《ボルケーノ in N.Y.》 (2006年,アメリカ)


 テレビ映画でして,見所は一つもありません。タイトルを見て判るとおり,《ボルケーノ》の2番煎じ,3番煎じで,《ボルケーノ》と間違えてDVDを買ってくれたらいいな,という程度の小判鮫映画でございます。こういう小判鮫映画の常としてDVDジャケットのようなシーンは全くありません。低予算手抜き映画だからです。

 それから,カメラワークがやたらと素人っぽくてひどいです。誰かが喋るとそいつをすぐにクローズアップするんだけど,なかなかピントが合いません。車酔い,船酔いをする人はこの映画を見ないほうがいいです。

 誰だ,こんなチープな映画を作った奴は,と思ってよく見たら,「サイレント・ワールド セカンド・アイスエイジ」のロバート・リー監督でございました。なんだ,こいつか。じゃぁ,しょうがないな。


 舞台はもちろんニューヨークで,地下送水トンネルの工事現場で働く現場主任のマットが主人公ですが,工事現場で事故が起き3人が死んでしまいます。冷却水チューブから強酸性の熱水が噴出したためです。そしてマットは脱出する寸前,トンネルの壁からマグマが流れ出しているところを目撃します。
 事故の責任を取らされてマットはクビになってしまいますが,「マグマが出ているところを見た」といくら言っても,当然のことながら「寝言は寝てから言え」と相手にされません。

 そして事故の原因究明のために派遣されたのが女性地質学者のスーザン。なんと,マットの元奥様で3年前に離婚したばかり。そしてマットの説明から,この事故が普通の事故でないことを確信します。
 そしてその頃,セントラル・パークで寝ていたホームレスたち100人が死ぬと言う事件が起きます。実はその前夜,彼らは「なんか卵の腐ったような臭いがするけど,暖かくていいね」と集まってきて,マグマの硫化水素にやられちゃったみたいです。そしてハドソン川で漁をしていた小船も,釣り上げた魚が焼き魚になっていて「こりゃなんだ」と驚いていたら船は爆発炎上! マグマの直撃でございます。
 スーザンはニューヨーク市長に火山活動の危機が迫っていると警告しますが,もちろん相手にされません。FBIは最初から「これはテロに決まっている」の一点張りで聞く耳持たず。

 実は,地熱エネルギーで人類のエネルギー危機を救おうと考えているマッドサイエンティストがいて,それで一儲けをたくらむニューヨーク副市長と一緒に地下2,600メートルの穴を掘って莫大なエネルギーを得ようとしていたのです。しかし彼らの掘った穴が地球のコアにまで達したためにマグマが噴出してきたのです。

 そしてついに,ニューヨークのあちこちでマグマが噴出し,街は壊滅の危機に瀕します。と,その時,スーザンとマット(もちろん,二人がよりを戻すのはお約束),そしてマットと穴掘り仲間たちが立ち上がり,自分たちが掘っている送水トンネルを爆破してマグマを海に誘導すると言う計画を立て,彼らは勇敢にも地下にもぐり,爆破計画を実行しようとしますが・・・という,ムチャクチャ映画です。ちなみに配給は我らがアルバトロスであります。


 この程度の映画に科学的な部分の不備を衝くのは大人げありませんが,それでも一言,二言は言いたくなります。

 まず,マッドサイエンティストの先生はトンネルが2,600メートルに達したと最初言っていたのに,その数シーンあとでは12,000メートルの深さに達した,と喜んでいます。2,600メートルでも12,000メートルでもどっちでもいいですが,それで「地球のコア」に達するわけありません。どうやらマグマと地球の核(固体鉄の内核と液体鉄の外核から成る地球の中心部)の区別がついていないようです。

 地熱エネルギーのためにマグマを掘り当てようとしたと言う説明なんですが,それだったら何も穴を掘らずに,ハワイのキラウエア火山のマグマからエネルギーを得る実験をした方がいいんじゃないでしょうか。年がら年中,マグマが出ているんですから。

 マットにしてもスーザンにしても,マグマが出ている穴に入ろうとしているのに,近所のスーパーに行くような軽装です。専門家なら,硫化水素のような有毒ガスが出ている危険性を最初に考えるはずなのに,二人とも防毒マスクを用意するでもなく,普段着のまま地下坑道に入っていきます。これぞ「似たもの夫婦」の鑑です。


 低予算映画なんでいたるところがチープで貧乏臭いです。地震のシーンにしても,登場人物たちは「おおっ,すごい地震だ!」と大騒ぎしますが,カメラをグラグラさせているだけなのが素人目にも明らかです。マンホールからマグマが噴出すという見せ場にしても,もうちょっとましなCGを作れなかったんでしょうか。見ていて気の毒になってきます。流れ出すマグマのシーンも同じ映像を何度も使いまわしていたような気がします。

 ムチャクチャと言えば,あの「水撒きじいちゃん」。「アヒルちゃんが!」って,そういう問題じゃないだろ。しかも,家の中はマグマ満杯状態なのに,家のドアに触って「あちっ!」っていうまで気がつかないのですよ。というか,その前に家が燃えてるだろ! ハドソン川で釣れた魚が焼き魚,というのもすごいけど,なぜあの船だけピンポイントで燃え上がる?

 FBIも何で登場したんでしょうか。自然災害だろうがなんだろうが,テロと結びつけるのがFBIさ,とおちょくっているのかもしれないけど,テロだ,テロに決まっている,という台詞しか喋っていなかったような気がします。もしかしたら,これまでアメリカ映画に登場したFBIでもっとも頭が悪いFBI職員かもしれません。


 こうなると普通なら,アメリカ軍や州兵が登場して大惨事回避に活躍するはずなんですが,何しろ予算不足ですからこれ以上人件費に回す金がなく,それでマットの穴掘り仲間6人が立ち上がるわけですね。ま,FBIがあれほど使えないんじゃ,民間人が頑張るしかないよな。

 と,普通なら,この「マットと仲間たち」は特殊技能を持ったプロ集団で・・・というのが定石なんですが,映画冒頭に登場する彼らがどうにも頼りなくて困ります。新入り兄ちゃんなんて,時給がいいからやってきました,って言ってるし・・・。で,新入りお姉ちゃんはどうやら,伝説の穴掘り職人の娘と言う設定で,やる気と勇気だけはあるんだけど,肝心の行動が素人そのままなんで危なっかしいです。この姉ちゃん,最初から出しゃばり過ぎていて,どうでもいいところで怪我しちゃうし,何のために登場したんでしょうか。

 ろくに考えもしないで行動すると言ったら,マット君もすごいです。秘密工場を見つけたのはいいけど,何でそこでノコノコ歩いて姿を現しちゃうかなぁ。「志村,うしろ,うしろ」というシーンですが,やはり見つかっちゃいます。マット君,頭悪すぎ!

 マッド・サイエンティスト君も,吹き上がったマグマの炎で顔面が焼け爛れていると言うのに,「もう一歩で実験がうまく行って,人類は救われたのに! すべてお前たちのせいだ!」ってあの地下坑道でマットとスーザンを襲ってくるのもすごい執念です。というか,どうやってマットとスーザンがもぐった坑道を発見したんでしょうか。この映画,最大の謎です。


 と言うわけで,映画製作者の志も低ければ登場人物にも魅力がなく,素人同然のカメラワークと素人同然のCGと素人より下手なストーリー展開が楽しめるナイスな作品です。誰か,見る勇気がある?

(2009/09/30)

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