《アウトランダー》★★★(2008年,アメリカ/ドイツ)


 SFとバイキングとドラゴン退治を合体させた映画、というと何かショーもないクズ映画かと思っちゃいますが、これが結構丁寧に作られていて、そこそこ面白いかったです。多分、アーサー王伝説とか聖杯伝説とか冒険系ファンタジー映画が好きな人ならかなり楽しめるかな、という感じです。ドラゴンというかクリーチャーもそれなりに頑張って作っています。

 とは言っても、余りにベタなストーリー展開、余りにベタな友情と恋愛、余りに都合よすぎる設定とか、そういうところが気になる人(=私)にとっては、ちょっと気になる点ばかり多い感じでした。


 舞台は西暦709年のノルウェー。その湖に宇宙の遙か彼方からやってきた宇宙船が墜落するシーンから始まる。乗組員のケイナン(ジム・カヴィーゼル)は何とか岸にたどり着くが、生き残ったのは彼一人だった。彼は宇宙船から運び出したコンピュータ(みたいなの)を起動させ、そこが鉄器文明時代の地球であることを知る。しかし彼は、森の中でバイキングの一族に捕まってしまう。

 その一族は王ロスガー(ジョン・ハート)に率いられていたが、ロスガーの兵は対立する部族の村が徹底的に破壊され、死体一つ残っていないことを知る。それはケイナンの乗ってきた宇宙船に潜んでいたドラゴン型の宇宙生命体モアウェンの仕業だった。

 よそ者(アウトランダー)のケイナンは当初、敵対する部族と勘違いされていたが、ある事件でロスガーの命を救ったことから彼の信頼を得、次期の王と目されていたウルフリック(ジャック・ヒューストン)らと友情を深めていくとともに、美しく勝ち気な王の一人娘フレイヤ(ソフィア・マイルズ)は彼に思いを寄せるようになっていった。

 そして、ケイナンの過去が次第に明らかになっていく。彼はある惑星を開拓せよと命令を受け、その惑星を支配していた動物モアウェンを絨毯爆撃で絶滅させ、そこに家族とともに暮らし始め矢先、生き残っていたモアウェンが彼の家族を皆殺しにしたのだ。妻の亡骸を宇宙船に乗せて帰還する途中の事故で地球に不時着したわけである。

 そして、ロスガーらの砦近くにもモアウェンが襲ってきたため、ケイナンはロスガーと協力して巨大な罠を仕掛け、モアウェンを焼き殺す計画を立て、それはうまくいったかに見えたが・・・という映画でございます。


 こうやって粗筋をまとめてみると改めて、内容てんこ盛りの映画であることがわかります。部族ごとに抗争に明け暮れていたバイキングの世界も描かれているし、一族をまとめる王として必要な資質とは何か、なんていう問題も描かれています。そしてさらに、惑星を開拓するために先住民族(?)を絶滅させてしまうことの是非なんていう問題もあるし、さらにケイナン、ウルフリック、フレイヤの三角関係なんていうことまで盛り込まれます。しかもそれにモンスター退治まで加わるのですから、一粒で三回も四回も美味しいわけです。

 たいていの場合、ここまでてんこ盛りだと内容が大味になってしまうことが多いのですが、この映画は個々の登場人物がしっかりと描かれています。このあたりの作り方はうまいですね。とはいっても、ファンタジーは所詮ファンタジーでして、ツッコミどころは満載です。


 例えば、ケイナンが沈没した宇宙船から持ち出した金属でモアウェンを倒す剣を作るシーンです。この金属について詳しい説明はありませんが、最低でもチタン合金程度の強度はあるわけです(何しろ宇宙船の材料だから)。それを8世紀の鉄剣を作る技術(=何とか鉄は溶かせる程度)で超硬い合金を溶かして剣にするなんて絶対に無理ですよね。ここはさすがにお笑いになっちゃいました。やはり、ケイナンが最初の方で落っことしてしまった光線銃みたいなの少年エリックが見つけてきて・・・という展開にした方が無理がなかったように思います。

 それと、物語の展開上、宇宙人ケイナンが完全人間型というのは仕方ないと思うけど、瞬く間に地球語が話せるようになるというのも何だかなぁ。最初の方で例のコンピュータみたいなのから網膜を通じて情報が入るんだけど、8世紀の地球は各地域ごとに言語が異なっている世界ですから、このコンピュータには「あらゆる時代のあらゆる地域の地球人言語(しかも、あらゆる方言を含む)」が収録されていたことになり、それはさすがに無理だろうと思いますね。何しろ現代だって、津軽のおばあちゃんと沖縄のおじいちゃんが方言で会話したって会話が成立しません。それが8世紀ともなると方言の数はさらに多いのです。ちなみに、8世紀のノルウェーのバイキングたちが現代アメリカ英語を喋っているのはご愛敬。


 それと、ケイナンとウルフリックを比べると、私の目から見るとはるかにウルフリックの方がイケメンです。最初の説明では「力に頼る乱暴者」みたいに紹介されているんですが、後になるほど友情に篤いいい奴で、しかも戦闘能力も高いときてますから、普通ならフレイヤ姫はウルフリックを選ぶんじゃないかと思います。というか、ケイナン役とウルフリック役の俳優さんを取り替えた方がよかったような気がします。まぁ、最後には王様もウルフリックも死んじゃいますから、選択肢としてはケイナンしか残らないけどさ。

 不自然といえば、ケイマンたちが乗っていた宇宙船にモアウェンが紛れ込んでいた、というのも無茶苦茶だな。これだけデカい動物が乗っていたら、一発で見つかるって。

 あと、さすがはノルウェーの自然は圧倒的に美しく素晴らしいですね。特に断崖絶壁から見える湖(?)の様子とか壮大な滝とか、観光番組か、っていうほど見事です。


 というわけで、期待しないで観たらそこそこ面白い、という映画でした。

(2011/09/20)

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