オイオイ、ちょっとは予想を裏切れよ。

 同様に,フェロモン作戦が始まるわけですが,多分,この白ネズミも引っかかっちゃうんだろうな,そしてそれを追ってローラも病院を抜け出すんだろうな,そして爆破現場に入り込んじゃうんだろうな,とこれも展開が読めるんですが,まさにその通りに展開します。そしてローラはプールに集まった大群のネズミ軍団の中で白ネズミを見つけるんですよ。確かに他のネズミはドブネズミ色でこいつだけ白いので見つけられたといえばそれまでなんだけど,ここはさすがに失笑もの。

 となると,爆破寸前にその白ネズミをアレックス君が助けるんだろうな,そして爆破で崩れる建物の爆煙を背景に白ネズミを手にしたアレックス君が現われるんだろうな,というのも予想されますが,まさにその通りに展開します。これまで映画で何度同じようなシーンを見てきたことでしょうか。

 それにしても,あの場所で爆破に巻き込まれるのですから,常識的に考えれば絶対に助からないタイミングです。「2分後に爆破」でなく「3分後に爆破」という設定にすべきでしたね。

 それにしても,ローラちゃんのわがままぶりには辟易します。自分の子供なら完全に頭をド突いていますね。「ねぇ,ママ,いいでしょう? これっきりだから」って,お前何度繰り返すんだよ。どんなわがまま言ってもママは言うことを聞いてくれるんだもんね・・・なんて子供は将来碌なもんにならんぞ。ローレンス,もっとしっかり叱りとばせ!


 隠れた主人公とも言うべきネズミ君たちですが,一匹一匹がでかいです。それがウジャウジャいるシーンは,ネズミに弱い人には鳥肌ものでしょうが,アップで映るネズミ君たちの表情は可愛いんですね。設定では「すごく凶暴」のはずなんですが,なぜかキュートです。ネズミの巣を探りにアレックスとローレンスが地下道を行くシーンがあるのですが,なぜか大人しくて礼儀正しくて,襲ってきません。どうも,襲う人間と襲わない人間を区別しているようです。そして、人間に噛みつくシーンもリアルには描かないため,気色悪くても怖くありません。このあたり,テレビ映画ということで自粛したんでしょう。

 だから,ウジャウジャ集まっているところは気色悪いのですが,恐ろしさは全く感じません。特に,プールに大量発生するネズミ君たちの必死に泳ぐ姿は,なんだか愛おしささえ感じさせます。このあたり,「ネズミの愛くるしさを描こうとする映画だったのかな?」と思ってしまうくらいです。このあたりも計算違いでしょうね。

 それにしても,ネズミをフェロモンで集めて爆破,というのは映像的にはおいしいのですが,確かさという点ではどうでしょうか。集めて青酸ガスでも流せばもっと確実に殺せたんじゃないでしょうか・・・どうせ,建物を密封閉鎖するわけだし・・・。


 ちょっと真面目な考察を加えると,「ネズミが媒介する新種のウイルス疾患だから市民に公表すべきだ」とするローレンスと,「発表したところで治療法がないのだからパニックを起こすだけだ。このウイルスと関係のない患者まで病院に押しかけてしまう」と反対する衛生安全委員の対立は難しい問題を提示しています。もちろん,「ネズミに噛まれて発病する病気が広がっていて,治療法は現在ありません。だからネズミに噛まれないよう注意してください。ネズミを見たら手を出さないで下さい」と公表するのが正解なのでしょうが,このネズミは寝ている人にも襲い掛かってくる凶暴ネズミですから,「注意して噛まれないようにすれば大丈夫」とはなりません。自分ならどっちに立場に立つんだろうかと,この場面だけは考え込んでしまいました。

(2009/09/21)

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