《アルマゲドン2012 "Quantum Apocalypse"★★(2009年,アメリカ)


 皆さん,Amiga(アミーガ)というパソコンのことを覚えてますか?。Windowsなんて影も形もない頃に一世を風靡したパソコンです(Amigaは1985年にコモドール発売したパーソナコンピュータ。強力なグラフィック機能を有し,動画が動かせた唯一のパソコンだった。AmigaOSはプリエンプティブマルチタスクを実現した史上初のパソコン用OSとして有名。ちなみに,当時のAmigaのライバル機はAtari(アタリ)であり,Macintoshは1990年代初頭でもAmigaの能力の後塵を拝していた)

 なんとこの映画ではそのAmiga-OSが活躍するのですよ。なんと,スーパーコンピュータにできない計算をAmigaがやっちゃうんですよ。これは例えて言えば,ポルシェやランボルギーニにスバル360が勝っちゃうとか,最新のハイビジョンテレビより昭和30年代の白黒テレビのほうが画質がいいというか,そんな感じですかね。コンピュータ人間にとってはこの部分があまりに面白い(というかムチャクチャな)ため,後はどうでもよくなっちゃいました。

 ちなみに,断るまでもないと思いますが,これは本家《アルマゲドン》とは無関係ですし,プライムウェーブが「全く無関係だけど,何となく設定が似てるよね」という映画に勝手に「アルマゲドン」+「西暦年数」をつけただけの物で,シリーズでも何でもありません。ちなみにこのサイトでは《アルマゲドン2007》を紹介しています。

 ちなみに本作のコンセプトは「アルマゲドン+レインマン+2012」でございます。


 舞台はちょい近未来のアメリカ。宇宙研究所(?)では火星観測衛星で火星をリアルタイムで観測してましたが,太陽に向かっていたはずの巨大彗星が突如軌道から離れ,火星に衝突するという異変を感知する。そして火星の破片が地球に降り注ぐ危険性が予測されたが,研究所が招聘した女性理論物理学者は,彗星の軌道を変えた物の正体がもっと問題だと指摘する。彼女の計算によると,それは「1方向にあらゆる物質と空間,果ては時間まで何でも吸い込むもの」であり,やがてそれはダークマターであることが判明する。そのダークマターが地球を飲み込むまでのタイムリミットは48時間と判明する。

 一方,ルイジアナ州ラファイエット市の市長ベンは二人の子供と再婚したばかりの妻,そして自閉症の弟テリーと暮らしていた。テリーは社会で一人で生きていくことはできないが,一度覚えたことは決して忘れず,実は宇宙物理学に秀でた才能を持っていた。その彼がこの宇宙の異常事態をいち早く察知し,手持ちのアミーガを駆使してダークマターの正確な位置を割り出していた。

 しかしその頃,地球各地で異常現象が起き,地球壊滅までのタイムリミットは24時間を切っていた。地球を救うべく,テリーはアミーガをかかえて兄の運転する車でヒューストンを目指したが・・・という映画でございます。


 アメリカのディザスター映画はいろんな要素を詰め込むのが好きです。彗星軌道を変化した「何か」が地球を飲み込むのを阻止するためには核兵器を使うしかない,といういつものおきまりパターンに加え,量子力学の異端児であるエキセントリックなパンクねーちゃんにしか見えない物理学者は登場するし,主人公のベン一家では新しい継母と長男の間がぎくしゃくしているし,その長男に新しくできたガールフレンドは乱暴者の元カレとトラブルを抱えているし・・・と,太陽系サイズの問題から長男と元カレとの確執問題まで90分で解決しなければいけないのですから,内容てんこ盛りでございます。
 それでも足りないとばかりに「天才だけど自閉症」のレインマン叔父さんまで登場させる始末です。これはもう,カツカレーの上にパフェを乗せ,食べるラー油とキャビアとうまい棒をトッピングした感じですね。


 この中で際だって変なのが「異端の素粒子理論を唱える若き女性物理学者」です。行動も髪型もしゃべり方も,まるっきり「パンクねーちゃん」です。「紙が沢山ないと私計算できない」というのはご愛敬としても,この素っ頓狂ねーちゃんに人類の未来を託すのは絶対にヤバいって。ちなみにこのパンクねーちゃん,最初は「光を吸い込む懐中電灯みたいなもので,一方向の物しか吸い込まないの。でもダークホールじゃないわ」と説明していますが,途中から「一方向だけ吸い込む」という設定がどっかにいっちゃうし,さらにその後では「ダークマターが正体よ」と説明が二転三転します。やはり,紙と鉛筆だけで量子力学系の計算するのは無理があると思います。

 そういえば,このパンクねーちゃんの理論は超ひも理論と思われます(「宇宙は11次元」なんていってますから)。しかし途中でNASAのお偉方に,「私の仮説を説明するには相対性理論の説明をすることになるんだけど」と怒鳴るシーンがありますが,とりあえず超ひも理論だけなら相対性理論は説明しなくても説明できますよね。相対性理論とか言わずに,さっさと素粒子とかクォークとかひも理論に説明すべきだと思いますよ。


 ちなみに,映画の最初の方では「彗星が火星に衝突し,その破片が地球に雨あられと降り注いで,さぁ大変」というような説明があったはずですが,これも途中から忘れ去られてしまいました。火星から地球まで24時間で破片が移動するのはちょっと無理なんで,なかったことにしちゃったのかな?

 途中で,地球の重力が異常になり,ベンと長男が車を片手でひょいと持ち上げて人助けをするというシーンがあります。この映画最大のお笑いシーンです。これは要するに,「月の重力は地球の1/6であるため,100キロのものでも簡単に持ち上げられる」というのと同じで,ベンと長男の体重も軽くなっていますから「ムーンウォーク」でしか歩けないはずです。自動車だけ軽くなって人間(=ベンと長男)は軽くならないなんて,基本的なミスをやらかしちゃいましたね。

 そういえば,トルネードが起こり,大雨が降って大洪水が起き,車も家も人も空中に吸い上げられる,というシーンがありますが,なぜか翌日には嵐も収まって雲一つない晴天です。パンクねーちゃんの説明では,地球は刻一刻とダークマターに近づいているはずですから,嵐はさらに大規模になるんじゃないでしょうか。ダークマターはどっかに行っちゃったんでしょうか?


 そして,《アルマゲドン20??》シリーズの最大の見せ場といえばもちろん核弾頭です。映画のなかのアメリカ人は何か困ったことがあると「核爆弾を打ち込めば問題解決さ!」と考えますが,この映画も例外ではありません。何の躊躇もなく,アミーガが計算した位置に10発くらいの核弾頭を打ち込みますが,もちろんそれで問題は一発解決! ナイス,核爆弾! やはり,核爆弾の使い方に関してはアメリカは最高に熟練してますね。


 というわけで,《アルマゲドン2007》も《2008》も見ちゃったけど,《アルマゲドン2013》が作られるかどうか不明なのが残念,しょうがないから《2012》でも見とくか,という人,あるいは,いにしえの名機,Amigaの姿をもう一度見てみたいという人だけご覧ください。

(2011/09/1)

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