《26世紀青年 "IDIOCRACY "★★(2006年,アメリカ)


 「26世紀,人類は知性が退化して皆アホになり,環境問題も食糧問題もゴミ問題も解決できなくなっていた」というかなりブラックな内容のコメディー映画でございます。しかし,その「アホがアホを支配するアホ社会」の描写が「現在のアメリカ」をちょっとだけ(?)極端にしただけだったため,アメリカでは全くウケなかったそうです。

 基本的な発想は悪くないし,非常にスルドイ指摘があったりしてそこそこ面白いのですが,多分アメリカ以外の国で作っていればもっと面白くなったんじゃないかと思われますね。「アメリカ人の考えるアホ」の姿があまりにも単細胞的ワンパターン馬鹿すぎて,あまり笑えないし,おまけに,アメリカ映画特有の「下品な下ネタ」のオンパレードで飽きてきます。他の国でリメイクしたら,もっといい作品になるんじゃないかと思います。

 ちなみに原題は "IDIOCRACY" で,「アホ,バカ」の意味の "idiot" と「政治」の "cracy" を組み合わせた造語のようですが,どっかの国の有名映画をパクった邦題の方が遙かにセンスがよろしいです。


 最初の舞台は2005年のアメリカで,国防総省は人間を冬眠状態にする極秘実験をしていた。そこで実験台に選ばれたのが兵士のジョー(ルーク・ウィルソン)と売春婦のリタ(マーヤ・ルドルフ)の二人だった。この二人が選ばれた理由は簡単で,天涯孤独で死んでも誰からも文句が出ず,しかも,全てにおいて平均点,全てにおいて平凡だったからだ。そして二人は棺桶のようなスリープマシーンに入りスイッチが入れられる。そして二人は1年間,眠りにつく予定だった。

 だが,その極秘実験の責任者が麻薬不法所持で逮捕されてしまい,秘密実験室は撤去され,二人が眠るスリープマシーンはゴミと一緒に放置され,それに気付く人もいなかった。

 そして,西暦2500年,ジョーは500年ぶりに目を醒ましたが,そこは変わり果てた世界になっていた。頭のいい人類は絶滅し,アホしかいない世界だったのだ。なぜそうなったのかというと理由は簡単。頭のいいカップルは仕事が忙しくて子供を作らず,一方,アホカップルは性欲だけは強くて子供をポコポコ作ったからだ。アホカップルの子供はアホに育ち,お利口カップルからは子供は産まれない。かくして,世界もアメリカもアホだらけの国になった。そんな世界で凡人ジョーとリタが目覚めたのだ。

 ジョーは身分を証明する刺青がないことからすぐに逮捕され,刑務所に入れられたが,そこで知能検査を受けたため超天才であることがわかってしまう。何しろ,数が数えられるのだ! そして,アメリカ大統領は山積する難問(食糧不足,環境破壊,ゴミ問題・・・)を解決するエースとしてジョーを大臣に任命する。

 問題を解決する方法を思いついたジョーはそれを実行に移すが,彼以外のアホにはなぜその方法で作物がとれるようになるのか理解してもらえず,大統領はジョーを処刑しようとする。しかし,一度ジョーに助けられたことを恩義に感じていたリタは彼を助けようとして,ある作戦を立てるが・・・という映画でございます。


 26世紀のアメリカ人,アホです。水道を捻ると水でなくゲータレードみたいな緑色のスポーツドリンクが出る世の中になっているため,ゲータレードをがぶ飲みし,フライドポテトばかり食っています。テレビで一番人気のある番組は「タマが痛え〜!」というキンタマをけ飛ばして痛がらせるという番組だし,その年のアカデミー賞を総なめにした映画は《Ass》で,これはケツの映像を延々と流すだけなのにそれでも観客には大ウケ。

 アメリカ大統領のカマーチョ(テリー・アラン・クルーズ)は格闘技世界チャンピオンにしてポルノ俳優という輝かしい経歴を誇り,国会の場でアホたちに自分の演説を聞かせるためにマシンガンをぶっ放します。町のあちこちで見かけるスターバックスみたいな看板の店は実は風俗店のチェーンで,「ラテ」というのはすご〜くエッチなサービスをしてくれることらしいです。おまけに,国民の半分はゲータレードの会社で働いていて,自分たちが作ったゲータレードをがぶ飲みすることで何とか経済が回っているという状況のようです。

 ちなみに,ジョーが受けた知能テストの最難問は「7.5リットル入るバケツと18リットル入るバケツがあります。バケツは何個ありますか?」でした。この問題を考えたやつ,偉いなぁ!


 多分,アメリカ人が考える「アホ」ってこういうものなんでしょうね。というか,コーラをがぶ飲みしてフライドポテトとハンバーグを馬鹿食いし,「ケツ,オナラ」を連発する下品系のコメディーが大好き・・・って,どっかの国そのまんまじゃん。これで「26世紀のアホだらけになったアメリカの姿はこうなんだぜ」と言われても,そりゃアメリカ人は戸惑うだろうなと思うのですよ。「今の俺たち,そのまんまじゃね?」って,笑うに笑えなかったろうなと想像されます。だから,この映画はアメリカで全然受けなかったのでしょう。

 おまけに,カマーチョ大統領にしたって「格闘技チャンピオン」を「ボディービルのチャンピオン」に,「ポルノ映画の有名俳優」を「ハリウッドアクション映画で有名な俳優」にすると,どっかの州知事さんになっちゃいます。これは笑えないと思いますよ。


 農作物の不作の原因が「畑に水でなくゲータレードを撒いていたから」というのは笑えますが,「畑にはゲータレードを撒くもの。水はトイレを流すためのもの」と生まれた時から教えられていれば,まさかゲータレードを撒いたために作物が育たないなんて誰も気がつかないでしょうね。何しろ26世紀人は「体に必要な電解質を含んでいるゲータレードが体に一番いい。植物が生きていくにも電解質が必要だからゲータレードを飲ませてあげよう」と教えられてきたのです。それに対し,ジョーは「植物にはゲータレードでなく水が必要」と説明するんですが,アホさんたちはどうしても理解できません。そこでジョーがどう説明したかなんですが,これは大笑いでしたね。

 あと笑えたのが,ジョーが病院を訪れて,ジョーが訴える症状をタッチパネル(このアイコンが秀逸!)で入力していくと治療が決まっちゃう,というシステム。実際の医者がしていることって,こんなもんじゃないのという皮肉が効いています。

 それにしても,水道からゲータレードが出てきて水代わりに飲み,赤ん坊のほ乳瓶の中にもゲータレード,というのは実はこの世の中で現実に起きていることです。一時,ペプシが「水道からペプシ」計画を考えていたことは有名ですが,水道事業を「官から民に」移行した途上国では水よりコーラが安くなり,水が買えない母親は赤ちゃんのミルクをコーラで溶いて飲ませていたのです。


 もちろん,所詮はB級,C級映画なんで作りはかなりテキトーです。誰でも違和感を感じるのは,畑にゲータレードを撒くようなおバカさんしかいない社会って維持できっこないよね,という点だと思います。ゲータレードの会社にしたって,生産ラインが故障しても修理できないだろうし,ゲータレード水道の保守点検も大変そうだし(・・・というか,水道官の中が栄養豊富なゲータレードですから,短時間で細菌が大量発生しすぐに食中毒発生だろうな),とてもじゃないけど社会はすぐに崩壊するだろうと思うのですよ。第一,このアホさんたちでは電力を作ることもできないのではないかと思われます。

 ちなみに,エンドロールの後にすごいオチがあります。なるほど,ここでこいつが登場か。何度も名前を連呼していた意味はここにあったわけね。これはお見事! 何だか続編が観たくなりますね。


 というような,アホ馬鹿映画です。期待しないで見ればそこそこ楽しめるかな,というレベルでございました。

(2011/07/15)

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