《ハロウィン》★★★★(2007年,アメリカ)


 化け物のような連続殺人鬼を描いたスラッシャー系ホラー映画にはリメイク版が多いです。《13日の金曜日》とか《悪魔のはらわた》とかですね。それらと同様,何度もリメイクされているのが1978年に公開されたジョン・カーペンター監督の《ハロウィン》です。これまでに7作のリメイク版が作られ,第8作目に当たるのが今回紹介するロブ・ゾンビ監督のものです。ゾンビ監督は元々メタル系ロックバンドのリーダーらしく,その後,映画に進出し,これまで紹介したものでは《マーダー・ライド・ショー》《マーダー・ライド・ショー2 デビルズ・リジェクト》などのノリのいいスラッシャー・ホラー映画を作っています。

 というわけで本作ですが,カーペンターの《ハロウィン》は見たような記憶はあるんですが,よく覚えていないんですよ(・・・何しろ,似たようなスラッシャー系ホラー映画は腐るほどありますから・・・)。というわけで,オリジナル版に比べるとどうか,何てことは書けません。この1作を独立した映画として評価していきます。

 というわけで,このロブ・ゾンビ版《ハロウィン》ですが,すごくよくできています。子供時代の主人公を丁寧に描いているため,なぜこんな怪物が生まれたのかが理解できるし,このモンスターの内面の闇の深さも垣間見ることができます。

 もちろん,スラッシャー映画なので惨殺シーンは何度も出てくるし,流れる血の量も半端じゃないし,死体は方々に転がっています。決して家族みんなで見ましょうね,なんて映画ではありません。しかし,幾つものスラッシャー映画を見てきた人間にとっては,この映画の余韻の深さはちょっと感動的です。日本語の使い方を間違っているかもしれないけど,叙情的とさえ言いたくなります。スラッシャー系ホラー映画を「見た方がいい映画」と「見ない方がいい映画」に分けると後者が圧倒的に多いのですが,本作は間違いなく前者です。


 舞台はアメリカのイリノイ州ハドンフィールドという街。この街で育った10歳の少年マイケル・マイヤーズは家庭に恵まれていなかった。父親はなく,母親デボラはストリッパーとして一家の生計を立てている。彼女は恋人と暮らしているが,怪我で働けなくなって酒浸りの毎日だ。それどころか,娘(恐らくデボラの連れ子だろう)を見ては「いいケツしてるな」とスケベ視線で舐めまわすクズ野郎。その姉にしても頭にあるのは恋人とのセックスだけで,弟は邪魔扱い。結局,マイケルが愛しているのは実の母親のデボラとまだ赤ん坊の妹だけ。

 学校でもマイケルはオカマ呼ばわりされ,母親の仕事でからかわれ,いじめられていた。そしてマイケルは一方では,動物を虐殺しては死体の写真を集める性癖に目覚めていく。

 惨劇は10月31日のハロウィンの日に起きた。母親の仕事を卑猥な言葉で揶揄するいじめっ子を仮面を被ったマイケルが襲って撲殺し,マイケルはさらに飲んだくれている母親の恋人の喉を掻き切る。そして,ベッドの中の姉と彼女の恋人を血の海に沈める。

 マイケルは逮捕されて病院に収容され,小児精神科医のルーミスが治療にあたるが,マイケルは自分が起こした惨劇について全く覚えていなかった。そして,母親が面会にきたその日,看護師を食事用のフォークで刺し殺してしまう。「悪魔の子を産み落とした」と責められたデボラは拳銃自殺を遂げ,血の海の中に赤ん坊(=マイケルの妹)が一人残されていた。

 15年後,精神病院のマイケルは巨漢に成長していたが,15年間,言葉一つ発しなかった。そしてハロウィンの夜,マイケルは移送されることになったが,突然暴れだして病院職員を殺して脱走。彼は故郷のハドンフィールドに向かう。生き別れの妹に会うためだった。そして彼は,ゆく先々で殺人を重ねていく。

 一方,マイケルの脱走を知らされたルーミスは,彼が妹を狙っていることを知り,保安官とともに車で急ぐが・・・という映画です。


 少年時代のマイケルがすごいです。女の子みたいな顔立ちときれいな金髪の少年ですが,自分の顔にコンプレックスを持っていて,いつもピエロの仮面で顔を隠そうとしています。そして,時折,下面をはずしてみせる素顔,特に目がヤバいです。成人してからのマイケルより,数段不気味です。そして,彼の育った劣悪な家庭環境がその邪悪さを見事に説明しています。その説得力は,同種の映画の中では群を抜いていると思います。

 妹(事情は知らされておらず,自分に兄がいることすら知らされていない)をマイケルが拉致し,目が覚めた彼女の目の前で包丁を捨てて一枚の写真を渡すシーンが印象的です。赤ん坊時代の彼女と母親が写っている写真です。自分の意図を彼女に伝えようとするマイケルですが,もちろん,妹にそれは伝わりません。その写真の赤ん坊が自分だとわからないためです。そして落ちている包丁を手に取り,兄を刺して逃げ出します。妹に自分の意図を伝えるすべのないマイケルの姿が無性に悲しいです。


 とにかく,ここまできたらリメイクというよりは,新たな想像と言っていいんじゃないかと思います。スラッシャー映画でここまで見る者に「何か」を伝えてくる監督の力量に脱帽です。

 というわけで,基本的にスラッシャー・ホラー映画なので万人にはお勧めしませんが,マイケル・マイヤーズというモンスター誕生の謎を知りたい人(そういう人がどのくらいいるかは不明ですが)には絶対にオススメ映画です。

(2010/07/27)

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