《BANKER BREAK バンカー・ブレイク》★★★★(2004年,カナダ)


 カナダで実際に起きた銀行強盗事件を素材にした映画です。映画としては丁寧に作られているし,カメラワークもちょっと凝っているし,プロットはしっかり作られていて悪くない作品なんですが,最後があれで終わっちゃうのは見ている方としてはかなり拍子抜けしたのも事実です。実録物であれば最後の顛末まで見せてくれてもよかった気がします。


 映画の舞台ははカナダのモントリオール。伝説の金庫破りマルセルはようやく刑期を終えて出所したばかりだ。彼を迎える恋人のマギーは平穏な普通の生活を望んでいたが,実はマルセルは獄中で最後の大仕事の計画を立てていて,出所直後から昔からの相棒フレッドやスマイリーと連絡を取り,彼らに計画を持ちかける。それは使われなくなって数十年たつ地下道から20メートルの穴を掘り銀行の地下金庫に眠る2億ドル(!)を奪うという計画だった。しかもその銀行は3ヶ月後に移転が決まっていて,それまでに穴を掘らなければいけなかった。そしてフレッドの甥,そしてスマイリーが呼んだサヴァールという男が加わって世紀の銀行破りが始まり,トンネルはついに金庫室に到達する。そして大胆かつ緻密な計画が実行に移されるが・・・という映画です。


 この映画は要するに,トンネル掘りとその後の強奪事件の様子と,更正したマルセルと平穏な生活を送っていると信じるマギーの愛情の様子を交互に描いた映画と言えます。マギーは途中でマルセルがまたもや銀行強盗を画策していることを知り,自分への愛情は偽りだったとして彼の元を去るわけですが(・・・その後またヨリを戻しちゃうけど),映画を見終わってみるとマルセルに「更正」の二文字を期待する方が無理だったことがわかります。

 なぜかというと,マルセルにとっては金庫破りは「大金を得るための手段」ではないからです。彼にとって金庫破りはそれ自体が「目的」であり,たまたまそこに大金が入っていただけなんですね。つまり彼は,金庫を破るのが趣味の「金庫破りマニア」なんですね。それが判ると,彼の行動は首尾一貫したものであることがわかり,納得できます。


 彼はそれまで3,4回の金庫やぶりをし,合計26年間を刑務所暮らしをしていますから,恐らく,〔金庫破り〕⇒〔逮捕〕⇒〔15〜20年の刑を食らう〕⇒〔模範囚として8年くらいで出所〕⇒〔すぐに次の金庫破り〕⇒〔逮捕〕・・・の繰り返しだったと思われます。共犯のフレッドもスマイリーも逮捕されていませんから,マルセルは裁判でも自分の単独犯行を主張して(だから犯罪者仲間から「伝説の金庫破り」と言われたのでしょう),罪は自分一人で被ったことが判ります。

 普通なら,仲間を最後まで庇う凄い奴なんですが,スマイリーが計画に必要な莫大な資金を提供したことから考えると,盗んだ金はスマイリーに預け,それを次の金庫破りの資金にすることが目的だったことになります。だから,スマイリーの名前を出さなかったのでしょう。スマイリーは普段はオーケストラの楽団員をしているらしいのですが,彼の給料からは必要な資金を捻出することは不可能です。となると,マルセルは金庫破りで得た金をスマイリーに預けていたとしか思えません。

 これはフレッドについても同様で,フレッドが捕まってしまうと次の楽しい金庫破りができなくなってしまうから彼の名前を出さなかったのでしょう。

 映画の中では描かれていませんが,マルセルの最初の犯行は恐らく「金目当てのケチな金庫破り」であり,それが成功したもんだから「次はもっと難しい金庫を破ってやろう」と次第にエスカレートしていき,金庫破りをすること事態が目的になったと考えられます。

 というように考えると,マギーが「今度こそマルセルは更正したはず」と考えるのは最初から無理だったことがわかります。いつ頃から彼と付き合っていたかは不明ですが,少なくとも彼の過去は知っていますから,マルセルが「金庫破りマニア」であることにどこかの時点で気がつくべきなのです。これはマルセルの「好み」の問題なので,刑務所に入れたからといって更正できないんですね。

 要するに,金が目当ての金庫破りなら金を手にすれば,もう金庫破りをする必要はありませんが,金庫破りマニアは破っていない金庫がこの世にある限り,犯行を続けちゃうんですね。要するに,コレクターと心理は同じです。おもちゃコレクターはおもちゃで遊ぶために集めるんじゃなくて,持っていないおもちゃがある限り集め続けますし,集めたおもちゃで遊ぶこともありません。

 そう考えると,撃たれて瀕死の重傷を負ったフレッドを連れて逃げ,何とか出口のマンホールにたどり着いたシーンでのマルセルの行動も,これしかなかったことが判ります。一緒に金庫破りそのものを楽しんでやってくれる仲間はフレッド以外にはいないからです。


 それ以外の部分をみると,よくできていた部分と描き方が淡泊すぎる部分が混在しています。

 例えば,最初の出所直後にフレッドと再会するシーンに登場する,あの古ぼけた拳銃。そうか,あの場面で使われるのはこの拳銃だったんだ。うまい使い方です。

 また,出所した彼の行動を見張る女性の保護観察官はいい味を出していて,後半の銀行強盗シーンで重要な役割を担うんじゃないか,と期待させましたが,早々に○○されちゃいました。実際の事件でそうだったのかもしれないけど,映画としてはこのお姉さんを最後まで活躍させるべきだったと思いますね。

 マルセルとマギーのエッチシーンは数カ所ありますが,これは最初の1シーンだけでよかった気がしますね。あれでちょっと間延びしちゃいました。まぁ,フランス系カナダ映画なんで,こういうシーンは「お約束」なんでしょうが・・・。

 それにしても,あの後,スマイリーはどうなったんでしょうか。無事に逃げられたんでしょうか。そればかり気になります。


 というわけで,「銀行襲撃地下トンネル系映画」の一つなんですが,丁寧に作られていて最後まで楽しめました。

(2010/06/18)

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