《デッド・ホスピタル》★★(2007年,ドイツ)


 これほど投げやりな映画を見たのも久しぶりでございます。一応、病院を舞台にしたサスペンス色の強い怨霊系ホラー映画でして、次々といろいろな謎が提示されるのですが、あらゆる謎がすべて未解決のまま終わっちゃうのですよ。怨霊(?)となって次々人を殺していく少女の目的もわからなければ、殺す相手の選択も意味不明。ヒロインが少女の死因の手がかりを掴んだらしいところで、それが手がかりかどうかも不明のまま、映画はジ・エンド! ドイツ人の考えること、全くわかりません。

 たとえて言えば、料理の素材を次々に説明しておきながら、料理を作らないシェフのいるレストランに入ってしまったような気分でございますよ。料理を食わせる気がないんなら金を取るな、って文句を言いたくなります。


 看護師ゾフィアが勤める病棟(?)に一人の少女が運ばれます。名前も身元も一切不明です。暴れる彼女を四肢を拘束して鎮静剤(?)をゾフィアが点滴しますが、彼女は血を吹いて死んでしまいます。解剖も行われますが、ゾフィアが間違って点滴薬剤を多く投与した、つまり、彼女のミスで少女が死んだということになり、病院側は一件落着にし、彼女は介護施設(?)に左遷(?)されます。

 実は彼女、同じ病棟(?)の青年医師のコンラート先生と交際中ですが、モテモテのコンラート先生は同じ病院の看護師のザラと二股かけていたらしく、ゾフィアに「君とはお別れだ」と告げます。そして失意のゾフィアは車にはねられ、病院に運ばれます。ゾフィアは流産してしまいますが、この頃から彼女の肩には、あの死んだ少女と同じ痣が出現します。

 そしてその頃、コンラート先生は自宅で少女の怨霊(?)に殺され、ザラが死体を発見します。警察はコンラートとゾフィアが付き合っていたことを突き止め、警察で事情聴取。ここで彼女はコンラートが二股かけていたことを知ります。その夜、ゾフィアはザラを呼び出してザラを問いつめますが、ザラは病院から緊急の用事で呼び出されて病院に行きますが、ここで何者か(もちろん、少女の怨霊さんですね)に追いかけられてボイラー室(?)に入り、落下死体で見つかります。警察はコンサートとザラとゾフィアの三角関係のもつれによる殺人と考えます。

 一方、病院の病理解剖医は以前からゾフィアに思いを寄せていたらしく、同時に、少女の死因がゾフィアのミスではないことに気がつきます。そして二人は、少女の死因を突きとめようと病院に向かい、ゾフィアはカルテを見直し、一方、病理医は少女の死体を納めている死体安置所に向かいますが、そこで怨霊さんが登場して彼も殺されます。

 一方、ゾフィアがこの事件の重要参考人と考える刑事の自宅にも怨霊さんが登場し、彼も殺されます。部下の刑事は刑事殺害もゾフィアの犯行と考え、彼女を逮捕するために病院に向かい、死体安置所に向かいますが、そこで病理医の死体を見つけたゾフィアを発見し、彼女を殺人犯として逮捕し、護送します。


 ・・・というところで映画が終わったら、怒りませんか? 実はこの映画、まさにここで終わっちゃうのですよ。もしもこれが、前後編の前編で謎解き部分の後編が続く・・・というなら話が分かりますが、この映画、本当にこれだけなんですよ。つまり、ストーリーが完結していないというか、作品にすらなっていないんですね。これをどう評価しろというんだよ。


 映画の中では少女はどうやら、体中に痣があり、特に両手首には縛られた痕があり、何らかの薬物を投与されていたことは明らかにされます。病院にかつぎ込まれて鎮静のために四肢を拘束されてパニックを起こしたらしい、という説明もあります。でも、これだけの説明で納得しろといわれてもねぇ・・・。

 それより何より、意味が分からないのは怨霊少女のターゲットの無差別さです。ゾフィアには最後まで手を出しませんが、それ以外のコンサート先生、その恋人のザラ、病理解剖医、事件を追う刑事はすべて犠牲になります。病理医とゾフィアの活躍(?)により、死因は病院の処置やゾフィアの点滴でないことがわかっていますから、コンラート先生を殺す意味はありません。殺すなら、病院にかつぎ込まれる前に拘束して薬物を投与した加害者でしょう。コンラートにしろザラにしろ加害者ではないし、病理医に至っては死因を調べて真相を明らかにしてくれる「味方」なんですから、殺しちゃだめでしょう。


 おまけにこの映画、ホラー映画のくせに全然怖くありません。少女の怨霊(?)が最初に顔を見せるところはちょっとだけ怖いかな、という感じですが、その後は彼女が登場する場面は「そろそろ出る頃だよね」という場面だけですから、見ている方も「ああ、出たな」と思うだけです。ホラー映画なんだから、もっと観客を驚かして怖がらせる工夫をしてくれないと困るんだよね。

 しかも、怨霊さんによる殺害シーンは一切ありません。怨霊が顔を出したかと思うと画面は暗転し、その次のシーンになるだけです。怨霊がどうやって殺したのか、意地でも見せてくれません。おまけに、犠牲者の死体の様子もチラっと見せるだけです。

 「もしかしたら、怨霊に見せかけて、実は犯人は別」という可能性もあるんだけど、何しろこの映画、登場人物がゾフィア以外はほとんど死んじゃうため、その線もなしです。続編を作ろうにもこれだけ登場人物を殺しちゃ、作りようがないと思います。


 いかにも意味ありげなエピソードを次から次へと提示し、引っ張れるだけ引っ張っておいて、オチも謎解きもなしに唐突に終わっちゃう映画が大好き、という人だけ見てください。

(2010/05/25)

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