《アンダーワールド ビギンズ》★★★★(2009年,アメリカ)


 ヴァンパイア族と狼男族(ライカン)の抗争を描く《アンダーワールド》シリーズの第3作目というか,これでお終いになるのかな? ケイト・ベッキンセイルの魅力が炸裂した第1作目はこの手の映画では傑作中の傑作でした。それを受けた第2作目も力作でしたが,最後の方でほとんど主要な登場人物が死んでしまったため,これで続編は辛いだろうなと思っていましたが,第3作目は1000年前に舞台を移して,新たな種族として生まれたライカンとヴァンパイア族の物語となっています。ま,よくある「ビギンズ物」ですね。

 映画としては普通に面白いです。最後まで緊張感が持続し,楽しめました。画面はダーク・ブルーを基調としている暗めのシーンが続きますが,それが「中世の夜」の雰囲気を醸し出していてよろしいです。また,ストーリー展開も無理がなく,第1作目,第2作目の様々なシーンに連続する「説明」があり,シリーズとしての統一感もあります。前2作を見た人なら「このシーンはあそこの部分に繋がっているわけね」と楽しめたはずです。

 ですが個人的には,「これが本当に見たかったアンダーワールド第3作目なの?」というとちょっと方向性が違っていたような気がするんですね。前2作のファンが本当に見たかった・知りたかったのは「処刑人セリーン誕生の秘密」じゃないかと思うのですよ。後述するように,ビクターがセリーンを殺さずに処刑人にしたのは,自分の手で殺さざるを得なかった娘のソーニャと生き写しだったから,という説明があり,これはこれで納得できるのですが,どうせそこまで明かすんだったらこのシリーズ最大の謎(?)である「なぜセリーンは処刑人に?」まで言及して欲しかった気がします。それとも,「ビギンズ2」まで作るつもりなんでしょうか?


 というわけで,ストーリーをちょっと紹介。

 はるか昔,不老不死を得たコルヴィナスには双子の兄弟(マーカスとウィリアム)があり,それぞれがヴァンパイア族と狼男族の祖となった。しかし時を経ず,二つの種族は争うようになりが,知性を持つヴァンパイア族が優勢となり,狼男族を支配するようになる。狼男族は狼に変身すると人間に戻れず,知性も失ったからだ。しかし,そんな狼男族に一人の赤ん坊ルシアンが生まれ,彼は人間から狼,狼から人間に自由に戻ることができた。それは新しい狼男族「ライカン」の誕生だった。ヴァンパイア族の長ビクターはルシアンを殺さずに育てることにする。ヴァンパイアは日中に活動できないため,日中に自由に活動できるルシアンを増やして城の警護に当たらせようと考えたからだ。

 しかし,ビクターの愛娘ソーニャはルシアンと愛し合うようになってしまい,彼の子供を妊ってしまう。また,ルシアンは奴隷状態におかれた狼男族を開放し,ヴァンパイアの城の外に出て自由な生活を獲得すべきだと考えていた。しかし,ソーニャとルシアンの関係はビクターに知られてしまい,激怒したビクターは・・・という映画だ。


 第1作目,第2作目は現代が舞台だったため,ヴァンパイアとライカンが銃を主体とした様々な武器で戦っていましたが,今回は中世ヨーロッパが舞台ということで剣戟が主体となり,飛び道具はせいぜいボウガン・巨大ボウガンくらいです。
 それ以上に違っているのは,前2作はどちらかというと個人戦が主体でしたが,こちらの方は集団で襲ってくる狼男族と彼らから城を守ろうとするヴァンパイアたちの集団戦がメインです。これはこれで面白かったです。ただ,狼男の集団が走ってくるシーンはCGなんですが,あの体型だと速く走れそうにない感じなんで,普通の狼の姿にした方がよかったような気がしますね。

 あと,捕まえた人間たちを原材料(?)にしてライカンを量産しようというのは面白いけど,何しろヴァンパイアは日中に活動できないわけなんで,知性を持つライカンが増えて城の天井を破壊したらヴァンパイアさんたちは一気に全滅するわけで,ライカン増産計画は諸刃の刃ではなかったかと思われますね。というわけで,最初にビクターがルシアンを殺していれば何も問題はなかったような気がします。無用な情けをかけるべきではなかったと・・・。

 貴族階級であるヴァンパイアが狼男族を奴隷にして労働させ,さらに人間族を恐怖で支配して税金を搾り取るという構図で,植民地の独立戦争,あるいは征服された民族の反乱というアナロジーでストーリーは作られているのですが,問題はヴァンパイアと狼男の変身した狼男族では,圧倒的に後者が強そうなんですよ。狼男は牙も爪もすごいし,運動能力も高いし体も大きいし,それに何より数が多いです。それに対し,ヴァンパイアは身体能力は人間並だし(少なくともこの映画では),ボウガンと剣以外には武器はないし,第一,個体数が少ないです。これではオオカミ族と集団戦になったらヴァンパイア族には勝ち目はなさそうです。しかも,太陽が昇るとお陀仏ですから,知性を持ったライカンの方が絶対に優勢になるはずです。


 ちなみに,第1作目のヒロイン,ケイト・ベッキンセイルは一番最後のシーンにちょっと登場しますが,明らかに第1作目のどこかのシーンの流用で,ちょっと独り言を言うだけです。私,ベッキンセイルのファンなんで,もうちょっと顔を見たかったなと思います。ソーニャ役のローナ・ミトラは確かにセリーン(ケイト・ベッキンセイル)に似ているといえば似ているんですが,並べて見るとやはり違和感があるんですね。しょうがないといえばしょうがないんだけど・・・。


 というわけで,「ビギンズ物」としては水準以上の出来だと思います。ただ,いつの日か,「処刑人セリーン誕生の本当に秘密」に迫る続編が見たいなぁ,というのも偽らざる心境です。

(2010/06/22)

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