《処刑山 デッドスノウ》★★★(2007年,ノルウェー)


 世界各地のゾンビ映画を紹介してまいりましたが,今回のはノルウェー製ゾンビ映画です。しかも,スプラッター度がちょっとハードだけどその実体はホラー・コメディー,という絶妙なスタンスの作品となっています。基本的に物語のテンポは速いし,次から次へとアイデアの詰まった映像が飛び出すし,かなり笑えるシーンや気の利いた会話はあるしと,私は結構楽しめました。


 ストーリーはこんな感じ。

 ノルウェーといえば作曲家グリーグ,グリーグといえば『ペール・ギュント』というわけで,軽快に演奏される同組曲の『魔王の宮殿にて』をバックに一人の女性が必死で森を逃げ回るシーンで始まります。

 そして,場面がいきなり変わって男女7人組が登場。どうやら休暇を利用して雪山のロッジで過ごすつもりのようです。ちなみに男4人は医大生(イケメン風マッチョ君,真面目なメガネ青年,痩せ型の若ハゲ,おデブ君),女子3人はいずれも北欧美人だけど身分不明となっていて,イケメン君と女子1名がカップルで残りはフリーという組み合わせのようです。ロッジに到着した7人は早速,酒を飲んだりゲームをしたりと楽しんでおります。ただし,エッチ方向には行動しませんので,期待しないように。

 すると突然,一人のおっさんがロッジにやってきて,「コーヒーをくれ」といいます。そして「実はもう一人女子が来るんだけど,トレッキングをしながらここに向かっているんだ」と聞くと顔色が変わり,「そいつはまずいな」と,この地方に伝わる不吉な噂を話し始めます。

 第二次大戦末期,この地域を占領していたナチスドイツはドイツの敗戦が近いことを知り,逃走のために悪逆非道の限りを尽くして村人の金品財産を略奪します。しかし,村人たちも蜂起し,ドイツ兵たちに襲いかかり,ナチスの将校ヘルツォークとその取り巻きがかろうじて脱出してこの森に逃げ込んだのです。そして現在でも,彼らの生死は不明のままでまだ生きているという噂が・・・というような話です。そして,話し終えたオッサンはロッジを出ていきます。

 一方,青年たちは「あのオッサン,何言ってんねん」という感じですが,一人が床下から金銀財宝が入った箱を見つけてしまいます。どうやら,例の「ナチスの財宝」のようです。その頃,遅れていた女子一人が到着し,窓の外に彼女の顔が見えますが,その瞬間,首がスポーンと切り落とされます。そして,ナチス・ゾンビたちの容赦ない攻撃が始まるのでありました・・・という映画でございます。


 この映画のナイスなところは,早い時期に「生き残りメンバー」となった男子と女子が果敢に戦いを挑み,行動することです。普通のゾンビ映画なら「応援が来るまで待つべきよ」という立て籠もり作戦が選択されることが多いのですが,この映画の若者たちは無謀にも撃って出ます。ロッジに残った男女4人が二手に分かれ,「俺たち二人はゾンビどもを引きつけるから,君たちは走ってフィヨルドのほとりまで行き,乗ってきた車で助けを呼んできてくれ」という(無謀な)作戦を立てるのですが,その潔さが結構いいです。

 女子二人は走って逃げますが,もちろんゾンビに追いつかれ,一人はやられますが,もう一人は絶対に諦めません。一方,男子2人組はいろいろあって一軒の納屋を見つけますが,そこでチェーンソーやらオノやら武器になりそうなものを見つけ,ゾンビどもに立ち向かいます。そして,ゾンビの数が余りに多く,もうダメかと思ったそのとき,最初の方でスノーモービルに乗ってロッジの外に出た一人が,なぜかマシンガンを見つけてスノーモービルに搭載して助けに駆けつけるのです。相手がゾンビということもあり,青年たちはバッサバッサとゾンビどもをなぎ倒していきます。ここは爽快ですね。


 あと,ゾンビに噛まれたイケメンマッチョ君に対し,若ハゲ君が「お前は噛まれてもゾンビにならないよ。だって奴らはナチス,お前のじいさんはユダヤ人じゃないか」というシーンには大笑い。でも,このユダヤ青年は死んでもナチスの仲間(であるゾンビ)になるものかと,チェーンソーで自分の腕を切り落としちゃうのです。「俺,腕の切断の仕方習ったから大丈夫」だってさ。ノルウェーの医大生,根性があります。

 男子のおデブ君は予想通りに早い時期に犠牲になりますが,その前にトイレ(トイレはロッジ内の外にある)の中で,一番美形の女子がトイレに入ってきて「トイレ・エッチ」ができたんだから,殺されても文句は言わないでしょう。それにしてもこの女の子,おデブ君のウンコのかほりが気にならないほど発情していた模様です。ちなみにこのおデブ君の殺され方はすごくエグいです。気の弱い人は観ない方がよろしいかと。


 謎と言えば,最初の方に登場して,青年たちに「この山にはナチスの悪霊がいるんだ」と教えてくれたオッサンの行動です。そういう危ないのがいるとわかって,なぜテントを張ったんでしょうか? 自分で「ここでは怖いことが起こるぞ」って警告しておいて,自分が最初の犠牲者になっちゃダメでしょうが。

 笑えたと言えば,崖から落ちそうになった男子が,ゾンビ兵の腹から出てきた腸管に掴まってザイル代わりに宙吊りになるシーン。この「腸管ぶら下がり」は他のゾンビ映画でも観たアイデアだけど,立木とゾンビと崖をうまく使っててナイスでございました。


 そんなわけで,決して万人にお勧めできる作品ではありませんが,グロくてもなんでもいいから,バカに徹しているゾンビ映画が好き,という超ニッチなファンのみご覧ください。多分,大満足でございますよ。

(2011/08/22)

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