《シティ・オブ・ザ・デッド》★★(2006年,アメリカ)


 タイトルから分かるようにゾンビ映画です。そして,ご多分にもれず低予算ショボショボ映画です。ただ,ゾンビ映画にはリメイクやパクリ・本歌取りが多いのですが,この映画はオリジナルの脚本で勝負しています。その心意気やよしとしましょう。
 実際,隕石が落ちてきてゾンビ化するという設定は,ゾンビ映画では初めてじゃないでしょうか(このあたりは,地球の生命は宇宙からもたらされたという「パンスペルミア説」をベースにしていると思われます)

 ただ残念なことに,肝心のオリジナル脚本自体がトホホな水準でして,見ていて物悲しくなってきます。「低予算だけど頑張ってるじゃん。やればは出来る子なんです,本当は出来る子なんですこの子は」,って褒めてあげたいのはやまやまなんですけど,ここまでトホホだと・・・。


 舞台となっているのは世界一危険なエリアと呼ばれているロサンゼルスのサウスセントラル。ここで橋の下でホームレスの皆さん相手に「世界はおしまいだ。神は罰を与える」と説教を垂れているオッサンがいます。するとそこに,突然隕石が落ちてきて,一帯は火の海に包まれます。

 一方,サウスセントラルを根城に活躍(?)する黒人ギャング3人組。ドラッグの取引で倉庫に向かう最中です。途中で,仲間の一人の妹を車で拾い,彼女を自宅に送り届けようとしますが,なぜかこの妹,お兄ちゃんにくっついて行こうとします。ちなみに,彼女の母親が「今日は帰りが遅くなるの? 残念だわ,流星群が見られるっていうのに」とこぼします。これでさっき降ってきた隕石の正体がわかります。ちなみに,黒人3人組,性格が良くて心優しい感じなので,ギャング界で生き残るのは無理じゃないか,という気がします。

 さて,なぜかその倉庫に別の4人組白人ギャング(男性3人,女性1人)も入ってきます。どうやら取引時間の午後9時を午前9時と間違えるという,「サザエさん的ミス」で笑わせてくれます。そんなわけで黒人3人組と鉢合わせしたのですが,両グループは初対面でしかもギャング団同士ですから,いきなり険悪ムードです。そして,白人ギャングの逮捕を狙っている警察の一団も工場を遠巻きにして待機しています。

 そしてもう一人,テレビの人気お天気キャスターの中年男性(「とくダネ!」の「アマタツ〜」みたいな人でしょうか)も絡んできます。そして,奥さんとのドライブの途中で異様な風体の集団に襲われて奥さんはあっという間にこの連中に喰いちぎられてしまい,何とか逃げ出してなぜかこのギャングで一杯の倉庫に逃げ込みます。

 キャスターの奥さんを襲ったのは,最初の隕石の直撃を浴びたホームレスさんたちがゾンビ化したものでした。そして,倉庫に突入しようとした警察車両がゾンビの大群に襲われ,車で逃げだそうとした二人の警官はゾンビの群を避けようとしてギャングさんたちのいる倉庫の中に突入してしまいます。この車にギャングさん一人が轢き殺されます。

 外はゾンビがうようよ,倉庫の中に閉じこめられたギャングと警官とお天気キャスターは無事に逃げられるでしょうか・・・ってなアホ映画でございます。


 低予算映画の常として,せっかくサウスセントラルを舞台にしているのに町中のロケは数シーンのみで,舞台はほとんど倉庫内にです。倉庫内だけで映画を完結させないといけなくなったため,外にいるゾンビを倒しに討って出るという選択肢もなければ,外にいるゾンビが中に侵入してくるという選択肢もなくなってしまいました(そうしたら倉庫外のロケが必要になっちゃうからね)。こういう状況に気を利かせたのか,ゾンビ君たちは倉庫外で人間を襲うのに忙しくて,倉庫内に獲物がいることに全く気がつきません。もちろん,倉庫の窓を破ってくるなんてこともありません。

 というわけで「なかなかゾンビが襲ってこないゾンビ映画」になってしまうわけです。それでは間が持たないため,倉庫内のギャングさんたちは常にいがみ合ってばかりです。「生きて出られるためなら警官とも黒人野郎どもとも協力するぜ」,なんて方向に頭が働きません。こういう生きるか死ぬかという事態になのに,「豚ども(=警官)の言うことなんか聞けるか。黒人チンピラどもと協力するなんてまっぴら」状態です。かくして倉庫内部でのアホ抗争が延々と続きます。

 その結果,ゾンビに襲われて死ぬ奴より仲間割れで殺される方の数が多いという,情けない状況になります。ゾンビの大群に追われて堅牢な建物に逃げ込むというのはゾンビ映画の定石ですが,ここまでアホで協調性がないおバカさんばかり逃げこんでしまうと収集がつかないことがよくわかります。


 しかも,いかにも主人公っぽい登場人物(例:ギャングのリーダーとか年長の警官とか)が途中で呆気なく死んじゃいます。つまり,最後のゾンビ軍団との最終決戦で活躍してくれそうな戦闘能力の高そうな奴が生き残りません。生き残るのは,どう見ても戦闘能力の低そうなのが3人(2人の女性,ヘタレの黒人)だけです。これで本当に大丈夫なんだろうかと,ゾンビをどうやって倒すんだろうかと,見ている方が心配になってきます。ま,「お天気のアマタツ」君が最後の生き残り,というよりはよかったですけどね。それにしても,なんで「アマタツ」君を登場させたのか,最後まで意味不明でした。

 で,最後に二人が生き残り,倉庫の外に出ますが,外の世界はなんと,隕石群があちこちに落ちまくり! もちろん,ゾンビウイルス(?)を持ち込んだ張本人でございます。ゾンビ映画特有の絶望的状況でのエンディングというお約束はきちんと守っています。このエンディングはちょっとよろしいです。


 それにしても,ここまでゾンビが活躍しないゾンビ映画,ってのも珍しいかもしれません。さすがはオリジナルフィルム,ってか。

 そうそう,場面のほとんどは薄暗い倉庫の中なんで,何が起きてどうなったのか,わかりにくいです。地デジ対応ハイビジョンテレビで見た方がいいですよ。地デジ非対応のテレビで見ている人はきれいに見えないみたいです(・・・と,地デジ化を進める総務省の片棒を担いじゃうのだ)

(2010/10/15)

シティ・オブ・ザ・デッド

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