《クラーケン "Eye of the Beast"(2007年,カナダ/アメリカ)


 絵に書いたような見所が全く一つもないクズ・モンスター映画。怪物がいるという伝説のある湖に本当に怪物がいたけど,なんとそいつはダイオウイカだった,という,腸捻転を起こした脳味噌で考えついたようなアホ設定でございます。映画の中に、「淡水にダイオウイカがいるんだって? バカも休み休み言え!」というセリフが途中に出てきますが,まさに観客全員の心の声を代弁しています。ダイオウイカを主人公(?)にするのなら場所は湖でなくて海でしょうが。映画を見ている限り,湖でなければいけない必然性はありません。強いて言えば,湖の方がロケが簡単だから・・・ということしか思いつきません。

 しかも,肝心のダイオウイカさんが悲しくなるくらいにチャチ! 全身をチラッと見せてくれるのは最後の最後になってからで,それまではイカの足,つまりゲソしか見せてくれません。しかもそのゲソが「チャチャッと1時間くらいで作っちゃいました」感で一杯なんですよ。Daily Portal Zでべつやくさんが作ったタコの足より完成度が低いです。


 舞台は北アメリカの東部にあるフェルズ島(Fells Island)。とは言っても,この地名をGoogleで検索しても出てきませんので,もしかしたら架空の地名かもしれません。

 冒頭,二人の馬鹿ップルが湖面のボートでイチャイチャしております。「モンスター映画,ホラー映画の冒頭でイチャイチャしている馬鹿ップルは3分以内に最初の犠牲になる」というお約束通り,ボートが巨大なゲソに襲われて沈んじゃいます。

 そして,フェルズ島の島民さんたちが登場。どうやら魚が採れなくて困っているようですが,先住民族の皆さんと白人住民さんたちが反目しあっているようです。そこに,調査のためにNORA(漁業資源調査局とか言ったな)から派遣されたのがリーランド博士。イケメン独身研究者です。そして彼を案内するのが最近保安官に昇進したばかりの若い女性。もちろん,仕事一筋だったらしく独身でございます。この独身同士が映画の最後でカップリング反応を起こすのはお約束ってやつですね。ちなみに女性保安官は先住民族と白人のハーフなんだそうです。

 そして,前の夜に男とデートに行った妹を探しにお兄ちゃん(先住民族)が「妹が帰ってきてないんだ」と保安官事務所にやって来ます。一方,独身博士は漁船に乗り込んで調査を開始しますが,冒頭のイチャイチャデートをしていた男の子が湖面に浮いているのを発見します。男の子はすでに虫の息ですが,死ぬ間際になぜかしっかりした声で「怪物にやられた。湖の主だ」と言い残して,ぽっくり死んじゃいます。そうこうしているうちに,浜辺を散歩していた一家のお父さんが音もなく忍び寄ったゲソさんにやられちゃいます。

 博士は少年と一緒に浮いていた船の破片に巨大な円形の歯型が付いているのを発見し,それが巨大なイカによるものではないかと推理し,NORAの上司に報告しますが,もちろん,「淡水にダイオウイカ? 寝言は寝ている時に言おうね」ってな具合で相手にされません。一方,女性保安官の過去も次第に明らかになります。7歳の時に父親とボートで釣りに行って,怪物に襲われて父親が殺されちゃう,という体験をしていたんですね。

 そうこうしているうちに,博士が最初に乗り込んだ漁船の船長さんが奥さんと港で「不漁の原因は本当は分かっているんだ」「でも,あなたが悪いわけじゃないのよ」ってな会話をしているときに,いきなりゲソくんが襲ってきて,船長さんを海に引きずり込もうとします。何とか足を切り落として助かりますが,船長さんはそのゲソの一部を酒場に持ち込み,「あの怪物は本当にいたんだ。やっつけに行こう!」と言います。そして,彼の漁船に博士と保安官たちが乗り込み,一方,一番最初に殺された女性の兄(先住民)たちももう一隻の舟に乗り込み,夜の湖に出航! 果たして彼らは怪物ダイオウイカをやっつけられるのか,そして博士と保安官はカップルになれるのか・・・というナイスな物語でございます。


 この要約を読んでもわかるように,ツッコミどころ満載でございます。イカは夜行性,と説明しているわりには真昼間に襲ってくるのはなぜ・・・なんて些細です。「ダイオウイカは深海に棲息しているが,この湖の環境は深海と同じだから生き延びられたんだ」って,この湖ってどれほど深いんだよ,というのもどうでもいいです。

 一番ダメなのが,怪物退治に男達が立ち上がる,ってのはいいとしても,まるっきり無計画に出発しちゃうこと。何しろ,湖に出てかなり時間が経ってから船長が博士に「ところでどうやって倒すんだ」って聞くんですぜ。オイオイ,それは出発前に聞くべきだろ。普通なら,ダイオウイカの弱点はこれだからこうやって倒そうとか,ダイオウイカの好物はこれだからこれでおびき寄せようとか,この計画が失敗した時のことを考えてこれも持って行こうとか,いろいろ話し合うでしょうが。その上で,武器になりそうなものをしこたま積みこんでから出陣でしょうが。

 一応,「イカは体内のアンモニアで浮いていて,筋肉は持続力がない。このため,水温の高い海面近くを引きずり出せば動けなくなる」という計画を立てて,2隻の船の間におびき寄せるんですが,それだったら丈夫な網とか強力なモーターとかを積み込まないとだめですよね。あるいは,象でも倒せそうな破壊力抜群の銃器を用意するとか,爆薬も積み込むとか・・・。

 案の定,「網に引っ掛ける計画」が呆気なく失敗するんですが,怪物がもうそこまでやってきていると言うのに,「なにか新しい手段はないか?」,「そうだ,電線はあるか? 高圧電流で殺そう」という相談を始め,船の照明などに使われている電線を剥ぎとってはモーターに繋ぐんだけど,肝心のモーターが故障しているもんだから修理とか始めちゃうわけですよ。オイオイ,怪物がすぐそこだって言うのに,間に合わねえよ・・・と,誰しも思うのですが,なぜかゲソくんはなかなか襲ってきません。チンタラチンタラ,乗組員にゲソをちょっと巻きつけたりして時間稼ぎをしてくれます。ゲソくん,空気読んでます。


 おまけに駄目なのが,船の乗組員が全然頼りになりそうにない連中しかいないこと。こういうモンスター映画では,男の中の男,これぞ海の男,という命知らずの野蛮系人種が必ず登場するんですが,そういう人物がいないんですよ。どうせ外角低めに逃げようとしているB級映画なんですから,せめて登場人物の一人くらいは魅力的なのがいないと駄目だと思うぞ。

 そういえば,水辺を舞台にしている映画なのに,ビキニ姐ちゃんは登場しないし,冒頭のイチャイチャ娘も着衣のままです。独身保安官ちゃんも私服になっても胸の谷間すら出しません。この手のB級映画としてはまれに見る品行方正ぶりでございます。教育上の配慮,ってやつでしょう。

(2011/04/29)

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