新しい創傷治療:ゾンビ・ナース

《ゾンビ・ナース "room 6"★★(2006年,アメリカ)


 この《room 6》というタイトルの映画に《ゾンビ・ナース》という邦題をつけ,しかもかなりエッチ度の高そうなDVDジャケットを着せたアルバトロス,いい仕事してます。ゾンビファンもスケベファンもどっちも騙してやれ,という心意気を感じさせます。

 おまけに,DVDジャケットのようなシーンはないし,色っぽいナースさんたちはゾンビというよりヴァンパイアみたいだし,しかも,ヴァンパイアみたいなナースさんは単なる端役に過ぎません。ううむ,恐るべしアルバトロス商法。
 ちなみに私は,ゾンビ映画でもなければナースがゾンビになるわけでもなく,DVDジャケットが嘘っぱちであることを承知した上でDVDを借りて観ています。

 ちなみに,映画そのものはオカルト系ホラー映画でして,「愛するってどういうこと?」みたいなテーマを真面目に追求した(つもりで作ったと思われる)作品でした。


 映画はいきなり,若い女性エイミーが「意識はしっかりしているのに体が動かない」状態で手術を受けるシーンから始まります。オイオイ,と思ったら彼女の悪夢です。

 彼女はボーイフレンドのヴァンダイクと一緒に暮らしている小学校教師ですが,彼から「結婚しよう」と告げられます。しかし彼女はなぜか,結婚に踏み切れません。

 一方,彼女はクラスの女児にも悩まされています。この子が悪魔のような顔を絵に描いたからです。そこで彼女を呼びだして話を聞こうとしますが,逆に「先生が悪夢を見るのは,昔,とても悪いことをしたからよ」と指摘される始末。しかも女児は自分の言ったことを覚えていないのです。

 一方,仕事が終わったエイミーをヴァンダイクが車で迎えに来て,ちょっとした口げんかになります。何とか仲直りをしたその瞬間,横から車が突っ込んできます。エイミーは傷一つ負っていませんが,ヴァンダイクは足を骨折。何とか救急車が到着し,彼を病院に搬送しますが,救急隊員は「規則でエイミーは乗せられない」と言い張り,行き先も告げずに走り去ります。仕方ないのでエイミーは近くに止まっていたタクシーを拾い,最寄りの病院に向かいますが,なぜか運転手は彼女の名前がエイミーであることを知っています。そして,病院に到着しますが彼の姿はなく,どこの病院に運ばれたのかも不明。

 途方に暮れる彼女に声をかけてきたのが交通事故を起こした相手方の男性。彼も「妹が怪我をしたがどこかに運ばれ行方が知れない」と話します。すると二人に浮浪者が近づき,エイミーに向かって「手を引け。彼は我々のものだ」と言ったかと思うと,いきなり顔が悪魔の顔に!

 一方,病院に運ばれたヴァンダイクは大部屋に入れられ,2人の患者と相室になりますが,一人の患者が「ここから早く逃げ出せ!」と言います。そして,どうやらこの病院では毎日大量に採血されていることがわかります。そしてその夜,病室で不思議な物音がして,翌朝,一人の患者の姿が消えます。ヴァンダイクは病院を抜け出そうとしますが,婦長に見つかり連れ戻されます。

 その頃,エイミーは「妹が消えた男性」と二人で警察署に失踪届を出しに行きますが,対応した警察官は彼女の話を聞こうとせずに門前払い。そしてこの女性警官の顔が悪魔の顔に一瞬変身。

 自宅に戻ったエイミーに,あの「悪魔の絵を描く問題生徒」の母親から「娘があんたに会いたがっている」と連絡が入り,彼女の自宅に急ぎます。そこで女子生徒の口から「あなたのボーイフレンドが捕まえられている病院は聖ローズマリー病院よ」と聞かされます。翌日,手がかりを得たエイミーは「妹が失踪した男性」と図書館に向かい,昔の資料を探します。なんとそこは70年前に火災で全焼した病院でした。しかも,その火事の際,病院の医師も看護師も全員焼死しているのです。おまけにその病院では悪魔崇拝が行われ,患者を悪魔に捧げる生け贄にしていたという事実が分かります。

 彼女は聖ローズマリー病院に向かうことを決意しますが,その時,「妹が失踪した男性」が登場し,それまでの親切そうな仮面を脱ぎ捨てます。なんと彼は○○だったのです。そして彼女に対し,「お前は私たちの仲間だ。12年前にお前がしたことでわかる」と迫ってきます。

 その後,いろいろあって,エイミーのトラウマになっている12年前の事件とか,ヴァンダイクの「意識があるのに身動きできずに手術される」シーンとか,実はこの事件全体は「○○が死ぬ間際に見た走馬燈」だったとか,そういう謎解きがあって,「すべてテストだったのね」という言葉を残して絶命・・・という映画でございました。


 途中まではストーリーを追って説明しようと思ったんだけど,内容が余りに「オイオイ」なため,途中で面倒くさくなっちゃいました。だって,この程度の真相を明らかにするためにここまで引っ張るか,という感じなんですよ。しかも,いかにも怪しげな思わせぶりの伏線を張りまくっていて,結局はあれだもんなぁ。確かに,最後まで見ると複線はすべて回収されていて(例:鏡に映る左顔面血だらけなのはなぜ,とか),そこらは丁寧に作っていると思うんだけど,なんか納得しきれないんだよね。

 多分それは,悪魔崇拝系オカルト映画だからだと思いますね。だって,悪魔を出しちゃったら「何でもあり」なわけで,あれもこれも全て悪魔が周到に張り巡らした罠だったんだ,ってなことになり,そりゃあ,全ての謎を解決するのはさぞかし楽だろうと思うのですよ。


 私は昔から「ホラー映画は好きだけどオカルト映画は嫌い」というスタンスで生きているんですが,それは両者が全く異なった論理をバックにしているからです。ホラー映画は得体の知れない何物かの怖さと不気味さを描いているけど,オカルトってのは最後は「神と悪魔」の二項対立になり,要するに宗教映画の範疇に入っちゃうんですよ。だから,悪魔の退治法は宗教(というか,ほとんどはキリスト教ですね)の教典の中にしっかりと書いてあったり,どうしようもなくなったら十字架振りかざすとか,お祈りの言葉を思い出せば何とかなっちゃうわけですね。その意味では,オカルト映画とは「宗教おバカさんが書いた模範解答」なんですよ。私がオカルト映画嫌いなのは,多分そういうところなんでしょうね。

 ヒロインが最後に「これはテストだったのね」というのも要するに,「死ぬ時に悪魔の誘いを受けるか断るか」というテストみたいな意味らしいのですが,これって誰が出題しているのでしょうか? 悪魔が出題するわけはないし(テストする前に魂をリクルートしちゃえばそれでOKですよね),出題するとしたら神様しかいないはずです。となると,死者の魂に対して神様が,「このテストに合格しなかったんだから,とっとと地獄に堕ちて悪魔の仲間になりやがれ!」と宣告するとしか考えられません。この神様,性格がすごく悪くないですか?

 というわけで,死んでからも試験をするこの神様に「悪人もて往生する。まして善人をや」というアジアの優しさと寛大さを学べと言いたいです。

 ・・・ってことは,死にそうな人を見つけた神様は「天国入社試験」を一人一人に課し,そこでパスすれば天国につれていき,だめな奴はその場で悪魔に下取りしてもらう,というシステムなんでしょうか? 警察官採用試験会場の出口でヤ○ザさんが網を張っていて,試験に落ちた人を組の構成員としてリクルートしていくみたいなもんですな。


 ちなみに,エイミーのトラウマとなった12年前の出来事ですが,エイミー・パパの状態からすると,コンセントからAC電源を抜いたくらいでは死ぬわけがないことは,映像を見れば明らかです。私はこの12年前のシーンを見て,「実はエイミーは自分が殺したと思っていたが,実は殺してなくて,真相は・・・」という展開になるのかと思ったくらいです。

 ちなみに聖ローズマリー病院ですが,「入院患者が時々行方不明になり」という時点で,普通なら警察の捜査が入りますよね。いくら70年前とはいえ,「足を骨折したお父さんが入院中に行方不明になったの。院長に聞いても婦長に聞いても誰も知らないのよ」なんて事件が立て続けに起きたら,真っ先にマスコミがかぎつけますって。この点で,この映画は初期設定の段階で無理がありすぎです。


 ヒロインのエイミーを演じるのはクリスティン・テイラーです。ナイスバディの美人ですが,いかんせん,演技がイモです。エイミーは最初から最後まで悲鳴を上げるか叫ぶか,どちらかなんですが,悲鳴を上げるシーンが全部同じに見えます。もうちょっと演技の上手い女優さんを使った方がよかったと思います。

(2011/05/10)

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