悪趣味系火曜サスペンス劇場,という感じの映画。残虐シーンがそれなりにあるため,そっち系が駄目な人は絶対に見ちゃダメ,という映画ですが,グロってのは結局お笑いの一つなんだよね,という風に考えている人にはそこそこ楽しめるかなぁ? ラストの結末がどうなるかだけ知りたくて私は最後まで見ましたが,こういう映画は1年に1本か2本でいいな。
どういうお話かというと,親の遺産で大金持ちになったビクターという男がいるんだけど,どうもこいつは人を痛めつけて楽しくなるという,サディストさんです。「大富豪でイケメンだからお持ち帰りされちゃおうっと」という頭空っぽ美女を自宅に連れ帰っては屋根裏部屋に連れ込んじゃうんだけど,この屋根裏部屋はビクターの父親が趣味で集めた拷問道具で一杯。そして美女さんを拷問にかけて大怪我をさせてしまいます。でも,大富豪ですから辣腕弁護士がついてますから,美女さんは1万ドル貰っただけで諦めちゃいます。
ビクターの奥さんがビクトリアで,実は彼女は,夫の顧問弁護士のローマンと不倫中です。ビクトリアは夫の異常性癖は知っていますが,大富豪の奥さんという地位も捨てられないわけです。そこでローマンとビクトリアはビクターを殺して全財産を頂こうという計画を立てます。
ローマンがビクター殺害に使ったのはフグ毒として有名なテトロドトキシン。違法薬物マニア(?)に「コカインもエクスタシーも飽きたし,ちょっと珍しいドラッグはないの?」と持ちかけて入手したモノです。そして首尾よくテトロドトキシン入りの焼きそば(!)をビクターに食べさせ,ビクターはあえなく絶命。これで遺体を埋葬しちゃえば完全犯罪完成なんですが,警察の監察医が遺体解剖すべきだと主張し,遺体はとりあえず解剖室に運ばれます。
ところが,ローマンのもとにビクターの死を新聞で知った薬物マニアから連絡が入るのです。「フグ毒ってさ,100%死なないんだよね。日本じゃ,仮死状態が3日続いた後に生き返った例もあるんだよ。だから,ビクターもこのまま数日待てば,生き返るかもしれないよ」。それを聞いてローマンとビクトリアはびっくり仰天。しっかり死んでもらわないとまずい,ってんで物語は予想外の方向に転がり始めるのでありました・・・ってなお話だ。
DVDのジャケットを見ると,最初から最後まで美女が拷問にかけられる鬼畜系の映画かと思ってしまいますが,そういうシーンは最初と最後だけで,それ以外はほとんど火曜サスペンス劇場のノリです。とはいっても,拷問は拷問なんで十分に痛そうだし,手足がちぎれるシーンや頭に斧が食い込むシーンなんかもありますので,普通の映画ファンは御覧にならないほうがいいと思います。
この映画で一番面白いのは「体は急速に動かなくなるけど,意識は最後まで保たれる」というフグ毒を使っている点でしょうね(医学的にもこれは正しいです)。ビクターは眼を見開いたまま仮死状態に入っちゃうため,そこから先はビクターが見上げた視点がずっと続くんですが,これが結構面白いし,冒頭の拷問シーンよりよほど怖くて痛そうです。周りの人全てが死体だと思って扱っているのに,自分はそれがわかり,しかも体がピクリとも動かないのですから。一番痛そうなのは,医学生たちに検死のまねごとされちゃうシーン。メスを持った医学生が「腸とか肝臓とか,触ってみようぜ」とか「動脈を切っても大丈夫よ。もう死んでるんだし」なんて会話してるんだもんな。そりゃ,怖いよ。
ビクターには死んでほしいけど検死されるのは絶対困る,ってんでローマンが右往左往する様子もおかしかったな。何しろビクターは「検体も臓器提供も解剖も絶対にダメ!」という遺言をローマンに託しているし,検死されたらテトロドトキシンが検出されちゃうし(もちろん,検死したらビクターは確実に死んじゃうけどね),検死官は規則を盾に「絶対に検死しなければいけない」って言い張ります。もちろんローマンは四方八方に手をまわして検死を免れようとするんだけど,検死官の方もそれに対抗措置を繰り出して・・・と,仮死状態のビクターを前に状況は二転三転していきます。ここは笑えます。
あと,ヒロインのビクトリア役を演じているのはクリスティ・スワンソンです。いろいろな映画に登場している女優さんで(確認した限りでは40本近い映画に出演),この映画に出演した時は37歳くらいなのですが,すっかり貫禄がついたというか,立派な二重顎というか,肩幅が広くて頼もしいというか,そういう感じなのが女優として物悲しいです。30代半ばのイケメン系のビクターが,なんでこんな大金持ちでもないどっしり系おばちゃんを奥さんにしているんだろう,と不思議になってしまうからです。少なくとも,サスペンス映画のヒロインの体系じゃないですね。この次,映画にヒロイン役として出ることがあったら,もうちょっとダイエットしてからの方がいいと思います。
というわけで,オススメはしませんが,暇が有り余っている人は話のネタに見てもいいかな。
(2010/01/)