以前,《チアリーダー忍者》というクズ映画を見たことがあります。よほどのクズ映画ファンでなければ絶対みないだろうと言うくらいショーモナイ映画でございました。で,今度の映画は《ニンジャ★チアリーダー》でございます。アメリカ人,どんだけチアリーダーと忍者が好きなんだ,って思いますよね。チアリーダーってアメリカ人にとって「萌え」の対象なんでしょう(・・・たぶん)。
でも,こっちの《ニンジャ★チアリーダー》はもちろん絵に描いたような低予算映画なんですが,《チアリーダー忍者》とは比べものにならないくらい「まとも」な作品になっています。ストーリーの起承転結は一応しっかりしているし,3人の女の子たちも単なるおバカではなく,4年生大学に編入するために必死で勉強して,ストリップバーで踊りながら学費をためているんですよ。しかも一人の父親は義理の父親で酒浸りで「進学なんかさせるもんか!」って娘を脅すクズ野郎。そういうわけで,なんだか健気な3人組なんですよ。
もちろん,普通の映画のレベルを期待して見ちゃダメだけど,「クズ映画の掃き溜めに鶴・・・はいなくても,鶴の羽1枚」でも見つけられば嬉しくなっちゃうんだな,という心の広い人なら絶対に楽しめる作品に仕上がっていると思います。見る人を選ぶ映画なんで,そこんとこは一つ,夜・露・死・苦!
深夜の軍の基地に忍び込む黒装束の女性3人組。彼女たちはなぜか日本刀なんかを保管している部屋に忍び込み,1本の刀を盗み出し,警備している兵士たちを次々倒していきます。彼女たちは「ヒロシ道場」で忍者の末裔ヒロシから厳しい訓練を受けているニンジャであり,その刀を盗み出すのが最終試験だったのでした。
しかし,彼女たちは別の「昼の顔」を持っています。3人(エイプリル,モニカ,コートニー)は幼なじみで同じ短大に通う女子大生で,チアリーダー部に所属していたのです。そして,師匠のヒロシが経営する夜のクラブでポールダンスを踊りながら学資を稼ぎ,3人そろって4年生大学に編入することを夢見て勉強に励んでいるのでした。そして,ポールダンス大会があり,そこで優勝すると夢の目標額に到達するのです。
しかし,試験の合間を縫って「ヒロシ道場」に行った3人は中が荒らされて金庫(3人が貯めた学資もここに入っていた)が盗まれ,ボディーガードが銃で撃たれて倒れている姿を発見し,彼からヒロシが拉致されたことを聞かされます。どうやら,その店の権利を巡って街のマフィアとトラブルがあったらしい。3人は,その前の夜に店にやってきたチンピラを探し出して痛めつけ,その夜8時にマフィアたちが集まることを聞き出します。
そして8時になり,マフィア・ボスたちが集まっているところを3人で襲いますが,人質に取られているヒロシを連れ戻すことはできず,一旦その場から退散。3人の強さを知ったボスは,「祖国を追われた闇の女ニンジャ」のキンジ(金治? 欽二? 近似?)を雇い,3人と殺せと命じます。
3人は師匠ヒロシが監禁されている場所を知らないし,一応現役女子大生なんで,バスケットボールの試合でチアリーディングし,控え室に戻ったところでマフィアの手下どもが襲ってきますが,こいつらを簡単に倒して師匠の居場所を聞き出すことに成功。さぁ,いよいよ師匠を助けるかと思ったら,ポールダンス大会で優勝しないと学資に達しないわ,というわけでポールダンス・コンテストの会場へ。
そしていよいよ,師匠が監禁されている倉庫を急襲し,見張りの男どもを次々に倒していきます。手下からの連絡が途絶え,焦るボス。すると,さっきまで両手両足を縛られていたヒロシは,あっという間に「ニンジャの縄抜け」をしてボスの前に立ちはだかります。ボスは銃口を向けますが,ヒロシはボスの手をひねり,自分自身を撃たせます。
そこに3人組が登場。めでたし,めでたしと思っていたら,「闇の女ニンジャ」キンジ登場! 強いとは言っても所詮は免許皆伝をもらったばかりの3人はキンジにはかないません。絶体絶命のそのとき,ついにヒロシが・・・ってな映画でございます。
とまぁ,ストーリーをなぞっていくとチープさがよくわかりますが,見ている分にはあまり気になりません。ストーリー展開のテンポがいいからです。早く師匠を助けにいけよ,なんて思ったりしますが,何しろ4年生大学に編入するという大目的がありますから,ポールダンス大会にもでないといけないんですよ。そういう無理矢理なところが結構いい味だしています。
それと,3人組が水兵さんやらチンピラさんやらマフィアの手下さんたちをバッタバッタとなぎ倒していくシーンは結構マジに作っていて,気持ちいいです。これでキンジとの剣劇シーンをもうちょっと高いレベルで作ってくれたら,格闘シーンに関しては合格点でしょう(ちなみに,何しろ低予算ですからCGもワイヤーアクションも使っていません)。
ヒロシに倒されるボスが「忍者が銃を使うなんて聞いてねえよ」と言うのに対し,ヒロシが「歳をとっちまってニンジャの掟を忘れたんだ」って答えるシーンとか,キンジに倒されそうになったモニカちゃんの携帯電話が鳴って「ポールダンス大会で優勝しちゃったぞ。あとで賞金,取りに来いよ」と連絡が入るシーンとか,おとぼけシーンもそれなりにいい味を出しています。
それにしても,師匠ヒロシ,強すぎです。というか,これほど強かったらなぜ拉致されたんだ,捕まったとしても「縄抜け」でさっさと逃げ出しちゃえよ,とか,いろいろツッコミを入れたくなりますが,もしかしたら弟子たちに「お前たちはまだまだ弱いのじゃ。もっと修行せねばならぬぞ」ってあとでお説教するために,わざと捕まったフリをしていたのかもしれません。いわゆる一つの「師弟愛」ってやつでしょう。もちろん,師匠が捕まらなかったら映画にならない,という「大人の事情」もあるけどね。
強いと言えば,「闇のニンジャ」キンジさんも強いです。東洋系の美人さんで,薄目で見ると日本人みたいに見えますが,日本語はド下手なカタコト日本語(例:「キンジ,敵,倒す」とか「キンジ,命令守る」とか)です。恐らく「祖国を追われて」から時間が経ち過ぎたんで,日本語忘れちゃったんでしょうね。
3人の女子大生ニンジャではコートニーちゃんが超セクシーで可愛いくてキュートです。モニカちゃんは馬鹿っぽいけど可愛いから許します。でも,3人組のリーダー,エイプリルちゃんがちょっと「可愛さ度数」が他の2人より当社比30%減なんで,このような「チアリーダーもの」ではちょっぴりミスキャストっぽいです。映画の最後は続編を予告するかのようなシーンで終わりますから,もしも続編を作るなら,エイプリルちゃんだけ取り替えてほしいなぁ,ととりあえず希望を出しておきます。
そうそう,映画の中では3人組は「胸の谷間」をチラ見せする程度の「健全お色気路線」なんですが,それを補うかのように,各シーンの繋ぎでは別の女優さんたちによる「オッパイ・ポールダンス」シーンが何度も挿入されます。「ゴメンゴメン,主役3人がどうしてもオッパイは嫌,ってゴネるもんだから,こっちのオッパイで許してね」という監督の言い訳が聞こえてきそうなカットインです。
それにしても,アメリカ人って本当に「チアリーダーとポールダンスと忍者」が心底好きなんでしょうね。ポールダンスってやつはアメリカ映画のチョイいかがわしい酒場のシーンには必ず登場しますが,これのどこが面白いのか,なんでこんなのに見せの客が熱狂するのか,私には全然わかりません。「アメリカ市民権を取るためには,チアリーダーとポールダンスが好きでなければいけない」という条項が追加されたら,私は絶対にアメリカ市民権を取得できません。私がアメリカ市民権を取るまで,そういう条項は入れないで欲しいなぁ,と心底思っています。
こういう映画を見ていると,アメリカ人男性にとってのセクシーさとは《チャーリーズ・エンジェル》とかブリトニー・スピアーズみたいな健康的お色気だということがよくわかりますね。だから,《チャーリーズ・エンジェル》のパチもん映画が量産されるんでしょうね・・・この映画みたいに。
(2009/09/)