《ゾンビ・クラッシャーズ 最凶ヴァンパイア部隊》(2009年,アメリカ)


 何というか,映画の作り手の方々が楽しみながら作っていることはよくわかります。人間社会と共存しようとするヴァンパイアのライフスタイルとか,狂牛病がヴァンパイアに与えた影響とかいろんなことを詰め込んでいて,そこらのアクションホラー映画とはひと味違うんだぞ,というスタンスで作ったんだろうな,というメッセージは何となく感じ取れます。でも,プレゼンの仕方が悪いのか,映画作りの技術が拙稚というか独りよがりのため,見ている方にほとんど伝わってきません。要するに,意気込みは感じられるけど空回り,ってやつですね。
 多分,プログラミングそのものは正しいけど初期設定がおかしいんですね。


 ストーリーはこんな感じだったと思います。

 湖畔でバカンスを過ごそうと5人の若者(男2人,女3人)が車で向かっています。彼らはモーテルに到着しますが,なぜかそこは無人で呼んでも誰も出てきません。しょうがないため,「後でお金を払えばいいわよ」ということで勝手に鍵を開けてちゃいます。もちろん,3人の女性は湖で遊んだり,シャワーを浴びたりしてくれます(いわゆるお約束のサービスシーンですな)。ところが,ベッドに横になっている女子一人が血だらけの子供に襲われます。悲鳴を聞きつけて皆が集まってきますが,子供は姿を消します。そしてその夜,ゾンビが襲ってきます。

 そこに,5人ほどからなる謎の武装集団が現れ,ゾンビたちを撃ち殺してけちらします。彼らは若者たちと合流しますが,若者2人が感染を起こしてゾンビになって襲ってきたため2人を射殺。そして,感染を起こしてゾンビになったと説明します。

 そして,武装集団の1人が感染し,ゾンビを巻き込んで爆死。そして,若者集団は女子一人を残して殺され,また,妻とはぐれたマッチョ男も合流し,武装集団は自分たちが「ナイト・ウォーカー」,すなわちヴァンパイアだと明かします。彼らヴァンパイアは人の血でなく牛の血を吸うように進化して人間社会と共存を計っていましたが,狂牛病の牛の血を吸ったヴァンパイアたちが感染してゾンビのようになったのでした。そして,バイキングの時代から重傷を負った戦士の命を救う代わりにヴァンパイアとして味方に引き入れてきたという歴史も説明されます。そして,傷ついたヴァンパイアの一人を助けるため,一人生き残ったお姉ちゃんは自分の血を吸わせ(牛の血じゃ助からないけど,人間の血を飲めば助かるのだ),彼女はヴァンパイアになります。

 そして,ゾンビ化したヴァンパイアたちの巣がモーテル近くの廃坑にあることが判明し,そこを襲って一気にカタを付けることにします(この時点で,生き残っているヴァンパイア戦士3人,ヴァンパイア化した姉ちゃん1人とマッチョ1人)。そして廃坑に入りますが,ゾンビの数が多すぎ,逆に襲われてしまい,5人は絶体絶命の危機に!

 そこに,パワーアップした(と思われる)ヴァンパイアのリーダーが大勢の仲間を連れてきて,ゾンビを撃ち殺し,さあ,これからゾンビどもを残らず地獄送りだ・・・というところでエンディングを迎えるのでございました。


 あらすじをきちんと説明したつもりなんですが,全然わからないでしょう? とにかく,いろんな要素を盛り込めるだけ盛り込んでいて,これで90分映画に収まるはずがないんですよ。この世界観(ヴァンパイアは牛の血を吸うことで人間と共存を計った。古代から強力な戦士を助けてはヴァンパイアの戦士としてチームを作ってきた。狂牛病の牛血液を介してヴァンパイアたちにゾンビ病広がっている・・・)を説明するためには,最低でも2時間半は必要だし,場合によってはシリーズ化を考えるべきです。

 実際,この映画のエンディングは完全に尻切れトンボで,さあ,これからどうなるんだろうか・・・というところで突然終わってしまいます。まさか続編を作ろうと思ってんじゃないだろうか? 作っても誰も観ないと思うけど・・・。


 映画タイトルはゾンビとなっていますが,この説明でわかるとおり,ヴァンパイア映画です。だから,ゾンビ映画のお約束ともいえる「内臓グチャグチャお食事シーン」はないし,人間にゾンビが群がってくるシーンもありません。ゾンビ映画だと思ってみると肩すかしを食います。


 この90分映画の80%は銃撃シーンです。最初の「湖で泳いじゃいましょ」シーン(とはいってもブラをつけたままね)とシャワーシーン(といっても背中だけね)を除くと,後はひたすら撃ちまくるシーンばかりです。しかも,ゾンビ化したヴァンパイアは武器を持たずに走って襲ってくるだけですから,敵をどれだけ撃ち殺せるかを競うテレビゲームを観ている感じで,途中で飽きてきます。

 映画の作り手の方もこれじゃダメだなと気づいたらしく,そこで過去の回想シーンを入れます。バイキング同士の抗争シーンとか,アメリカ西部開拓時代の銃撃戦シーンとかをセピア調の画面で挿入するんですが,これがやたらと長いです。おまけに,このセピア調回想シーンも基本的には戦闘シーンばかりですから,やはり飽きちゃいます。

 しかも,襲ってくる方も迎え撃つ方も元々はヴァンパイアですから日光に当たると死んでしまいます。だから,襲ってくるゾンビ化ヴァンパイアもヴァンパイア戦士側も行動できるのは日没以後となります。いきおい,暗いシーンが多くなり,何をしているんだかよくわからないシーンが多いです。


 そうそう,「夜のシーンのはずなのに,車に乗り込むシーンは昼間の明るさ」という《死霊の盆踊り》以来のお笑いシーンが何ヶ所かありましたね。もしも続編を作るなら,こういうところにも注意を払いましょうね。

 というようなヴァンパイア映画でした。ヒマでヒマでしょうがない,という人だけご覧ください。

(2011/07/07)

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