《GOUDATSU 強奪 "Daylight Robbery"》★★★(2008年,イギリス)


 いわゆる,穴掘り銀行強奪系映画の一つだ。このジャンルの映画はこれまで多数作られてきて,傑作,秀作,凡作,駄作と何でも揃っているが,この映画は残念ながら凡作グループである。唯一目新しいのはサッカー・ワールドカップを絡ませたことだけで,それ以外には「人質の○○が実は・・・」というのがちょっと面白かった程度であるが,それにしたってあの傑作《インサイド・マン》の二番煎じに過ぎない。


 舞台はロンドン。ドイツ・ワールドカップの開幕日,ドイツへのイギリス人サポーター用チャーター機に乗ろうとする6人の男たちが,カウンターでチェックインを急がせていた。出発までまだ2時間もあるのにである。彼らには目的があった。離陸までの時間を利用して銀行を襲撃して7000万ポンドもの大金を盗み,犯行終了とともに予約してあるドイツ行きの飛行機で逃亡するという,大胆不敵な計画だった。

 男たちは乗り込んだバンを銀行の入り口から突入させ,銃を突きつけて行員と客全員を一カ所に集めて頭から袋をかぶせた。一方,襲撃グループとは別グループの数人が地下トンネルを掘り進めていて,襲撃とほぼ同時に銀行の地下に穴が開けられる。銀行支店長を脅して金庫を開けさせ,あとは地下トンネルを通じて外に金を運び出すだけだった。

 しかし,銀行突入時に一人が不慮の事故から大腿に深い傷を負って出血が止まらなくなったことから,綿密な計画は次第に狂い始めていき・・・という映画である。


 全体的な印象としては「真面目だけど地味」である。なんだか平板な感じなのである。銀行地下への穴掘りシーンはないし,銀行員と客を制圧するシーンも淡泊だし,何より,この手の映画に必須の「警察と犯人側との緊迫したやりとり」がないからである。実際,100分近い映画の中で大半が犯人同士の諍いとか,怪我をした一人の治療シーンが多くて,その他のシーンの印象が薄いのだ。

 おまけに,銀行襲撃犯同士の中が悪いし,どう考えてもこいつは仲間に入れないだろうという軽薄バカが一人いたりして,見ていてイライラする。飲み会の仲間だったらこういうバカが一人くらいいてもいいけど,何しろこれは銀行強盗なのである。もうちょっと「プロの犯罪者」を集めて欲しいものである。
 多分,こういう「ゆるキャラ」的連中が襲撃犯であるため,映画全体の緊迫感が殺がれてしまったと思う。しかもこの軽薄バカ青年は「最後の最後に大ポカをしてしまう役柄」なんだろうなと誰しも期待しているのに,そっちの方面での活躍は全くしてくれないのである。バカはバカなりの役割をきちんと果たしてくれないと困るんだよね。


 この映画の緊迫感が殺がれた一つの原因は,警察のあまりの無策ぶりである。警察がやっていることといえば銀行に電話をかけること,銀行の入り口の周りを警官で囲むことだけで,他には何もしていないのだ。銀行内の防犯カメラの映像を分析するでもなく,交渉役のプロを呼ぶでもなく,ただただ時間が無駄に過ぎていくだけである。普通の銀行襲撃映画なら,プロファイリングの達人とか,交渉役のプロとか,わずかな画像の手がかりか犯人を割り出すプロとかが登場し,犯人との丁々発止の騙し合いがあるのが定石なのだが,そういうのが全くないのである。だから,終始仲間割ればかりしている間抜け銀行犯を逃がしちゃうんだよ。


 それはさておき,この事件発端の空港でのチェックインと同時にサッカーの試合が始まり,試合の決着が付いたときにアジトから逃げ出したという設定になっている。つまり2時間ちょうどである。この間に,「空港でのチェックイン⇒アジトに集結⇒銀行襲撃⇒現金運びだし⇒空港へ移動⇒飛行機に乗り込む」をするわけだが,これって可能なんだろうか。

 なぜかというと,途中でけが人の治療が入り込むからだ。どうやら,大腿動脈の損傷による出血多量らしいのだが(その割には,画面に映っている傷からはほとんど出血していないが),彼が意識を失っているところを発見されるのは受傷後15分以上経ってのことと思われる。それから警察に「医者を連れてこい」と連絡し,一人の医者が呼ばれて銀行内に入り,診察の結果輸血が必要ということになり,血液型が不明のためイギリスで一番多いO型の血液3単位を輸血するのである。医者の人選をするだけでも時間がかかるし,血液を運び込むのにも時間がかかる。多分,輸血の途中で時間切れになったはずだ。このあたりはどう考えても不自然だ。


 ちなみに,銀行襲撃後にドイツに向かった連中は強奪した金を持たずに飛行機に乗り込んでいる。どうやら「イギリスに残った2人」が保管していたようだ。もちろん,手荷物で運び込める量ではないし,カウンターで預ける時間もなかったためだろうが,ドイツに逃亡した6人はこれで納得しているのだろうか。奪った金を「イギリスの2人」がネコババする可能性を誰も考えなかったのだろうか。

 というのは,銀行襲撃チームの6人とイギリスの穴掘りチームはその日初めて顔を合わせたというように説明されているからだ。そしてどうやら,銀行襲撃犯も以前からチームを組んでいるわけでなく,見ず知らずの6人がその日集まったような感じなのだ。これは恐らく,一人が捕まっても他の人間が捕まらないための工夫かなと思ったが,それならドイツ6人組は確実に金を手に入れる保証はないはずだ。イギリス2人組が金を持って逃げ出すことが可能だからだ。普通の銀行強盗ならここでイギリス2人組に「保険をかける」はずなんだけど,そういう工夫は一切していないようなのだ。お人好しにも程があるんじゃないだろうか。


 というわけで,何も考えずに暇つぶし程度に見るにはいいけど・・・というレベルの作品でございました。真面目に丁寧に作っているんだけど,面白い映画になる「何か」が不足しています。

(2010/08/20)

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