《紀元前1億年 "100 Million BC"(2008年,アメリカ)


 いやぁ,前から「これはスゴい映画だ。これよりひどい映画って滅多にないよなぁ」というクズ映画マニアの間で語り継がれている「噂の映画」なんですが,いやはや,噂に違わぬというか,予想をさらに超えたひどさで楽しめました。私の「クズ映画遍歴」の歴史を紐解いても,ここまでスゴい映画となるとそれほど多くありません。

 普通の映画ファンはタイトルを見ただけで絶対に近づかないと思いますが,地雷原と知って足を踏み込む蛮勇を勇気と勘違いしている者(・・・アホとも言うけど)以外は絶対にDVDを手に取らないで下さい。見たら絶対に後悔します。無料で見ても「時間を返せ」と怒り心頭のはずです。


 シールズ率いるアメリカ軍の精鋭たちがロサンゼルスのアメリカ軍の研究施設に召集され,彼らは驚くべき秘密任務を与えられる。それは第二次大戦中の「フィラデルフィア計画」に関連するものだった。第二次大戦末期,アメリカ軍は天才物理学者を集めてステルス技術の研究を進めていたが,その過程で時空旅行を可能にするゲートを見つけてしまったのだ。そして大戦終了後の1949年,21名の兵士が過去の世界に送り込まれることになった。とはいえ,タイムマシンのタイムパラドックス(過去の世界に行って自分の祖先を殺したら自分はどうなるのか,というやつね)への配慮から人間誕生以前の世界が選ばれ,彼らは7000万年前の白亜紀に送り込まれた。しかし、手違いから彼らを元の世界に戻せなくなり,21人は白亜紀の世界に取り残されることになった。

 そして舞台は21世紀の現代に移る。なんと,新たに発見された白亜紀の洞窟から英文が書かれた壁画が見つかったのだ。なんと,1949年に送り込まれた兵士たちは生き延びていたのだ! その知らせを受け,フィラデルフィア計画の責任者であるロス博士は彼らを救うべく新たな計画を立案し,そのためにシールズたち精鋭に白羽の矢が立てられたのだ。そして,アメリカ軍の精鋭たちは次々に時空のゲートには行っていくが,その向こうに待ち受けていたのは,凶暴な肉食恐竜が支配する恐怖の世界だった。果たして彼らは1949年に送り込まれた21人と再会できるのだろうか。果たして彼らは元の世界に戻れるのだろうか・・・という映画でございます。


 どっからツッコミを入れたらいいか困っております。まともな部分が一つもないからです。まともな映画を作る能力も財力もないおバカさんたちが,エメリッヒ監督の《1万年前》という映画のタイトルだけパクって作ったコバンザメ商法映画なんだから,最初からまともな映画を作ろうなんて殊勝な心がけは微塵もないんですよ。要するに,「オレ,オレ,一万年前」という「オレオレ詐欺」みたいな映画です。


 まず,初っ端からやってくれます。タイトルは「1億年前」ですが,実際に行くのは7000万年前です。どう計算しても3000万年分足りません。「7000万ってさ,四捨五入すれば1億じゃん」という大雑把な計算をしたんでしょうね。

 前述のように,「第二次大戦中にステルス戦闘機の研究をしていたらタイムトンネルを見つけちゃった」というとってつけたような説明をしていますが,さすがにこれではまずいと思ったのか,「ベリリウムを電磁場に置いたらタキオン場が生じ,さらにそれがワームホールを励起して・・・」という,とってつけたような説明を上塗りします。「脳味噌が三回転アクセルしてるぜ」みたいな理論がナイスです。


 ちなみに,ロス博士は軍の協力を得て研究しているという設定ですが,その研究施設は誰が見てもプレハブ作りの廃工場そのものです。もっとましな撮影場所はいくらでもあると思うのですが,資金不足でここしか借りられなかったんでしょうね。それもこれも,貧乏が悪いんです。貧乏が憎いです。

 1億年前・・・じゃなくて7000万年前の世界も悲惨っすよ。そこらのアメリカ郊外の原っぱと岩山で撮影しました,というのがバレバレです。どう見ても「人間に踏み固められた道」が見えまくり,人跡未踏感ゼロです。

 それに輪をかけて悲惨なのが恐竜さんたちです。1960年代のテレビにタイムスリップしたような手作り感溢れる着ぐるみと,1980年代の映画にタイムスリップしたような拙いCGで再現される恐竜さんたちのお姿が涙を誘います。迫力なんて雀の涙もありません。それじゃさすがにマズいよな,ってんで,ハンディカメラで極端に着ぐるみに寄って撮影したり,わざと手ぶれをしたりして迫力を出そうとしていますが,悲しいことに,全てスベっています。全て貧乏が悪いんです。貧乏が憎いです。

 ティラノサウルスみたいな恐竜が活躍するんですが,こいつの大きさがよくわかりません。あるシーンでは体長3メートルに見えたり,別のシーンでは10メートルを越えているようにしか見えます。伸縮自在な風船みたいな体をしているか,大きさの異なる恐竜が数等いるんでしょうか? 以前紹介した,《ダイナソー・ファイター》というクズ恐竜映画以来の伸縮自在ぶりです。


 そういう恐竜さんたちに,「21世紀のアメリカ兵」たちはマシンガンなどで攻撃しますが,全然効きません。恐竜たちが跋扈している7000万年前に行くならもっと本格的に武装していくべきなのに,シールズたちはマシンガンを一丁手にしているだけで,それ以外はなにも持っていません。それどころか食料も水も予備の銃弾も持って行きません。銀行強盗だってもっとまともな装備をすると思います。そのため,21世紀のアメリカ兵はどんどん恐竜に食われて少なくなっていきます。見ているほうが,こんなに登場人物が少なくなって大丈夫なんだろうか,全員恐竜に喰われて映画がおしまいになるんじゃないかと心配になります。

 でも大丈夫。そこに登場するのが1949年に送り込まれたアメリカ人です。彼らはいわゆる「原始人コスプレ」をしていますが,こいつらが強いの何のって,21世紀のアメリカ軍の武器でも倒せない恐竜を槍と弓でバシバシ倒してきます。アメリカ軍の武器が石器時代の槍に負けてます。


 映画の後半,1949年アメリカ人たちと生き残ったアメリカ兵は現代アメリカに戻れますが,このとき一緒に一頭の巨大恐竜もロスに入り込みます。いわゆる,お約束の展開,ってやつですな。これがロサンゼルスの街中を暴れまわるのですが,この映像がさらに悲惨なことになっております。恐竜くんが街中を破壊している映像が皆無なんですよ。軍のヘリが恐竜を目視で探すんですが,全然見つけられないんです。10メートルはありそうな恐竜が街の中を走りまわっているのに「隊長,全然見当たりません。どこかに隠れた模様です」っていうんですぜ。要するに,街の中を恐竜が暴れまわる映像を作る資金がなかったんですね。だったら,ヘリで探すシーンを入れなければよかったのに・・・。しかも,地上の軍人たちが右往左往している後ろで,普通の通行人が普通に歩いています。人の流れを止めずに路上ロケを敢行しちゃったんですね。よほどお金がなかったものと見えます。

 で,広げまくった風呂敷を畳めなくなり,一体どうやって結末をつけるんだろうと思っていたら,無理やり訳の解らんダイムパラドックスを持ち込んで,訳の解らんかん愛と感動のシーンで唐突に終わっちゃいます。もうこの頃になると,突っ込む気力すら失せてしまいます。


 ちなみにこの撮影チームは《トランスモーファー》という凄まじくトンデモないロボット映画を作っているんだとか。これも観てみたいな。

(2011/11/29)

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