新しい創傷治療:ハプニング・ゼロ 〜人間消失〜

《ハプニング・ゼロ 〜人間消失〜 "Artefacts"★★(2007年,ベルギー)


 新進気鋭のベルギー人映画監督の作品らしいのですが、これが何とも「訳わからんぞ」映画でございました。若い映画監督が乏しい予算をやりくりしてでも斬新な映画を作りたかったんだろうな、という意気込みは感じるし、そういう若者の姿勢は温かく見守ってやろうじゃないか、と応援するのはやぶさかではございませんが、ここまで訳が分からない作品になってしまうと、レビューを書こうとする意欲すらなくなります。


 若き女性社長ケイトはある日、長年の親友であり共同経営者でもあるブレンダがビルの屋上から着き落とされる夢を見る。そして翌日、彼女の元に警察から「ブレンダが殺された」という電話が入る。そして警察は、彼女が何者かと争った末に転落したと説明した。

 そしてケイトは、事件当日のビルの監視カメラをチェックするが、ビルのエレベータにブレンダが乗り込んだ直後、彼女と瓜二つの女性がビルに入り、エレベータに乗り込む様子を見て仰天! そしてその頃、ケイトの仲良しグループのフレデリックやキャロルまでが不可解なしを遂げていた。そして、ブレンダの死を報じるテレビのニュースで、彼女の左肋骨の裏側に金属の機械が埋め込まれていたことを知る。そんな混乱するケイトの目の前に自分で瓜二つの女性が出現し、彼女を襲ってきた。

 何とか逃げ出すことができたケイトは、分かれたばかりの恋人マイクに助けを求め、彼のアパートに行き、合い鍵で部屋に入るが、そこでマイクやブレンダたちとの出会いを思い出そうとしても全く思い出せないことに気付いてしまう。親友や恋人との具体的な思い出が何一つないのだ。やがてマイクが帰ってくるが、実はそれは本物のマイクではなく・・・という映画でございます。


 70分ちょっとの短い映画なんですが、展開のさせ方が悪くてテンポが遅いため、途中で何度もウトウトしてしまい、そのたびに巻き戻しボタンを押す羽目になりました。ちょっと疲れていたら、絶対に爆睡してましたね。そのくらい強力な睡眠作用を持っています。

 要するに、自分と同じ顔をしたやつが自分を殺しにくる、ということなんですが、それだとホラー系かSF系の二つしか可能性はありません。途中まではホラー系かなと思っていたのですが、「肋骨裏の金属の機械」が登場したあたりでホラーでなくSFであることがわかります。となると最後は「宇宙人が何かの実験のために・・・」という種明かしがあるんだろうな、と予想がつけられるのですが、なんとこの映画は最後の種明かしがないまま、終わっちゃいます。一応、最後の方で「君たち6人は人類とは何かを調べるために選ばれたんだ」というようなセリフがあるんで、これは多分、宇宙人が仕組んだのだろうなと予想はつきますが、説明はこれだけ。

 もっとも、この低予算映画でさらに宇宙人を登場させるとしたら着ぐるみの情けなくて安っぽい宇宙人になってしまうでしょうから、宇宙人を最後まで見せなかったのはある意味正解といえますけどね。


 とはいっても、観察対象の人間の体内に探知機と思われる金属を埋め込んで、そっくり宇宙人さんが殺しに来るのはなぜなのかもわからんし、偽の記憶を覚え込ませて仲良しグループを作らせたり、会社を作らせる意味も不明。「人類を観察するため」だったら、もっと別の方法があるんじゃないでしょうか。しかも、観察だけなら殺す必要はないし・・・。

 ケイトが「体内、謎の金属」でネット検索すると、同じような人が多数見つかるというのも何だかなぁ。腹部に傷がないのに埋め込まれたわけですから、これらの人たちは健康診断で胸部レントゲン写真を撮った際に「俺の体に金属が!」って分かっちゃったのでしょうか。しかも、裏の事情を知っていそうな医者の名前まですぐネットで見つかっちゃうしなぁ・・・。さすがの宇宙人も、地球のネット検索の威力は想定外だった模様です。


 それと、新進気鋭の映画監督という割には、画像がやけに暗くて、何となく昔の白黒映画っぽい感じです。そのため、なにが起きているのかよく分からなかったりします。それと、何かあると登場人物をクローズアップするのも素人っぽいというか昔っぽい感じを抱かせます。わざとねらったという可能性もありますが、なぜに古めかしい映画を装うのか理解できません。

 そして、この映画で一番問題なのがラストシーン。ここで宇宙人の手下みたいなお兄ちゃんがケイトに、「私はずっと君を見ていたんだ。君は美しい」と言うんですが、これは無理っぽいです。なぜかというと、ヒロインのケイト役の女優さんは「誰が見ても納得する美女」ではないからです。28歳という設定の割には何だかおばさんっぽく見えるし、目鼻立ちは整っているんですが、思わず振り返りたくなるほど魅力的というわけではないからです。このケイトちゃんに向かって「君は美しい」はないだろと思いますね。もちろん、ケイトちゃんが「宇宙人好みの美人」だった、という可能性はありますけどね・・・。でもこの映画は地球人向けの作品なんですから、地球人が美女と認める若い女優さんを使うべきだったと思います。


 というあたりで、もう書くことがなくなっちゃいました。そういうベルギー映画です。

(2011/08/26)

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