《デス・スピード "Phantom Racer"★★(2009年,カナダ)


 これまで何作か,カナダ製のホラー映画・サスペンス映画を見てきたんですが,共通点は「微妙に面白くない」ことです。おまけにこれはテレビ向け映画でして,さらに配給会社はあのアルバトロスです。もう見る前から「今度も多分,微妙に面白くないんだろうなぁ〜」なんて偏見たっぷりにDVDプレーヤーにレンタルDVDをセットするわけでございますよ。


 舞台は,多分カナダのどっかの町。J.J.とカッターは幼なじみで昔は悪ガキだったが,その後二人はレーシングドライバーとなり,同じ町出身のライバル同志として大いにレース場を沸かせていた。そしてレースの最中,マシントラブルを起こしたJ.J.の車はカッターの車と接触し2台は大破する。J.J.は助け出されたが,カッターはマシンから逃げられず焼死してしまう。

 それから17年,町を出たJ.J.はレーサーを辞めてレーシングチームのトラック運転手としてレースカーを運ぶ仕事をしていた。そんなある日,無謀運転をする車を避けようとしてトラックが路肩に乗り上げ,トラックは動かなくなる。奇しくもその場所は故郷の町に近かった。立ち往生しているトラックに保安官がやってくるが,それは昔の仲間であり,町の修理工場を紹介される。経営しているのはカッターの兄であり,かつてカッターのチームのメカニックを担当していた男だった。そして彼の妻がカッターの元カノで、一時,J.J.とも恋人同士だった時期があることがわかる。

 カッターの兄はJ.J.に見せたいものがあると工場の奥に連れて行くが、何とそこにはカッターが事故死した時に乗っていたレースカーがあった。1年前から兄が何かにとり憑かれたように修理をしているらしい。その車にJ.J.は何か不吉なものを感じるが、実はその車にはカッターの怨霊が宿っていて・・・という映画でございます。


 こういう筋立てで映画を作るとしたら,どういうタイプの映画にするでしょうか。最後は二人のレーサー(一人は怨霊だけど)がレーシング技術の限りを尽くして一騎打ちをするとか、執拗に怨霊レースカーが追いかけてきて、あの《激突》みたいな映画にするという路線もありです。

 ところがこの映画は,基本的には結構シリアスな映画のつもりなんだと思いますが,ショーもない殺害シーンをたくさん入れちゃったため単なる出来の悪いスプラッター映画になっちゃいました。基本的な所でミスしちゃいましたねぇ。

 怨霊が取り憑いた無人の車が人を殺すのは構わないし,最初の方のシートベルトで窒息させるとか,パワーウィンドで首をちょん切るとか,そこらはまだ良かったのに,トランクがそのまま口になっていて人間を食っちゃうとか,フロントガラスに押し付けられた顔を突然トゲが生えてきたワイパーで顔をすり下ろすとか,中途半端にスプラッター路線を狙ったもんだから,全体を貫くシリアスな雰囲気を台無しにしてしまいました。しかもこのスプラッターシーンがやけに安っぽいのですよ。こういう所で手を抜いちゃ駄目です。


 しかも,このカッターの怨霊さん,なんでJ.J.を執拗に狙うのか意味不明です。カッターの兄がJ.J.に「あの17年前の事故なんだけど,実は汚いことをしてでも勝ちたかった弟がお前の車に仕掛けをしたんだ。それでクラッシュしちゃって・・・」と告白するんですが,それだったら,カッターが死ぬのは自業自得と言うか,因果応報と言うか,自分が掘った落とし穴に自分で落っこちたのと同じですから,J.J.を恨む筋合いじゃないんですよ。

 J.J.は自分のミスで事故を起こし,それで友人を殺してしまったと思っているわけで,いまさら「実はあれは・・・」と告白されてもなぁ,という気がします。案の定,怒りのJ.J.は怒りの鉄拳ですね。どうせ告白するんなら,事故直後に告白すべきでしょう。カッターの兄さんは「17年も経ってるから,もう真相を明かしてもJ.J.は怒らないよね」,と思っていたんでしょうか。こいつの頭の中,意味不明です。


 17年間といえば,カッターの兄の妻でJ.J.の元カノの娘が17歳の反抗期の娘で,これがなぜか初対面のJ.J.に懐いてしまうんですが,余程勘の鈍い人でなければ,この娘が登場した時点で「このバカ娘の父親はどうせJ.J.なんでしょう?」と気が付きますが,もちろん気が付かないのはJ.J.だけでございます。あまりにベタな展開に笑うしかありません。

 ここで,元カノと17歳の娘さんが「美魔女 & 美少女」なら許せるんですが,これがなんとも「普通のアラフォーのおばさん & お笑いのアジアン馬場園そっくりさん」なんですよ。オイオイ,ホラー映画って言ったら,美魔女系熟女か細身の美少女だろう。なんでここで馬場園ちゃん? 反抗期の馬場園なんて見たくないぞ。


 しかも,登場人物が少ないのに,なぜか人間関係は濃ゆいため,延々と昔の回想話のシーンがあったりして全体の流れを阻害して,妙に間延びした感じになりました。今は,そんな17年前の話とか,あの子の父親はあなたよとか,そんなことを話している場合じゃないだろ,と言いたくなるシーンのオンパレードです。普通ならここで「志村,後ろ,後ろ!」というシーンになるはずなんですが,なぜかこういう昔話&回想シーンになると,怨霊レーシングカーは襲って来ません。君がさっさと襲ってこないから,話のテンポが悪くなったんだよ。

 もうこうなると,最後の激走するレースシーンでもあるのかなと思うと,これがまたなんともスピード感皆無です。スピードメーターは上がるんだけど,その加速の様子が映像的に確認できません。おまけに,対向一車線の一般道を2台のレースカーが走っているのに,なぜか対向車が一台も通りません。普通なら,向こうからやってくるトラックにあわや突っ込むか,というシーンがあったりするもんですが,そういうシーンがありません。なんだか,レース用のコースで安全運転しています,という感じにしか見えないのです。期待した方がバカでした。

 最後の方で,J.J.が港に怨霊カーをおびき出して海に突っ込ませ,これで一件落着かと思ったら・・・というシーンはまぁまぁ良かったけど,良かったのはここだけかな?


 それにしても,レース中の事故で自業自得で死んどきながら,16年間何もせず,17年目に兄に車を修理させてJ.J.に復讐を果たそうとするカッター君,君はもしかしたら17年ゼミの生まれ変わりか?

(2011/12/02)

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