《デイ・オブ・ザ・デッド》★★ (2008年,アメリカ)


 "Day of the DEAD" というタイトルを見てわかる人はわかると思うが,ゾンビ映画というジャンルを作り上げたジョージ・ロメロのゾンビ三部作《死霊のえじき》(1985年)と同じタイトルだったと思う。つまりリメイクということになるが,同じなのはタイトルだけで,ストーリーも設定もロメロの原作とは全く無関係といっていいと思う。というか,ロメロの原作を全く思い浮かべずに別物のゾンビ映画として見た方がいいだろう。


 ストーリーは単純明快。アメリカのどっかの町が突然,何の説明もないまま突然封鎖される。軍の秘密研究で生み出された恐るべき細菌が外に漏れだしてしまったらしい。その細菌は恐るべきスピードで空気感染し,感染者はあっと言う間にゾンビに変身して凶暴化し,次々と人を襲い始めたのだ。そして町全体がゾンビで埋め尽くされてしまう。その町で生まれ育った女性兵士のサラと彼女の弟たちは,果たしてその死の町から生還できるのだろうか・・・という内容だ。


 純粋なゾンビ映画から言えば,果たして今回のはゾンビと言えるのだろうか,という基本的な部分でツッコミが入ると思う。ゾンビというのは一応,「蘇った死者で凶暴性を持ち,生きた人間の肉を食う」という定義になると思おうが,今回のゾンビはきちんと死んだかどうかは定かではなく,ちょっとの間,動かなくなってはすぐに変身するため,これは単なる感染症ではないか,《バイオハザード》の分類に入れるべきではないか,という気がする。

 今回のゾンビは進化型というか,21世紀のゾンビ映画で流行の「俊敏活動型・高身体能力型ゾンビ」である。しかも, "Down of the DEAD" のゾンビよりさらに進化していて,素早く走るだけでなく,壁を上ったり天井を這い回ったりできるし,3階の窓を破って飛び降りて襲ってくきたするのだ。おまけに,ゾンビに変身する前の記憶を保持しているため,武器が使えたり(幸い,銃は撃ってくるが命中率がすごく低いのが救いだが・・・),頭の良いゾンビは人間を罠にかけようとする始末だ。さすがにここまでくると,ロメロ=ゾンビと同じゾンビとしていいのか疑問を感じてしまうが,まぁ,メイクがゾンビだから気にしないことにしよう。


 ヒロインのサラを演じるのはミーナ・スヴァーリ(《アメリカン・ビューティー》にも登場),彼女を助ける黒人兵はニック・キャノンで,確かマライア・キャリーの旦那様である(まだ離婚してなければ)。ミーナちゃんはとても可愛い美人さんで,かなり頑張ってアクションをこなしているが,何しろ小柄で細身で華奢なため,彼女より頭二つくらいでかい部下たちに命令している様子はかなり違和感を感じるし,銃を撃っているシーンでも「この子,こんな大きな銃を撃って銃に振り回されないかなぁ」と逆に心配になってしまったりするので,もうちょっとマッチョタイプの女優さんの方がよかったような気がする。

 このミーナちゃん,「銃は持っているけど弾は込めていないの。理由? 長い話になるわ」という,オイオイ,それじゃ兵士失格だろう,というような設定だ(ちなみに,その「長い話」は最後まで明かされません)。おまけに,ゾンビがウジャウジャ走り回っている道路を運転していても,ゾンビにぶつからないように注意して走るのだ。「ついさっきまで人間だったのよ」というのが理由なんだが,ますます,「それじゃ兵士失格だろう」感が一杯だ。ところがミーナちゃん,なぜか途中から人格が変わっちゃって,ゾンビは構わずひき殺すばかりか,ゾンビに変化した自分の母親まで無造作にひき殺しちゃうのだ。驚く弟に「だって,もう死んでいてゾンビになっているのよ」と言い放つのだが,さっきと言ってる内容が真逆というか,なぜ君は性格が変わっちゃったのと,見ている方はオイオイ,という感じである。


 あと,ゾンビ映画の常として,スプラッター度はそれなりに高めといえる(ゾンビ映画としては普通だけど)。脳味噌はバンバン粉々になるし,首はバシバシ切り落とされるし,顔の半分で切断,なんてシーンも多いので,このあたりが弱い人は見ない方がいいと思う(ま,スプラッター嫌いはゾンビ映画は見ないと思うけどさ)

 それと,こういうB級ホラーではエロシーンは必須(?)アイテムであり,この映画もご多分に洩れず「いちゃつく2組の馬鹿ップル」のシーンで始まるが,それ上は発展せず,ブラシーンはあるがオッパイシーンは全くない。というわけで,そっちの方面は期待しないように。


 それにしても,この感染症は空気感染し,ゾンビに噛まれたら100%の確率で感染するという初期設定の映画である。おまけに戦闘シーンではゾンビとの接近戦も多いし,近くで頭を吹っ飛ばすシーンも多いためゾンビの血液を浴びまくりではないかと思わる。この状況下で,サラ,黒人兵,サラの弟とその恋人が全く感染しないと言うのはさすがに無理ありすぎという気がしないでもない・・・。まぁ,目くじらをたてるほどのものではないだろうが・・・。

 というわけで,ゾンビ映画大好き人間,ゾンビ映画なら何でも見たい人,ゾンビの進化の歴史について研究している人なら絶対に見るべきだが,それ以外の普通の映画ファンにとっては時間の無駄なので見ない方がいいと思う。

(2009/10/27)

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