《デッドリンガー》★★★★(2005年,フランス)


 双子をテーマにしたかなりよくできたサスペンス映画。後半になってもなかなか先が読めず、一体どういう結末で終わらせるつもりなんだろうと、最後まで楽しめた。ラストシーンの「あの結末」でスパっと断ち切り、その後の主人公の生き方について観客にさまざま考えさせる終わり方は、良くも悪くもフランス映画である。ハリウッド映画だと白黒はっきりさせた結末にするはずだ。


 主人公は写真家のマチアス(ブノア・マジメル)。臨月の妻と息子(7歳くらいだろうか?)に囲まれ幸せに暮らしている。そんな彼の元に、母の死を知らせる手紙が舞い込む。実はマチアスは孤児として施設で育ち、まさに青天の霹靂である。そして、指定された弁護士の事務所に行くが、そこで自分と瓜二つの男に出会う。双子の兄のトマ(マジメルの一人二役)だった。しかしマチアスには子供の頃の記憶は全くない。いろいろ話を聞こうにもトマは今日は忙しいと、素っ気ない態度をとる。

 翌日、トマのアパートに向かうがトマは不在でトマの妻がいきなり「トマ、会いたかった」といきなり抱きつかれ、マチアスはそこから逃げ出す。その後、トマがマチアスの自宅を訪れ、マチアスの息子はすっかりトマ叔父さんに懐いていて、マチアスの妻もトマと楽しそうに話している。

 マチアスは封印された過去の記憶を取り戻そうとし、幼い頃の記憶の断片が少しずつ蘇っていく。そして、トマの妻から二人の父親の住所を聞き出して会いに行くが、なぜか久しぶりに再会した父親から突然暴力を振るわれ、「おまえは死んだ人間だ」とののしられる。

 そして、幼い頃に父母と暮らしていた家を捜し当てたマチアスはついに恐ろしい過去の出来事を思い出したが、その時、トマの正体が・・・という映画だ。


 「これから10数えたら、恐ろしいことが起こるよ。1、2、3、4・・・」という幼い子供の声から始まり、ベッドに眠るマチアスの首筋を1センチくらいの虫が這い回って耳に入ろうとする冒頭シーンから、尋常ならざる不気味さが漂っている。これから語られる惨劇を予想させる見事な導入部である。そしてこの子供の声は映画のラストにも登場し、「あの結末」に導く役割をする。

 そして、方々に張り巡らされている伏線も手が込んでいる。なぜか血を見ると気絶してしまうマチアスの謎、刃物と赤に対する恐怖、なぜか素顔を見せようとしないトマの妻、父親の部屋の壁を埋め尽くすトマの妻の写真、フラッシュバックのように蘇る幼い頃の兄弟の様子、トマとトマの妻のさりげない行動とか言葉・・・など、いかにも曰くありげな謎が提示され、しかもそのほとんどが最終部分で一つの「真実」につながっていく。このあたりの作り方はうまいなぁと思う。実に緻密なストーリー展開である。

 そして、幼い頃のマチアスとトマの秘密はかなり衝撃的だけど、確かにこれなら、「刃物と(血の)赤」で血塗られた過去は封印したくなるし、父親がマチアスに「おまえは死んだはずだ」と言う理由もよくわかる。こういうのがわかってくると、「実は父親とトマの関係は○○だったの?」とか、「もしかしたらマチアスの息子は▲▲じゃないの?」とか、「父親と母親の関係はもしかしたら・・・」とか、いろいろ見えてくるのだ。このあたりもうまい作り方だと思う。


 それにしても、トマはいつ、弟のことを知ったのだろうか。「あの事件」以降、マチアスは死んだことにされて孤児院に出されたと考えられ、父親はトマにも「死んだ」と教えたはずだ。とすれば、妻の死を契機に父がトマに「弟は生きている」と伝えたとしか考えられないが、その理由が全くわからない。それとも、死の床の母が教えたのだろうか。この問題についていろいろ考えてみたが、納得できる理由付けは考えつかなかった。

 同様に、そもそもトマは何がしたかったのだろうか。最初はマチアスになりきって家庭を乗っ取ろうとするのかと思っていたが、トマは○○であり、それはすぐにマチアスの妻にバレてしまうはずなので、これでないことは明らかだ。トマは一体、何をどうしたかったのだろうか。


 それにしても、ラストの妻と子供の言葉は予想されたものとはいえとても残酷だ。この言葉を聞いた彼は今後、マチアスとして生きるのだろうか、トマとして生きるのだろうか。

(2010/09/03)

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