『13日の金曜日』とか『フレディvsジェイソン』などで知られるショーン・S.カニンガム監督 が,アメリカのSF専門ケーブルテレビように作ったシリーズ映画が《クリープゾーン》で,どうやらこれはその第1作目だったか第3作目らしいです(資料が少なくてごめん)。分類としてはSFホラーに入るんだろうけど,かろうじて時間つぶしになるくらいの低レベルな作品です。余程の暇人,余程のもの好きという方以外はお勧めしません。
アメリカ北部の田舎にある空港が舞台です。その近くを走る道路では殺人犯(ブルース・キャンベル)を護送中の車が走っていてスリップ事故を起こし立ち往生。しょうがないので空港に向かいます。しかし,大雪のために空港は閉鎖され,数人の客が足止めを食っています。おまけに通常の電話も無線も携帯電話も使えません。
完全に密室になった空港の中にいたのは人間だけでなく,実はその中の何人かは人間に姿を変えたエイリアンでして,一人また一人と正体を現しては次々と犠牲者が増えていきます。さあ,人間に未来はあるのか・・・ってなお話でございます。
まず,舞台になっている空港がすごく小さいです。日本の離島の空港より小さいです。登場人物は10人ちょっとしかいないのですが,10人いたら座るところが足りないというくらいカウンタロビーが狭いです。そういうミニ空港になぜエイリアン様ご一行がやってきたのか,なぜそこをターゲットにしたのか,これがこの映画最大の謎です。なんでも「地球を征服して地球人を奴隷にするため」にわざわざ遠路はるばるおいでいただいたらしいのですが,それならこんなど田舎空港でなく,もっと人のいる空港を狙えばいいのにね。それとも,雪に弱い宇宙船だったのでここに不時着しちゃったとか?
しかも,地球征服をたくらんでいるにしては,エイリアン君たちの人数,少な過ぎます。4人だったか5人ほどしかいません(・・・エイリアンの数え方は○人でいいんだっけ?)。登場人物は確か13人で,そのうちの5人くらいがエイリアンだったと記憶していますので,[人間:エイリアン=8:5]というこの手の映画としては異様にエイリアンの比率が高いのですが,それなのにエイリアン,最後には全滅しちゃいます。もしかしたらこのエイリアン軍団,グリーンベレーとかズペナッツとかブルース・リーが2人くらいいたら全滅できたんじゃないかと思います。それほど強くありません。これじゃ,余程の大部隊で地球に攻めてこないと地球占領は難しいと思うよ。しかもこのエイリアン,頭を打たれると一発で死んで溶けちゃうしなぁ。
登場する人間はどいつもこいつもうるさいです。悪天候で飛行機が飛べないと言っているのに,明日会社に出勤しなければいけないとか,早く南の島に行きたいとか,自分勝手な主張ばかり並べます。自己主張すれば何とかなると思い込んでいる連中ばかりなんでうんざりします。映画に登場するアメリカ人で最悪のタイプですね。挙句の果てに,会社に出勤するためにパイロットを脅したり,取っ組み合いになって銃が暴発して人を殺しちゃうし・・・。こんな連中ばかりなんで,キャンベル扮する殺人犯が常識人でとてもいい人に見えてきます。
80分ちょっとの短い映画で,物語の展開そのもののテンポよく話は進むのですが,それでもだれた感じがします。エイリアンがなかなか襲ってこないからです。そろそろ襲ってきてもいいよね,と思ってもなかなかやってきません。しかも,初めエイリアンは○人だけと思われ,全部をやっつけたと思っていたら実は・・・というお決まりのパターンが続くのですが,逆にいえば,集団で襲ってこないということになります。だからこそエイリアンを倒せたわけですが,見ている方としては「この場面では残り1人だから,こいつを倒せばいいだけだよね」と安心できることになります。安心できるホラー映画ってどうよ,という気がします。
最後の場面でまだ5分以上時間が残っている時点で,最後にもう一人,エイリアンが正体を現すんだなと予想でき,その通りに展開します。お約束ってやつですが,こいつ,なんで今まで正体を隠していたんでしょうか。なぜ,その前のシーンで部下のエイリアンを助けなかったんでしょうか。普通なら,あのシーンで殺人犯を倒しちゃえば簡単だよね。ううむ,エイリアンの考えること,よくわかりませんなぁ。
そうそう,あの「荷物チェック用レントゲン」でエイリアンを見分けるシーン,なぜあのエイリアンはおとなしく入ったの? レントゲンに入る直前に正体を現わせばよかったのに。何もむざむざレントゲン装置に入ることないよね。エイリアンの考えること,よくわかりませんよ。
それにしても,カニンガム監督はなぜ21世紀になっているのにこんな旧式のSFホラー映画を撮ったんでしょうか。カニンガムさんの考えること,よくわかりません。
(2009/12/24)