《クラーケンフィールド HAKAISHIN "Kraken: Tentacles of the Deep"★★(2006年,アメリカ)


 皆さん,覚えてますか? 数年前にちょっとだけ話題になった《クローバーフィールド HAKAISHA》っていう映画のこと。今回の《クラーケンフィールド HAKAISHIN》は《クローバー》とまったく関係がないのにタイトルとDVDジャケットで騙しちゃえというコバンザメ商法,コバンザメ映画でございます。ちなみに,DVDジャケットには自由の女神が崩れるような絵が書いていますが,こういうシーンは全くありませんので,騙されないように。

 これは,昔からよくある「イカ・タコ映画」の一つで「巨大イカ・パニック映画」です。巨大イカがチャチな点と,ストーリーに全然工夫がない点と,登場人物に魅力がない点に目をつむれば,そこそこ観られるという感じです。じゃあ,どこに見所があるの,と聞かれると困っちゃいますが・・・。


 海洋写真家のレイ(チャーリー・オコーネル)は幼い頃,両親とクルージングの最中に巨大イカに襲われて両親を殺されるという過去を持っております。そんなある日,デサレーション・パッセージというどっかの入り江(?)で海洋調査中のニコール博士(ビクトリア・プラット)のチームが巨大イカに襲われそうになったというニュースを聞き,ニコールの船を訪ね,調査に同行することになります。

 ニコールはギリシャ神話に登場するお宝の行方を追っていて,「トロイ戦争で使われていた黄金のマスク」を積んだ船が数百年前に沈没したというこの海域を調査していて,その最中にイカに襲われたわけです。そして彼女はついにそのマスクを発見しますが,そのお宝を横取りしようとねらっているギリシャ系マフィアのマックスウェル(ジャック・スカリー)ってのも登場します。

 レイとニコールは次第に親しくなり,レイは両親が巨大イカに殺されたことを明かします。そして,世界のあちこちに出没する巨大イカは普通の生物ではないのではないかという推理を披露します。それを聞いてニコールは,それはギリシャ神話の「伝説の宝石を守るスキュラ」だろうといいます。そして,黄金のマスクの近くにその「伝説の宝石」もあって,それを守るためにスキュラが宝石を積んだ船を次々と襲ったのだろうと考えます。実は,マックスウェルの本当の狙いはこの宝石だったのです。

 マックスウェルはニコールの捜索を妨害するためにニコールの船を爆破します。しかし,レイは新たな船を購入して彼女にプレゼントし,宝探しを続けます。そして,沈没船を舞台にレイたちとマックスウェルの宝石争奪戦が始まりますが,そこに巨大イカが襲ってきたからさぁ大変・・・という映画でございます。


 とにかく,ツッコミマニアにはすごく嬉しい映画です。

 まず,モンスターの造形が前近代的で微笑ましいです。海中での動きは全てCGですがなんかギクシャクしています。船にいる人間を襲ってくるゲソはそれ以上に出来が悪いです。1970年代の安物モンスター映画みたいで懐かしいです。

 ちなみに,スキュラ(Skylla)はギリシャ神話に本当に登場する怪物ですが,神話によると「上半身は美しい女性,下半身は6つの長い首を持った犬の頭と,12本の足になっている」とあります。スキュラちゃんのお住まいは「シシリア沿岸のメッシーナ海峡にある洞窟」で,通りかかった船を襲っては船員をパクパク食べていたんだとか。オイオイ,スキュラって全然イカじゃないっすよ。しかも住んでいるのは地中海じゃん。それがなんで世界中に出没しちゃうの? しかも,「伝説の宝石」なんてギリシャ神話にはでてこないぞ。なんでニコールちゃんは巨大イカをスキュラと勘違いしちゃったんでしょうか。彼女,本当にギリシャ神話の研究家なんでしょうか?


 さて,ヒロインともいうべきニコールちゃんです。熟女というほどではありませんが,少々,お年を召していらっしゃいます。胸の谷間はそこそこご立派ですが,取り柄はそれだけですね。もう一人出てくる「女子学生」も胸の谷間はいいとしても,女子大生にしてはちょっと老けています。海洋モンスター映画なんですから,もうちょっとピチピチの巨乳系女子学生役を選んで欲しかったですなぁ。

 主人公のレイですが,結局この人が何をどうしたかったのかよくわかりません。両親を巨大イカに殺されたという過去があるので「あのイカ野郎に復讐!」というつもりらしいですが,その割には持っていく武器は普通の水中銃だけです。それじゃ倒せませんって。こういう設定の主人公なんですから,しっかりと両親の仇討ちをして欲しいものです。主人公としての自覚を持つべきっすね。

 敵役のマックスウェルさんも,もうちょっと悪逆非道で残酷冷酷な性格に設定してくれないと,観ている方が困っちゃいます。この人,性格もやることも中途半端なんですね。だから,レイ君のような中途半端な主人公でも何となく勝てちゃうんですよ。悪役としての自覚を強く求めたいと思う所存です。


 後半のクライマックスは沈没船を舞台にしたレイ君たちとマックスウェルの手下たちの戦いなんですが,これが何とももの悲しいです。画面が暗くてしかも敵味方ともに同じようなウェットスーツ+マスク姿なので,どっちがどっちを攻撃しているのか,イカ君が攻撃したのがどちらなのかが画面を見ても全然わかりません。もちろん「レイとニコールは最後まで生き残ってカップルになるんだよね」というのはミエミエなんで,イカ君が攻撃しているのはマックスウェルの手下だとわかるのですが,やはり,敵味方で色を変えるとか工夫して欲しかったです。


 さて,もう一つの主人公といえば巨大イカだかスキュラだか最後まで名前がよくわからないモンスターですが,こいつの行動が首尾一貫していません。「伝説の宝石を守る」ために人間を攻撃しているとニコールちゃんは説明しているのですが,冒頭のレイの両親にしても,途中のヨットで夜釣りをしている若者たちにしても,宝石と無関係なのに襲います。レイ vs マックスウェル軍団の海中戦闘で襲ってくる時も,宝石とは関係ない奴から順に襲ってきます。もしかしたら,単にお腹が空いているイカさんでスキュラじゃないんじゃないですか? おまけに,せっかく捕まえたニコールちゃんだけ食わずに逃がしちゃうしなぁ。モンスターはモンスターとしての自覚を持って行動して欲しいです。

 もっと笑えるのが,そのスキュラちゃんが守っているとかいう宝石。青色のオパールみたいなんですが,これがデカいの何のって,特大サイズのマンゴーサイズで,笑っちゃうくらい巨大です。しかも,全然,高価そうに見えません。こんなガラス玉を必死で守るスキュラちゃんが不憫でなりません。


 ニコールちゃんが沈没船を捜索している海域ですが,どうみても小規模な湾です。左右どちらを見ても山が迫っていて,小さな湾にしか見えません。おまけに水深があさいです。映像画面で判断する限り,水深5メートルの海底に沈没船が沈んでいるようです。なぜこんなところにある沈没船が未発見で,そこに世界の歴史を揺るがすようなお宝が眠っていたのか,どう考えても無理があります。おまけに,こんなに浅い入り江に巨大イカがいるなんて,無理ありすぎ! 多分,予算の関係とかで手近な浅い海で撮影を済ませるしかなかったのでしょう。貧乏が悲しいです。


 こういうショーもない「イカゲソ映画」ですので,ツッコミマニアの方か,イカが出てくるモンスター映画ならクズでも観たいんだよね,というイカ・マニアの方だけご覧ください。それ以外の人は絶対に見ちゃダメだぞ。

(2011/09/0)

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