アメリカの新婚カップルが中国に新婚旅行に来て(なぜ中国かというと,旦那様が中国系アメリカ人で,親戚に花嫁をお披露目するためなんだって),そこで白塗りの死霊さんたちに追いかけられちまったぜ,というホラー映画でございます。後半になればなるほど,訳がわからない展開になるし,ハンディカメラで撮影された映像は暗すぎて何が起きているかわからないし,エンディングはさらに輪をかけて訳がわからん,という映画です。おまけに,《オブ・ザ・デッド》なのにゾンビさんは登場しません。あ〜あ,観て損しちゃったよ。
ユル(デニス・チャン)とメリッサ(エイミー・スマート)は結婚したばかりのカップルで,ユンの親戚が暮らす中国への新婚旅行を楽しんでいた。二人は現地ガイドを雇ってユンの祖母の待つ田舎に車で向かうが,その村へは遠く,しかもガイドは暗い夜道のために迷ってしまう。ガイドはメリッサに「あそこに村が見えるから道を聞いてきます」といって車から出るが,それっきり帰ってこない。
メリッサは酔って寝込んでいたユルを起こして村に向かうが,そこは人気がなく静まり返っていて,一箇所にブタやヤギやイヌなどの家畜が集められていた。不気味なものを感じた二人は車に戻り,きた道を引き返すが,車の前を全裸で全身白ずくめの男が横切ったため,ハンドル操作を誤り道から外れてしまう。それは「7番目の満月」の夜に蘇る死霊であり,生きるものすべてを食い尽くそうとする餓鬼だった・・・というお話でございます。
最初のほうで行方不明になる現地ガイドは,最初から二人を「死霊への生贄」にするために二人を置き去りにしたことが最後のほうで明かされます。彼の説明によると「この村では7番目の満月の晩,死霊が蘇って村人1人を殺してきたんじゃよ。それじゃ堪らんというわけで,その晩になるとよそ者を生贄として差し出すことにしたんじゃ」ということらしいです。さすが中国,村人でないよそ者なら殺されてもいいじゃん,という大雑把さがナイスです。普通なら,「毎年一人,犠牲者が出るのは困る。そうだ! 全員で村を捨てて集団移転すればいいんじゃ」という方向に頭が働くと思うのですが,なぜかこの村人は「移転するくらいならよそ者を差し出そう」という方向に頭が働いちゃいます。
おまけに,「毎年1人が犠牲になる」と言っているのですから,この映画の中ほどで「よそ者のおっちゃん」が最初に殺されますから,ここでその年の犠牲者はおしまいのはずじゃないっすか。それなのになぜ,ユルとメリッサを襲ってくるの? 今年だけルール改正,ってやつですか? 死霊さんは「年に一人の犠牲者のみ」というルールはしっかり守ってほしいものです。
その死霊さんですが,白塗りというだけで特に怖いわけではないし,すごい能力を持っているわけでもなさそうです。ただ,移動スピードだけはかなり速いです。死霊さんたちが襲ってくるシーンは,流行りの「ハンディカメラで手ぶれしっぱなし」で撮影されているため,正直なところ,何がどうなっているのか,今何が起きているのか,イマイチ定かではありません。低予算映画のためにメイクとかに金をかけられず,それを悟られないようにわざと手ぶれ撮影したんじゃないの,という気がしないでもありません。
後半のロウソクが灯されたお堂みたいな建物のシーンも意味がよくわからないし,死霊に連れ去られたユルを助けるためにメリッサが洞窟に入るシーンも何だか意味不明。第一,そこに死霊が集まって眠っている(?)のがわかっているなら,そのすきを狙ってダイナマイトかで一挙に爆破するとか燃やすとかすれば,こいつらを一網打尽にできそうなものですが,なぜか村人はそっちの方に頭が働きません。頭が悪いとしか思えません。
おまけに,「ユルは君(=メリッサ)を助けるために自らを犠牲にしたんじゃよ」ということで静かなエンディングで終わりになりますが,これも「面倒くさくなって途中で放り出した」という感じですね。
結局,こういう「訳のわからない化物集団にいきなり襲われる」というタイプのホラー映画では,「襲われる」⇒「逃げてどこかに立てこもる」⇒「そこも襲われる」⇒「逃げる」⇒・・・の繰り返しになります。また,犠牲者となる登場人物が多ければ,これに「段階的に一人ずつ殺され,最後に主人公とヒロインだけのこる」というお約束の展開も加わえられます。ところがこの映画の場合,襲われるのはユルとメリッサ,そして途中で加わる「よそ者のおっさん」の3人だけで,最後の最後までユルとメリッサを殺すわけにはいきません。おまけに,早い段階で車が使えなくなって二人の移動手段は徒歩に限られてしまうし,舞台が中国のど田舎のため逃げこむ建物もほとんどありません。このため,映画の展開は「襲われる」⇒「逃げる」⇒「襲われる」・・・と,非常に単調になってしまいました。
また,死霊さんたちは簡単に二人を捕まえられるのですが,捕まえたとしてもすぐに食うわけにも殺すわけにもいかないという膠着状態に陥ってしまいます。そのため,後半の「ロウソクのお堂」という訳のわからないシーンを挿入したんでしょうね。映画監督も手詰まり状態だったんでしょう。
期待しないで観ればそこそこ面白くないわけではない,という微妙な映画ですが,くれぐれもゾンビ映画と間違わないでください。
(2011/12/31)