《噛む女》★★★(2008年,カナダ)


 カナダ製のヴァンパイア映画・・・といっても,ホラーではなく「血しぶきと血糊の多いエロティック・コメディー」といった感じである。ストーリーのテンポはいいし,見せ方も工夫しているし,怖さとおかしさのバランスはいいし,低予算のヴァンパイア映画としてはなかなかいい出来だと思う。しかも,ヒロインを演じるエリカ・コックスがスタイル抜群の美女で可愛くて,しかも美乳を惜しげなく披露してくれるのだ。これだけでも元を取った気分になる。そして何より,最後までバカに徹しているところがいい。私,基本的にこういう映画は大好きだ。


 主人公のジャック(ジェイソン・ミューズ)は夜勤の救急救命士。夜に仕事して朝に帰るという生活のため,つき合っている女性のシェリーは愛想を尽かして出ていったばかり。そんな彼のよき相談相手は同僚のロジャー。口は悪いけど(何しろ,こいつのセリフの半分以上は下ネタがらみだ),とても面倒見のいい初老の男である。

 そんなある日,帰宅中の彼は自宅近くのゴミ捨て場に女性(エリカ・コックス)が倒れているのに気がつく。最初はジャンキーかと思ったが,彼女は全身血塗れでただならぬ様子だ。病院に連れて行こうとするがなぜか彼女は拒否。しかも周りには本物のジャンキーどもがたむろしていて,ここにいたらこいつらの餌食である。そこでジャックは彼女を自宅に連れていくことにした。

 彼女には首に噛まれた痕があり,しかも自分の名前も思い出せない様子。警察に問い合わせても彼女の特長に一致した行方不明人のデータもない。しょうがないので,彼女を部屋に残し,翌日ジャックは職場に出勤。そして仕事から戻ってみると彼女はすっかり元気になっていて,自分の名前はダニカだと名乗る。

 しかし翌朝,ダニカの様子は悪化する。ジャックはロジャーに来てもらって診てもらうが,薬物中毒の禁断症状であり,早く更正施設に連れて行けとアドバイスするばかり。しかし,ジャックにはダニカは他の人間にない「何か」があることを感じ,麻薬中毒ではないと信じている。その夜,ジャックから去っていった元カノのシェリーが自分の持ち物を持ち出そうとして合い鍵で部屋に入ってきたが,その時,ダニカが・・・という映画である。


 ダニカがヴァンパイアになった経緯は全く描かれていないが,どうやら,突然ヴァンパイアに襲われて血液を吸われ,自身もヴァンパイアになってしまったようだ。いわば犠牲者であり,彼女は自分がヴァンパイアになっていることに気付いていない。だが,激しい空腹感ばかり感じていて,体の調子もヤバい。このままだと死んでしまいそうだが,自分でもどうしたらいいかわからない。
 恐らく,ヴァンパイアに噛まれたばかりの人間って,こんな感じなんだろう。そういう「なりたてヴァンパイア」の様子をエリカ・コックスは見事に演じている。そして,最初の頃はジャックに頼りきっていて不安気だったのに,ヴァンパイアであることを自覚してから,次第に強気になっていき,最後の方ではジャックを見る目は「こいつは単なる私の食料」という感じになっていて,その変化も面白い。

 どうしても生きている人間の血液でなければ駄目ということがわかり(輸血用血液を飲んでみるが,冷たくてまずいとゲロを吐いちゃうのだ),ジャックの家の周りにたむろしているジャンキーどもを一人ずつ家に入れて,ダニカのお食事タイムとなるわけだが,あとに残った死体を処理シーンがムチャクチャ面白い。「セサミ・ストリート」あたりで使われているような音楽をバックに,ジャックがプチプチシート(って言うんだっけ?)でくるんでいくんだけど,音楽とシーンのミスマッチぶりに大笑い。このシーンは最高である。しかも,自分は血を吸うだけで残った死体処理を手伝わないダニカに,ジャックが「後始末はいつも俺かよ!」というシーンも妙におかしい。

 おかしいといえば,シェリーにダニカが襲いかかり,帰宅したジャックがシェリーの死体を見つける場面。オイオイ,死体の脇でイチャイチャするかよ。しかも,その後で死体のシェリーが起き上がってジャックに襲いかかるシーンがあるんだけど,ここでシェリーが口にする言葉は「私のCDを返して!」なんで笑っちゃいます。どこまで強欲なイヤな女なんだよ,シェリーちゃんは・・・。こういう強欲女と別れて正解だったね。


 そうそう,エンドロールにNG映像が流れるけど,これがまた面白いよ。すごく下品だけどね。これを見ると,映画本編の下ネタのセリフなんてまだまだお上品だったことがわかるのだ。

 とりあえず,ナイスバディで色っぽいヴァンパイアが出てくる映画が大好き,バカに徹した馬鹿っぽい映画が好きという人にはオススメしときます。後悔はさせません。


 以前にも書いたが,ヴァンパイアという生物が本当にいるとしたら,これは人間の捕食者・天敵となるわけで,生態系として考えると実は必要な存在ではないかと思う(ゾンビも同様に,人間の捕食者ですね)。ヴァンパイアが人間を食料にするため,人間の数が増え過ぎないように調節してくれるからだ。要するに,鹿に対する狼と同じだ。日本各地で鹿の食害が続いているのは,人間がニホンオオカミを絶滅させたために鹿を食べる動物がいなくなり,食料があるだけ鹿が増えてしまったからだ。食物連鎖の頂点に立つ大型肉食獣がいなくなると,大型草食獣の数は自然な状態では調節不能になるのだ。

 以前,他のヴァンパイア映画で「血液中のタンパク質の量からカロリー数を割り出し,一日何人の血液を吸わないとヴァンパイアは生きていけないのか」という馬鹿な計算をしたことがあるが,もしも,「ヴァンパイア1人が1日一人の人間の血を吸う」と仮定すると「1年間で365人が犠牲になる」わけだ。つまり,「1年間で365人出生する集団」であれば,一人のヴァンパイアによって人口は平衡状態になるわけだ。

 もちろん,「ヴァンパイアに噛まれたらヴァンパイアになる」というお約束もあるが,噛まれた人間全員がヴァンパイアになったら,指数関数的にヴァンパイアが増えてあっという間に世界中の人間が絶滅し,その結果,ヴァンパイアたちも餓死することになるため,「噛まれてヴァンパイアとして復活する率」は低くなる方向に淘汰圧がかかることになるんじゃないだろうか。つまり,「昔は噛まれたらみんなヴァンパイアになっていたけど,最近では噛まれてヴァンパイアになれるのは全体の1%で,残りの99%は死んだままなんだよ」となるはずだ(・・・多分)。あるいは,ヴァンパイアが増え過ぎたら,「人間は襲わないが,ヴァンパイアのみ食料とする新型ヴァンパイア」が出現するかもしれないな,なんてこともあるかもしれない。


 というわけで,「ヴァンパイア=人間の捕食者」という見方をすると,案外面白いのである。

(2010/12/07)

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