《ソーラー・ストライク セカンド・メルトダウン "MELTDOWN:Days of Destruction"★★(2006年,アメリカ)


 以前、《ソーラー・ストライク》という映画を紹介しましたが、それとは縁もゆかりもない作品で、どうやらテレビ向けに作られた映画のようです。おまけに、《ソーラー・ストライク》より数段安っぽく、妙にお利口なふりをしている分,余計につまらないです。地球が軌道をずれて太陽に近づくという太陽系レベルでの変異による気候変動を描いたパニック映画のはずなんですが、予算の都合でそういう描写はほとんどなく、主人公様ご一行が地下道とかをチマチマ逃げるシーンに終始するため、ネタの割に画面がちゃちです。だから、サバイバル映画としてもパニック映画としても見るべきところがありません。やはりこういう映画は《デイ・アフター・トゥモロー》とか《2012》くらい派手に予算をかけないとダメなんだよね。

 主演のキャスパー・ヴァン・ディーンさん(ご存知、《スターシップ・トゥルーパーズ》の主演男優)、もう、こういうレベルの映画からしかお呼びがかからなくなったんですね。寂しい話です。


 舞台はほぼ現代。巨大な小惑星1個が地球に近づいていた。地球にぶつかる小惑星を探知して破壊するアメリカ政府機関は直ちに、小惑星を核爆弾で破壊する計画を立てる。研究者のネイサンはその計画に反対するが、ロケットは発射され、小惑星に命中する。しかし、小惑星は破壊されずに3つに割れ、1つが地球を直撃する恐れがでてきた。

 幸い、この破片は地球を直撃することはなく大気圏で跳ね返されたが、そのショックで地球は軌道を外れ、太陽に近づいてしまった。このため、地球全体の温度が上がり、ロサンゼルスの温度は数日で50度以上になってしまう。そして、世界各地で火事が多発し、水を求めてのパニックが起きていた。

 ロス市警の刑事のトムは、テレビのニュースキャスターをしている恋人の兄(実は、上記の研究者ネイサン)から北極基地への補給用飛行機が2日後に到着し、それに乗って北極に避難するという計画を明かされる。トムは恋人、ネイサン、そして別れた元カノとその娘(=トムの娘)を伴って飛行場に向かおうとしたが、途中で高い気温のために車は爆発炎上。暑さを避けて地下道を進むが、そこは無法地帯と化していて・・・という映画です。


 これまた、ツッコメないところが一つもないと言うダサダサ映画です。褒めるところが一つも見つかりません。せめてトムの娘さん(17歳)をもうちょっと可憐系の美少女にしてくれたらそこだけでも褒めたのに・・・。

 まず、登場人物がそれほど多くないのに、やたらと人間関係が濃ゆいです。トムの恋人のお兄さんが研究者のネイサンだった、というのはまだいい方で、トムの前の恋人(看護師さん)は別れた後に妊娠していることがわかって一人で出産し、そのため、娘は父親のことを快く思っていないし、おまけに、娘の恋人は前科があり、これまた刑事を快く思っていません。しかも、トムと元カノは仕事の上での知り合いなんですよ。と言うわけで、トムは元カノと現在の恋人と一緒に行動するわけですね。

 しかも、アメリカのパニック映画といえば「うまく行っていない家族が大事件に直面して生死の境目をさまよううちに、失われた絆を取り戻す」のが定石です。この映画でもトムは元カノと娘の絆を取り戻すんですが、そうなると割を食うのがニュースキャスターの恋人です。そういうわけで、この恋人がどのようにトムから離れていく過程が丁寧にというか、うざったいほど長々と描かれています。というか、観ている方からすると単なる時間稼ぎにしか思えないですけどね。


 この手のおバカ映画に科学的にツッコミを入れるのは余計かもしれませんが,やはり一言二言,言いたくなります。

 たとえば、大気圏ではじき飛ばされる程度の大きさの小惑星の破片で、地球の軌道が変わる訳がありません。いわゆる「運動量保存の法則」ってやつで、小惑星がいくら高速でつっこんできても、地球と小惑星では質量の差が大きすぎ、地球の位置は変わりようがありません。

 それと、地球が元の軌道に戻るのが早すぎ! 何しろ、「小惑星爆破⇒破片が地球直撃⇒地球の軌道が変わり灼熱地獄へ⇒元の軌道に戻る」までがたった4日間なんですよ。一応、「他の惑星の引力のバランスで、やがて地球は元の軌道に戻るはずだ」と説明されているんですが、それがわずか4日かよ! 万有引力の法則,知らねえな。


 「気温50度で車が爆発」ってのもひどいな。これが本当なら、インドやサウジアラビアでは車が全て爆発するはずじゃん。多分、映画の作り手は、日常的に気温が50度になる国がそこらにあることを知らないんじゃないでしょうね。そしてもちろん、気温50度がどういう状態なのかもわかっていないのでしょう。

 同様に、気温が60度に上がってから路上に放置された車のボンネットをトムが素手で触るシーンも大笑い。キャスパー・ヴァン・ディーン君、どんだけ厚い皮膚をしているんでしょうか。そういえば、映画の最初の方で日焼けのために顔が水疱だらけの患者が運び込まれてきたり、地下道でトムたちを襲ってくる連中も顔はヤケドしていますが、なぜかトムさんたちご一行だけは素顔で長時間炎天下を歩いていても発赤もできていません。皆さん、真っ白できれいな皮膚をしています。「面の皮が厚い」ってやつでしょうか。


 そういえば、冒頭のアメリカ政府機関もチャチで笑っちゃいますね。たった二人の討論で小惑星を爆破するかどうかを決めているわけで、君たち二人に地球の命運を決められても困るんだよね、という気がします。おまけに、予備の核弾頭も予備のロケットも準備していないため、1個の破片が地球を直撃することがわかっても、神様にお祈りすることくらいしかできない有様です。アメリカ政府機関なら核爆弾の3つや4つは準備しとけよ、という誰しも思うところです。

 ちなみに、北極に逃げよう、というのもおかしいですよね。北極は南極のような大地でなく氷の固まりですから、気温が上がったら海になっちゃって避難した意味がないと思うんだけど・・・。

 おかしいと言えば、トムたちが車で逃げるシーン。道路は車で一杯で身動きできなくなり、トムはわき道に入るんですが、このシーンは周りに車は一台もありません。オイオイ、あの車の群はどこに行った? 第一、わき道があるんなら、みんな、そっちに向かうんじゃないか?


 と、いろいろ書きましたが、まだツッコミを入れられるところが沢山ある、ナイスな映画です。小賢しくまともっぽく作っている分、余計にアラが見える、という典型的なダメ映画なんで、レンタルショップで借りてきてお酒でも飲みながら「アハハ、バカだねぇ」と笑って観るのにいいと思いますよ。

(2011/01/18)

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