この映画のキーワードは「どっかで観たことがある」です。地底から突如出現したモンスターが次々と人間と襲っていくという「どっかで観たことがある」ストーリー,モンスターの造形も「どっかで観たことがある」形だし,ビルの住民たちがビルの中を逃げ惑うという展開も「どっかで観たことがある」ものです。思いっきりデジャブ感が楽しめます。デジャブの連続のため,見終わった直後なのに,どういう映画だったのかほとんど記憶に残っていません。
唯一褒める点を探せば,80分弱と短いことくらいかなぁ。あと,暗めの画面が多いため,何度も睡魔が襲ってきますので,不眠症の治療には使えるでしょう。
舞台はクリスマス・イブの夜のとあるマンション。その年は異常気象続きで,クリスマスだというのにロサンゼルスは30℃の猛暑となっていた。おまけに小さな地震は多発するし,原因不明の停電も時々起きていた。クリスマス休暇のためにマンションの住民たちの多くは帰省していたが,残っていた住民たちは家族でクリスマスを楽しんだり,友人たちを集めてパーティーを開いていた。
その時突然,マンション全体,そして街全体が暗闇に包まれてしまう。大停電(ブラックアウト)である。そして凶悪なモンスターが突如出現し,次々と住民たちを襲っていった。なんとか生き残った住民たちはマンションの外に脱出しようとするが,モンスターたちの襲撃は続き・・・という映画です。
こういう映画に見所の一つはモンスターの造形にありますが,この映画のモンスターは「初期の頃のエイリアンそっくり」と言うか「戦隊物テレビ番組に出てくる怪人の下っ端の方」に近いです。そして,思いっきり着ぐるみですが,余計な装飾とかゴチャゴチャした突起物がないため,動きやすそうです。ここらは「仮面ライダーのショッカー」を思い出させますね。この着ぐるみモンスターの唯一の武器は,先っちょが巨大ハサミになっている尻尾でして,これで首を切り落としたり,腹部を引き裂いて臓物を撒き散らしたりします。どうやらこの尻尾はCGのようなんですが,デザイン的にはちょっとビミョーな感じです。
このモンスターさんたちは常に電磁波を出しているらしく,大停電もこいつらが仕組んだものらしいです。しかも,街全体を停電させるだけでは飽きたらず,懐中電灯すら使えなくします。もちろん携帯電話も使えません。どうやら,光に弱いらしく,大停電にして光源がなくなった所で地中から地表にやって来た模様ですが,そこらへんの説明はしっかりされていませんので,何となくそうだろうなぁ,という程度です。
ただ,非常電源も懐中電灯も携帯電話の光もなしになりますので,画面全体が暗くなり,何が起きているのかいまいち判りにくくなってしまったのも事実です。やはり,懐中電灯くらいは使えるようにしといて,人間は懐中電灯の明かりを武器に反撃する,なんて設定にしたほうがよかったかもしれません。
ちなみに,最初の方で少年が見つけた「気色悪いカブトガニ」みたいなのは,モンスターさんたちの食料だったようです。
それと,クリスマス・イブなのに気温30℃が続いている,という最初の設定も,その後全く生かされません。モンスターが異常気象を作り出している感じでもないし,これだったら「厳冬のクリスマス・イブの夜の惨劇」でも別に構わなかった気がします。
唯一,びっくりしたのは最初に犠牲になるのが10歳くらいの少年だということ。しかも,いなくなった兄を探しに地下室に降りてきた妹が,兄がモンスターにムシャムシャ食われているのを目撃するというおまけ付き。この映画の監督,鬼畜っすね。人間性を疑いますね。やはりこういうモンスター・ホラー映画では,最初の犠牲者は「地下室で明かりが消えているから,ここでエッチしちゃおうぜ」という馬鹿ップル,というのが定石ですよね。
ラストの投げやりっぷりもここまでくると見事です。モンスターの正体も,彼らの目的(?)もわからないまま,突然,物語に決着も付けずに終わっちゃいます。
それと,登場人物の人間像と人間関係が丁寧に描写されている点はこの手の映画としては珍しいくらいですが,それが肝心の物語の進行にほとんど絡んでこないのです。しかも,最期まで生き残りそうなキャラがなかなか見えてこないし,途中のダラダラしたエピソードによる遅れを取り戻すため(?)に,後半,登場人物がどんどん死んでいくため,前半の濃厚な人物描写が後半の展開に全く生かされていません。
それと,低予算映画の常として,舞台は一つのビルの中に限定されますが,この「地底モンスターの襲来」が街のあちこちで起きているのか,ロサンゼルス全体で起きているのか,それともアメリカ全体なのかがわかりません。ラストで街のあちこちから火の手が上がっているので,この怪現象はこのマンションだけでないことがわかりますが,そのあたりについてちょっとでもいいから描いて欲しかったです。
と,頑張ってここまで書きましたが,もう書くことが見つかりません。そういう映画でした。
(2011/11/10)