新しい創傷治療:検屍官 アイ・オブ・ザ・デッド

《検屍官 アイ・オブ・ザ・デッド "Messages"★★(2006年,イギリス)


 これは配給会社のニューセレクトが,検屍官が登場することしか共通点がない別個の映画を「検屍官シリーズ」と売り出したものの第3作目とのことです。ちなみに、前の2作は観たことがありません。

 オカルトっぽいサスペンス映画ですが、地味でさしたる見所もない作品でした。目玉がえぐられた死体さんの様子がちょっとエグいのと、無理矢理で強引な犯人探しだったなぁ、という印象しか残ってません。


 舞台はイギリスのどっかの田舎町。冒頭、中年女性が車を運転してハンドル操作を誤り、車の外に放り出されて死亡するシーンから始まる。これが、本編の主人公、検屍官マレー先生の奥様キャサリンさん。

 その事故から8ヶ月後、町では連続猟奇殺人事件が起きて大騒動。既に4人が殺されていて、犠牲者は若い女性ばかりで、全身に傷があり、しかも両眼がえぐられていたのだ。そしてどうやら、彼女たちは首を絞められて殺され、死んでから体が切り刻まれたことが明らかになる。そしてその朝、5人目の死体も発見される。そこでアメリカから派遣されたベテラン刑事とプロファイリングの専門家である心理分析官も加わり、地元警察と協力して捜査が進められる。

 一方、妻の突然の死からなかなか立ち直れないでいたマレーも、次々と運ばれる事件の犠牲者の検死に忙しい毎日を送ってたが、彼は酒が手放せなくなってしまった。そんなある晩、突然パソコンのディスプレーにスイッチが入り、「Help Me!」という言葉が表示される。その日から彼の身の回りには不思議な現象(新たな犠牲者の名前が曇った窓ガラスに書かれている、など)が起こり始め、亡き妻が変わり果てた姿で登場する悪夢にも悩まされるようになる。

 そのうち、警察の捜査線上にマレーが浮かんでくる。犠牲者のうち数人と顔見知りであり、犠牲者の体から手術用手袋の粉(タルク)が付着していることが発見されたからだ。そしてマレー自身も、記憶を失うまで酒を飲むことが多く、自分の行動に自信が持てなくなる。

 そして、マレーの不倫相手が死体で見つかったことから彼は犯人として追われることになり・・・という映画でございます。


 要するに、「連続猟奇殺人事件の犯人は誰か?」というよくあるタイプの推理物なんですが、その方面での面白さは全くありません。観客が推理を働かせる助けとなる証拠とか伏線がほとんどないからです。もちろん、主人公のマレー先生が犯人というのは絶対にないわけで、他に犯人がいるわけです。となると、登場人物で怪しいのはマレー先生の上司と司祭とあと数人くらいに絞られてしまいます。なぜかというと、きちんとセリフが割り振られている登場人物の男性がそんなに多くないからです。

 そこで最後に真犯人が明かされるのですが、これが何とも「オイオイ、こいつは最初から怪しかったけど、証拠はこれかよ!」という物証しかないんですよ。確かにこのブツはキャサリンが最初の方で身に付けていたものだけど、地味でそこらで普通に売っている安物にしか見えないんですよ。こんな物で「動かぬ証拠」と言われても困るんだよね。

 しかも、真犯人が連続殺人を犯すに至った動機もまた「オイオイ」というものだったし・・・。それと、犯人が目玉に固執した意味も最後までよくわからなかったし・・・。


 さらにいえば、主人公が検屍官である、という設定も全然生きてません。検屍官として犯人探しの手がかりを見つけるでもないし、警察捜査に協力するでもないのですよ。早い話、経済学教授のマレーでも新聞記者マレーでもバーテンダーのマレーでもよかった気がします。

 あと、アメリカからわざわざ呼び寄せられたベテラン刑事ってのが余りに類型的な「アメリカ刑事」なんで笑っちゃいます。杜撰で強引な推理から「犯人はマレーに決まっている」と結論づけるのですが、これが何ともムチャクチャです。穿った見方をすると、警察がマレーを犯人としないと最後のどんでん返しができないために強引な推理をする刑事が必要になり、「強引で杜撰な捜査といえばアメリカンに決まってる」というわけで登場させたとしか思えません。それにしても、こいつを「アメリカの刑事の典型」って言ったら、アメリカ人、怒るだろうなぁ。


 あと、登場人物がやけに中年ばかりで華がないです。マレーと彼の元カノのプロファイラーが「学生の頃からもう15年よ」と会話していることから、二人は30代半ば過ぎであることがわかりますが、マレーさんはどう見ても40代半ばくらいにしか見えないし、プロファイラーさんも30代後半より少々お年を召しているようです。主人公のマレーは中年の魅力があるようにも見えないんですが、なぜか奥さんが死んでからモテモテ状態です。これこそが、この映画最大の謎ですね。

 ちなみに、途中で殺される酒屋のレジのお姉さんはさらに年上のように見えます。熟女好きにはたまらない映画かもしれません。

 最後のシーンでは窮地に追い込まれたマレーの前に妻キャサリンの亡霊が登場するんですが、これが問題解決をするってのはあまりじゃないでしょうか。犠牲になった女の子たちの亡霊が真犯人に○○しちゃってエンディングを迎えますが、これがありだったら何でもありになってしまいます。早い話、犯人探しのサスペンスにする必然性すらなくなってしまいますね。最後に亡霊さんが解決するんですから。


 というわけで、「土曜日の夜、たまたま付けたテレビでやっていたから暇つぶしに鑑賞」という程度なら腹は立たないけど、「レンタルショップで面白そうなDVDジャケットに惹かれて借りてみた」なら腹が立つ、というような感じの映画でした。

(2011/08/05)

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